なんでも
副社長視点です。
乃々香に言われるがままに人通りの少ない道に入ってすぐ、がらの悪い男が2人絡んできた。
乃々香がいうには、この2人は俺をつけている他の奴らとは別らしく、およがせる必要もないとの事だ。
確かにここで捕まえておくのもいいと思うが、正直面倒だな……
何より俺は、頭はきれるがこういう腕はからきしだからな。
「大人しく着いてきてくれるってんなら、何もしないぜ」
「俺は今忙しいんだ。お前等と遊んでやる時間はない」
「じゃあ強行させてもらうしかないな!」
ナイフを見せつけて脅してくる男達……
確かにナイフは恐ろしいものだ。
だが残念ながら、俺は日々ナイフなんぞより恐ろしい女を相手に仕事をしているんだ。
「めんどくせぇな……」
「大人しくついて来る気になったのか?」
「ちなみに一応聞いておくが、お前らに俺を連れて来るように依頼したのは誰だ?」
「あ? 答える訳ねぇだろ」
「だろうな……なら、これ以上の会話は無駄だ」
「は?」
「ぐあっ!」
ドサッ……
俺が右手を軽く上げると、男が1人倒れた。
乃々香が麻酔弾でも打ち込んだんだろう。
当然の事だが、タイミングもピッタリだった。
「なっ!? お前、何をしやがった!」
「麻酔をうっただけだ。ちょっと寝てもらって、移動した先でゆっくり話を聞かせてもらいたいからな」
「だ、誰が喋るかっ!」
「別にいいさ。お前が喋りたくないってんなら、喋りたくなるようにしてやるからな」
「なっ……」
「俺は優しい男だからな。好きなコースを選択させてやるよ。水責めか? 火炙りか? 自白剤ってのもあるが、あれは死ぬかもしれねぇからな。ま、2人いるしどっちでもいいけどな」
もちろんそんな事はしない。
もしかしたら奏海はやってるかもしれねぇが、俺はしない。
したくないからな。
面倒だし……
「奏海ちゃんはそんな事はやりませーん」
「俺、声に出してたか?」
「顔に書いてありました」
「そうか……」
小声で乃々香と冗談をいいながら、男の様子をみていると、
「お、脅そうったってそうはいかねぇぞ! お前がスノーフレークって事は、そんな事は出来ねぇはずだ!」
と、叫んできた。
だが、威勢がいいのは声だけで、かなり震えている。
「スノーフレークは警察とも組んでるんだし、そんな法に触れるような事……」
「バカな奴だな、スノーフレークを何だと思ってるんだ? 警察と組んでる、善良な組織だとでも思ってるのか?」
「……え?」
「お前、スノーフレークが赤い羊を捕まえたって知らないのか?」
「し、知ってはいるが……」
「どうやって捕まえたのかは?」
「囮かなんかを使ったって……」
「そうだ。スノーフレークは必要とあらば平気で社員を囮に使うような会社なんだよ」
これに関しては嘘は言っていない。
まぁ、囮になってたのは社員というか、社長自身だかな。
「確かに警察と組む時もあるが、俺達は基本的に金さえ貰えばなんでもやるなんでも屋だからな。なんでもな……」
「わ、分かった! いう、言うからっ!」
「ほぅ?」
「依頼してきたのは男だ! スーツ姿の、真面目そうな男! 前金だって10万も貰った!」
「名前、年齢、背格好、分かる事全て話せ」
「名前は分からねぇ……歳は40代くらいだった。身長はあんたとかわんねぇくらいで……」
「他には?」
「も、もうねぇよ……」
確かにこれ以上知ってる事はなさそうだな……
「とりあえず回収しとくから、副社長はもういいよ」
「もういいってなんだよ。こんなんなら、最初からそっちだけで片付けとけよ」
「はいはーい。瀧沢さんにお願いしたし、早く行った方がいいよ。会いたくないでしょ?」
「あぁ、そうさせてもらう」
ぐへっと短い悲鳴を上げて横たわったもう1人の男も無視して、財前家へと向かう。
全く、とんだ寄り道だったな……
読んでいただきありがとうございます(*^^*)