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スノーフレーク  作者: 猫人鳥
episode7 開かずの蔵と記憶編
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本社

凛緒視点です。

 朝早くにエリンさんが服を持ってきてくれた。

 今まで全く着る機会のなかった、安物の服らしい。

 変装なんだし、私はどこにでもいる普通の女じゃないといけないんだから、こういう服なのは当たり前だ。

 それに、着なれない服もそうだけど、慣れないことばかりで結構わくわくしている。


 髪はウィッグをかぶり、伊達眼鏡もかけた。

 私自身、今の私を私とは思えないし、変装はこれで完璧だろう。


「凛緒様、どうですか?」

「凄く動きやすいわね。いいと思うわ」

「それは良かったです。それから、本日の私の役割と致しましては、凛緒様のご友人という事になります。言動を改めてさせて頂きますので、ご了承下さい」

「もちろんよ」


 なんならいつでもそれでいいと言いたくなってしまうけど、エリンさんの立場的にもそういう訳にはいかないから。

 仕事でしか友人になれないというのは少し悲しいけど、仕方ない……


「じゃあ行こっか、凛緒ちゃん!」

「え、あ、えぇ……」


 急に変わられると驚いてしまう……


 エリンさんはニコニコと笑ってくれているけど、昨日の感じからして、この仕事にあまり乗り気ではなかった。

 本当に申し訳ないな……


「エリンさん、あの……」

「凛緒ちゃん! エリでいいよ!」

「そ、そうね。エリ、今日はよろしくね」

「うん」


 2人でホテルから出る……

 閉じ込められていたとは言っても、全くそんな感じはしなかったし、外が懐かしいという程の事もない。

 ただいつも警戒ばかりしていたから、こんなに爽やかな気持ちで外に出たのは本当に久しぶりだ。

 清々しい風が心地いい。


「そういえば、エリはその格好のままでよかったの? 誰か知り合いにあったりしたら……」

「大丈夫よ。私は普段、あのホテルからは出ないから。外の事は本当に何も知らないの」

「そ、そうだったのね……」


 閉じ込められているのはエリンさんの方じゃないか……

 どうしてそんな事になっているのかが気にはなるけど、それはきっと私が介入してはいけない事だ。

 聞かないでおくべきだろう……


「ここがスノーフレーク本社……」

「エリは初めてきたの?」

「うん……写真とかでなら見たことはあったけど……」


 スノーフレークの本社前に着くと、エリンさんはかなり強ばった顔をした。

 本社に来ずにずっとあのホテルで働いていたって事みたいだし、私よりもずっと緊張しているんだろう。


「いらっしゃいませ。本日はどのようなご用件でしょうか?」


 入っていきなりに、お姉さんに声をかけられた。

 私と同い年、もしくは若いと思われるお姉さん……

 スノーフレークで社員として認められている方なんだと考えると、歳が近そうなだけに羨ましく思ってしまう。


「四之宮主任へ取り次いで頂けますか?」

「かしこまりました。こちらへどうぞ」


 緊張しているみたいだったけど、やっぱり流石はエリンさんだ。

 お姉さんとも普通に話している。

 私はこれから、スノーフレークの四之宮主任さんに会うのね……


 案内された応接室で待機していると、


「お待たせしてごめんなさい。初めまして、四之宮紅葉と申します」


と、女の子が1人入ってきた。

 スーツを着ているとはいえ、まだ高校生くらいの若い女の子……

 私が最初にスノーフレークに依頼に来た時に受け付けてくれた人よりも若い気がする……

 この方が四之宮主任……


「初めまして。財前凛緒と申します。本日はこのような場を設けて頂き、誠にありがとうございます」

「いえいえ。こちらとしましても、仕事をお手伝いしていただけるのは、とてもありがたい事ですから」

「ご期待にそえるよう、尽力致します!」

「ふふっ、そんなに畏まらないで下さいね」


 とても優しく笑ってくれている。

 確実に歳下だろうけど、間違いなくこの方は奏海さんに近しい人だ。

 乃々香さんのような、奏海さんのご友人だろうか?


「エリンさんもお久しぶりですね」

「はい。ご無沙汰しております、紅葉様」

「かたいですよ~」

「申し訳ございません……」


 かなり緊張しているエリンさん……

 これは、緊張というよりは畏れかしら?

 気にしてはいけないと分かってはいるけれど、気になってしまう。


 スノーフレークはずっと憧れていた職場だ。

 でも、そのスノーフレークの人達というのは、本当に何者なんだろうか?

 

読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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