入り口
副社長視点です。
適当に周り道もしつつ、尾行を撒くこともなしに財前家の前に到着した。
かなりデカい、和式の家だ。
金持ちともなるとこんな家に住めるのかと感心しつつ、掃除が大変そうだと思う……
まぁ、こんな家の掃除は、使用人がやるんだろうが。
「奏海の家と、どっちがデカいんだ?」
「奏海ちゃん家に決まってるじゃん」
「だろうな」
奏海の家なんて行った事もないからな。
どんな家に住んでるのかなんて事はしらねぇが、桜野グループはとんでもない金持ちなんだ。
財前グループなんて、眼中にもない程の……
当然家もデカいんだろう。
「で、こういう家は、どっから入るもんなんだ? さっきから歩いても歩いても、外壁なんだが……入り口は何処だ?」
「さぁ?」
「奏海の家もこんな感じなのか?」
「さぁ?」
「お前いつも帰ってんだろ? どうやって入ってるんだよ」
「壁登って、ポンってね!」
「それ、ここでやったら捕まるよな?」
「奏海ちゃん家でも捕まるよ! 私はセーフだけどね!」
奏海の家の警護の奴等も可哀想に……
こんな迷惑なのが、定期的に外壁を登って侵入してくるなんて。
本物の犯罪者か乃々香かどうかを、毎回判断してるんだな……
「あ、もう少し行くと、門みたいなのがあるよ!」
「おっ、ほんとだな。で、これのインターホンは何処だ?」
「さぁ?」
「お前に聞いた俺がバカだったよ。どうせお前は、インターホンなんか気にもしないで侵入するんだもんな……」
「失礼な事言わないで! 単にこのお家が和式で、奏海ちゃん家は洋式だから、分からないってだけなの! インターホンくらい押して入る日もあるよ!」
「最近はあったのか?」
「ないね」
「だろうな」
奏海の家には今、奏海の家族達は住んでいない。
奏海が追い出したからな。
だが、乃々香があの家に居候する事になった頃にはまだ、奏海の家族達はいたはずだ。
そんな場所に、いきなり外壁を飛び越えて入ったりなんてしていた訳はない……乃々香ならギリやってそうな気もしたが……
「とりあえず、叫んでみたらどうかな?」
「バカだろ」
「入り口らへんうろうろしてたら、誰か出てくるん時じゃない?」
「そんなもんか?」
と、乃々香と話していると、
「失礼、先程からこの家の前にずっといらっしゃるようですが、どういったご用件でしょうか?」
と、1人の女がでてきた。
無線からは、
「やったね! ほら、私の言った通り!」
と、喜ぶ乃々香の声が聞こえる……
なんか釈然としないな。
「あの……?」
「あぁ、悪いな。俺は財前凛緒から依頼を受けた、スノーフレークのもんだ。この家の蔵って奴を調べさせてもらいたいんだが?」
「凛緒、から……」
お? 凛緒を呼び捨てとは……
使用人かと思ったが、こいつは凛緒の言っていた話し相手のための親戚か、じーさんの自称妻かどっちかだろうな。
「あの、失礼ですが、我々はそのような連絡を受けていないのですが?」
「そりゃああんた等が凛緒から信用されてねぇからだろ?」
「なっ! そ、それは……」
「図星だろ」
「凛緒に連絡してきますので、こちらで少々お待ち下さい」
「あんたの連絡を凛緒が受けるといいな」
「……どういう意味でしょうか?」
安い挑発に乗ってくれる奴だ。
これは実に分かりやすい。
「あんたらが信用出来ないから、凛緒は俺達スノーフレークに依頼をしてきたんだ。あんたらからの連絡になんて出ねぇさ」
「でしたら、あなたが連絡して下さいませんか? 凛緒本人の声であなたに依頼をしたと聞くまでは、こちらも納得出来ませんので」
「悪いが、お断りだ。凛緒とあんたらを喋らせるつもりなんてねぇからな」
何より俺は今、凛緒を閉じ込めてる奴って事になってるんだ。
そう簡単に凛緒と話をさせる訳にはいかない。
「ではあなたがスノーフレークであり、凛緒から本当に依頼を受けたのだという証明の出来る物を持ってきて下さい。それならこちらも……」
「その必要はありませんよ、七緒さん。事情は私が凛緒から聞いておりますので」
俺と出てきた女との会話に割って入るようにして来た男……
この男が今"七緒"と呼んだという事は、こいつが凛緒の言っていた自称妻で間違いないという事だ。
読んでいただきありがとうございます(*^^*)