得意科目
副社長視点です。
蔵は結局開かねぇし、これ以上見ていても何の意味もない。
早々に切り上げて、凛緒の部屋を見ることになった。
「こちらが凛緒ちゃんの部屋です」
「ほぉーん」
「くれぐれも、荒らさないようにお願いしますね」
「俺は荒らさねぇよ」
「……」
少し強調して言うと、2人とも黙った。
やっぱりな、荒らしてくてしょうがないのはこいつら等の方だろうからな。
もちろんずっとバレてねぇと思って着いてきているババアも含めて。
「医学に物理に電気光学……多趣味すぎだろ?」
「あなたもご存知のように、凛緒ちゃんは桜野会長に憧れていますからね。あのような何でも出来る方になりたいと、色んな知識を増やしていたんですよ」
「別に奏海は何でもなんて出来ねぇぞ?」
「そうなのですか?」
「あいつに出来ねぇ事をまわりがやってるだけだし、まわりが出来ねぇ事をあいつがやれるってだけだな」
「よく分かりませんが……」
「別に分かって欲しい訳じゃねぇ」
凛緒の部屋の本棚には、本当に沢山の本が並んでいた。
どれも分厚く、文字が小さい……
目が痛くなりそうだ。
「あなたは、桜野会長を大切に思っているように思えるのですが?」
「あぁ?」
「本当にスノーフレークを辞めたいのですか?」
「そりゃ辞めてぇさ。俺が入りたくて入ったんじゃねぇし。それに言ったろ? ガキのおもりに疲れたんだって」
「あなたが桜野会長の話をされている時、とても優しい表情をされます。まるで父親のような……」
「バカ言うな。俺はまだ32だぞ! あんなデカい娘がいてたまるかってんだ!」
「そうですか……」
凛緒ももっと上に見えるとか言ってたが、俺ってそんなに更けてるのか?
流石に奏海の父親だなんて言われるのは解せねぇ……
「へいっ! パパー!」
「お前はうるさい」
「ん? 何か仰いましたか?」
「いや、ただの業務連絡だ」
面白がっている乃々香を注意していたら、叔父に聞かれてしまった。
別に聞かれて問題になる訳じゃねぇけど……
気を取り直して、凛緒の部屋を調べていく。
割れた置物に破られた絵……
言ってた通りの滅茶苦茶だ。
それでも修復してある辺り、大切な思い出の品々だったんだろうな……
「ん? これはなんだ? 成績表か?」
「そうですね」
「あいつ、随分と成績いいな」
「凛緒ちゃんは実に優秀な子ですので」
「計算は苦手みたいだけどな」
「……何故それを?」
「見れば分かる。数学や物理計算が苦手なんだろ?」
「そうみたいですね。一番よく勉強してると思うんですがね……」
なるほどな、大体見えてきた。
この財前家の蔵を開ける方法も、こうなった原因も……
だが今それを言ったところで、何の解決にもならない。
根本的な問題は何も解決していないんだからな。
読んでいただきありがとうございます(*^^*)