嘘
凛緒視点です。
♪♪♪♪♪
エリンさんと話していると、私の携帯がなった。
叔父様からだ……
「エリンさん、ちょっと失礼するわね」
「はい。凛緒様は閉じ込められている設定でお願いしますね」
「えぇ」
フクも言ってたけど、どこからどう情報が漏れるのかなんて分からない。
叔父様もあの女には警戒しているし、あの女も財前グループの会長となった叔父様には、そう易々とは近づけないみたいだけど、それでももしかしたらどこかであの女に伝わってしまうかもしれない。
だからこそ、叔父様にも私はフクに捕まっていて、フクは私欲のために私に蔵の開け方を聞き出そうとしているのだと言わないと!
警察とか、動く事にならないといいけど……
「……はい」
「あ、凛緒ちゃん? 調子はどう?」
「大丈夫よ……」
「さっき電話した人は、近くにいるのかい?」
「いいえ、出掛けて行ったわ」
「そうか」
フクが私の代わりに囮になってくれたとは言えないけど、それでも問題は大きくしたくなかったので、曖昧な感じにしておく。
もし本当に私が閉じ込められていたとしても、私はきっと叔父様に迷惑をかけまいとしていただろうし……
「凛緒ちゃん? 本当に大丈夫なのか?」
「えぇ……」
「実は、さっき電話した時から、あの男はどうかと思っていたんだ。電話での対応も丁寧とは言えなかったし……もしかして凛緒ちゃん……何かされたんじゃないか?」
「そ、そんな事はないわ! 本当に大丈夫なの!」
「私に迷惑がかかるからと心配しているんだね。そんな事は心配しなくていいから、正直に話してごらん?」
私が閉じ込められていた場合にとる行動というのは、私以外にもバレバレだったみたいだ。
本当は大事にしたくなかったから、いいたくなんてなかったけど……
でも何故かエリンさんが、
"凛緒様は、閉じ込められて困ってます"
というのと、
"副社長が蔵を狙っています"
と、かかれたスケッチブックを、私に見えるように掲げているので、流石に言った方がいいように思えてきた。
「あの、あのね……あの男は、蔵を開けたいみたいなの……」
「ん? でも、凛緒ちゃんは蔵の開け方を知らないって言ったんだろ?」
「信じてないみたい。だから、私から聞き出して、その情報を親戚達に売ろうと考えているみたい」
「まさか……そんな奴だったとは……スノーフレークだからこそ、信頼できると思ったんだがな……」
あぁ、心が痛い……
スノーフレークが悪く思われるだなんて……
奏海さんに失礼過ぎるわ……
「それで、凛緒ちゃんは大丈夫なのか?」
「えぇ。一応ホテルの部屋に閉じ込められてはいるけど、かなり快適な部屋だから大丈夫よ」
「何を呑気な事を言っているんだ! ホテルの名前は? すぐに迎えにいくから」
「叔父様、本当に大丈夫よ。私の事は気にしないで」
「すぐに警察に……」
「大事にしてほしくないの!」
やっぱりこうなってしまったか……
「叔父様、前にも言ったと思うけど、私はスノーフレークに入りたいの。こんな事で、スノーフレークと揉めたくはないわ」
「し、しかし……」
「本当に大丈夫だから……心配してくれて、ありがとう、叔父様」
「分かったよ、凛緒ちゃん……」
とりあえず警察には連絡しないでくれそうね……
良かった……
「そういう事なら、きっとそのうち財前家の方に来るな? 私もなんとか話し合ってみるよ」
「えぇ」
「無理しないようにね。いつでも電話してくれていいから」
「ありがとう」
長くなりそうだったので、こっちから電話を切らせてもらった。
「もっと副社長を悪者にした電話でよろしかったのですよ?」
「でも……」
「警察等々、何も問題はありません。凛緒様が気になさる必要はありませんから」
エリンさんは優しく笑いかけてくれた。
こんな謂れのない人達に怯える日々でも、私には優しい味方が居てくれる。
それが本当に嬉しかった。
読んでいただきありがとうございます(*^^*)