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スノーフレーク  作者: 猫人鳥
episode7 開かずの蔵と記憶編
175/424

ボディーガード

凛緒視点です。

「メロンクリームソーダとオムライス。以上だ」

「かしこまりました。少々お待ち下さいませ」


 フクは喫茶店の店員さんを呼び、メニューを注文した。

 私のボディーガードだというのに、本当に守る気はないという感じ……


「随分と可愛い注文をするのね。意外だったわ」

「あ?」

「見た目に似合わず、子供っぽいのね」

「何勘違いしてんだ? 今のはお前の飯だぞ?」

「私の?」

「お前、何にも食ってねぇんだろ? 俺はお前のボディーガードなんだから、ボディーをガードしなきゃいけねぇんだよ。襲われてもないのに、食べてなかった事で倒れられたなんて事にする訳にもいかねぇからな」


 怖くて何も注文出来ない私に、食べさせるために……

 それは分かるのだけれど、だったらなんで私に食べたい物を聞いてくれないのかしら?

 メロンクリームソーダとオムライスだなんて……


「私をバカにしているの?」

「俺がいつ、そんな事をした?」

「メニュー内容が子供過ぎるわ」


 私が少し怒ったように言うと、フクは呆れたようなため息をついて、


「あのなぁ、俺はお前のボディーガードではあるが、従僕じゃない。何でもかんでもお前の価値観で動くと思うな」

「それはそうなんでしょうけど、私の食べるメニューなのなら、私にだって選ぶ権利はあったはずでしょう?」

「なら聞くが、何を頼みたかった?」


 フクがメニューを開いて私の方へとスライドしてきた。

 そんなに品数が多い喫茶店ではないみたいだけれど、当然メロンクリームソーダとオムライス以外の選択肢がある。

 もう頼んでしまっている以上今更だとはいえ、私だったらどれを選んでいたのかを考えてみる。


 オムライス……確かに美味しそうではあるけど、そんなに食べようとは思わないわね。

 ナポリタン……食べたことがないから分からないけど、全体的にケチャップで味付けをしているだけのようにしかみえないし、特に食べたいとも思わないわ。

 カレーライス……何のスパイスをブレンドしているかという表記がない以上、食べる気がしない……

 ハンバーグ、トンカツ、唐揚げ……そんながっつりしたもの、食べる気分じゃない。


「ほらな。お前は頼めねぇんだよ」

「……私、まだ何も言ってないわ」

「どれも食べようと思えねぇんだろ? 食べたいと思う物に対して、そんな顔を向けてるなんて、あり得ねぇからな」

「……そんなに酷い顔だったかしら?」

「ステーキを出された時の奏海よりは酷くない」


 ……それは、奏海さんはステーキが嫌いという事なのかしら?

 というか奏海さんって、間違いなくスノーフレークの社長の奏海さんの事よね?

 フクは副社長なんだし、社長の奏海さんとも当然交流はあるでしょうけど……


「冗談を言ってくれているの?」

「いや、ただの事実だ」

「奏海さんはステーキが嫌いなの?」

「ステーキが嫌いという訳ではない。ただあいつは、食べるのに時間がかかる食べ物が嫌いなんだ」

「時間がかかる?」

「ステーキは、ナイフとフォーク、つまり両手を使わないといけないだろ? その上、それなりにしっかり噛まないと飲み込めない」

「えぇ」

「あいつはそのロスタイムが嫌いなのさ」


 それはまるで、食事をロスタイムだと言っているかのよう……

 私も人の事は言えないけれど、やっぱり噂通りの変わった人なのね……


「お待たせ致しました。メロンクリームソーダと、オムライスになります」


 店員さんは迷う事なく私の前に並べていった……

 まぁ、見るからにフクが食べるとは思わなかったんでしょうけど……


「ほら、食え。薬かなんかが入れられてる事が心配なのかも知れねぇが、その心配の必要はねぇ」

「ここが安全な喫茶店だから?」

「いや、お前が殺される事はないからだ。だから仮に薬が入れられていたとしても、それで死ぬ訳じゃない。それなら俺がいる以上は解決できる」

「……そう。いただきます」


 ボディーガードって、全ての脅威から守ってくれる訳ではないのね……

 私を守り抜く為ならば、私に多少の変な薬は飲ませてもかまわないという考え方なんだ。

 ……別にいいけれど。


「あと、一応言っておくが、オムライスにしたのはたんぱく質と糖質が取れるからで、メロンクリームソーダも、ここの飲み物の中で一番甘そうだったからだ。どんな状況においても、糖質はとっておくべきだからな」

「バカにしていたわけではないのね」

「そもそもバカにされただの子供っぽいだのがお前個人の価値観だ。何故お子さまメニューでもない料理を頼まれたのに対して、バカにされたと思ったのかが、俺には理解できんな」

「そうね、確かにそう……フクのいう通りだわ。私は自分の価値観で、かなりの偏見を持ってしまっていたみたいね」

「価値観がどうであれ、それは個人の自由だ。別に変える必要はない」


 私の事を考えてくれた上での注文だったのね……

 それほどに糖質を取らされて、私が太るという事は考えてくれていないみたいだけれど……


「フクは食べないの?」

「俺の食事はこの、サプリメントだ。短時間で食える上に、必要な栄養素が揃っている」

「……フクも奏海さんと同じで、食事に時間がかかるのは嫌いなのね。似た者同士という事なのかしら?」


 何気なく言った言葉だったけど、フクはかなり不機嫌を丸出しにして、


「価値観を変える必要はないとはいったが、その考え方は改めてもらおうか。俺は奏海と似てなんていない!」


と、怒ってきた。


「わ、分かったわ」


 仕方なく返事はしておく……

 社長と副社長という関係なんだし、お互いに支えあっているようなものかと思ったけど、そうでもないのかもしれないわね……


読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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