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スノーフレーク  作者: 猫人鳥
episode7 開かずの蔵と記憶編
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あの女

凛緒視点です。

 急なフクの変化に驚きはしたけれど、全てはフクの演技だった。

 盗聴器を仕掛けた相手に、標的にすべきは私ではなくフクだと思わせるようにしてくれた。

 もしかしたら信じてくれていなかったのかと疑ったけど、私が蔵の開け方を知らないというのも、ちゃんと信じてくれていたみたいだ。

 やっぱりスノーフレークに依頼して良かった。


「じゃ、盗聴器もなくなった事だからな。そろそろ聞かせてもらおうか?」

「何を?」

「さっき言ってた"あの女"って奴だよ。盗聴器を仕掛ける可能性がある奴なんだろ? 誰だ?」


 さっきのどうでもいいっていうのは演技だったんだものね。

 私の呟きのようなあんな発言も、ちゃんと気にしてくれていたという事を、何故か凄く嬉しく感じる。


「あの女っていうのは、今もきっと財前家の本家でくつろいでいる、七緒(ななお)という女よ。自称、お祖父様の妻なの」

「自称?」

「お祖父様が亡くなられてから、急に現れたのよ。婚姻届受理証明書を持ってね」

「なら、自称じゃなくて、本物じゃねぇか。そんなもんは流石にそうそう偽造できねぇぞ」

「まぁそうなんだけど、結婚の受理された日が、お祖父様が亡くなられる少し前だったの。財前家に現れたタイミングもお祖父様が亡くなってからすぐだったし、言動が怪しすぎるのよ」


 私の身の回りで色んな事が起きるようになったのも、あの女が現れてからだ。

 部屋を荒らしたりしたのは親戚達の可能性もあるから、全てではないだろうけど、絶対に犯人はあの女。

 それにあの女は親戚でもなんでもない、血の繋がりもない存在なんだから、一番過激に攻撃してくる可能性がある、要注意人物だ。

 だからきっと、盗聴器も……


 本当に、どうしてお祖父様はあんな女と結婚をされたんだろう?

 きっと騙されたとか、お酒に酔わされたとか、何か事情があったに違いないんだ。

 でも、あのしっかりもののお祖父様が、そんな女にひっかかるだなんて……


「その女は、じーさんとどういう関係だったんだ?」

「お祖父様の秘書をしていたそうよ。5年ほど前からね。ついでに言うと、お祖父様の病気が発覚したのも、5年ほど前ね」

「なるほど……つまりお前は、じーさんの病気を知り、もう長くないと悟ったその女が、何らかの方法でじーさんと結婚をし、財前家を狙っていると考えてるんだな」

「えぇ。話が早くて助かるわ」


 お祖父様の財産は、お祖父様が遺していた遺書の通りにちゃんと分配された。

 そこにあの女の名前もあり、一族全員で驚いたものだ。

 だから財産は手に入れているんだから、もう財産家に用はないはず。

 それなのにまだいるんだから、これは完全に蔵狙いだろう。


「じーさんに何か弱みはあったのか?」

「私の知る限りはないわね。とても完璧な人だったから」


 だから本当に分からない。

 何故お祖父様が結婚されたのか……

 遺産も相続させているんだか、本当に認めていたという事になるし……


「言動が怪しいっていうのは?」

「毎日蔵の話をしてくるわ。あからさまに」

「他は?」

「お祖父様との思い出とかも聞いてくるわね」

「確かにあからさまだな。相手はしてやるのか?」

「全部無視していたわ」

「無視して大丈夫なのか?」

「メンタルがかなり強いようでね、無視してもずっと追いかけて話しかけてくるのよ。それに、私の外出中に私の部屋に入ってる……」


 激しく荒らしてはいないけど、だからこそ逆に怖い。

 隅々まで調べているみたいだし、それこそ盗聴器とかを仕掛けていたのかもしれない……

 だから怖くて、あの家に帰れなくなったんだ。


「なるほどな……じゃあまぁ、そいつとコンタクトをとってみるか」

「えっ!? そんな、いきなり……」

「結局どっかで会うことになるんだ。もったいぶってたってしょうがないだろ?」

「それは、そうだけど……」


 危なくないかしら……?

 本当に盗聴器を仕掛けていたのがあの女なら、フクに何をするかなんて分からないのに……

 でも、腕の立つ人をとお願いしたんだし、フクはきっと相当強いのよね?

 あまりそうは見えないけれど……


「お前はこの部屋から出るなよ。閉じ込められてるんだから」

「分かったわ。気をつけてね」

「あぁ……あと、叔父さんとかから連絡があったら、ちゃんと閉じ込められて困ってるって言えよ」

「え……そんな事したら、フクが警察に通報されるんじゃ……」

「そこはこっちでなんとかするから」

「そう……」


 なんとかするって……

 変に事件とかにならないといいけど……


「叔父さんに大丈夫だなんて言っちまったら、そこからお前が本当は閉じ込められた訳じゃないと、盗聴してた奴に伝わる可能性だってある。何のために俺が標的になるようにしたと思ってるんだ?」

「そ、そうよね……分かったわ」

「じゃあな、何かあればエリンに言えよ」

「えぇ……いってらっしゃい」

「おう」


 フクはそれだけ言って、部屋を出ていってしまった。

 本当に多大なご迷惑をかけているという罪悪感しかないけれど、今はフクの無事を信じるしかないわね……


読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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