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スノーフレーク  作者: 猫人鳥
episode7 開かずの蔵と記憶編
173/424

特例

episode7になります。

副社長視点です。

 スノーフレーク本社にある社長室。

 そこが俺の仕事場だ。


 社長である奏海はほとんど会社にはいない。

 奏海のいない時、この社長室は完全に俺の仕事部屋となる。

 もちろん社長の椅子になんて座らないがな。


 社長室に設けられた俺の席で、奏海ではなくとも構わない書類作業を片付けるのが俺の仕事だ。

 そしてたまに部屋へとやってくる奏海に報告をし、新しい仕事を任される。

 そこそこに仕事が片付けば、副社長室へ行き、風呂に入り、寝る。

 そして起きたらまた、社長室で仕事をする。

 そんな日々だ。


 俺の食事は、スノーフレークの社員食堂のあまり物だ。

 毎日朝昼晩と、3食を誰かしらが持って来てくれるからな。

 ありがたい事だ。

 つまり俺は、このスノーフレーク本社のビルから、一歩たりとも外へ出る事なく生活をしているという事だ。


 だというのに……


「ねっ! お願いしますよ、副社長!」

「紅葉……」


 今俺は、紅葉からとんでもない提案をされたところだ。

 紅葉はこの俺に、外へ仕事に行けといってきたんだ。


「あのなぁ、紅葉。俺はここからは出ねぇ。そういう約束だ」

「特例という事で」

「特例もなにもあるか!」

「ですが……」


 一向に引きそうにない紅葉をどうしたものかと悩んでいると、


「何を揉めてるの?」


と、奏海が葵と一緒に帰ってきた。


「あ、お帰り~」

「ただいま。それで、何が特例なの?」

「実はね、新しい依頼を受けたんだけど、その適任者が副社長しかいないの。それで、副社長に行ってもらいたいなーと」

「それはダメよ。紅葉、あなただって分かっているでしょう?」

「そうだ、そうだ。葵の言う通り」

「副社長と意見が合うだなんて、虫唾が走るけど、こればっかりはしょうがないわ」


 言い方、言い方よ……

 ほんと可愛くねぇガキだ。


「そんな特例をださないといけないだなんて、どんな依頼なの?」

「頭がよくて、腕のたつ人材を、しばらく自分のボディーガードにつけてほしいっていう依頼。因みに金額は1日がこれ」

「あら、こんなに? どこかのお嬢様?」

「ま、そんな感じ」

「これは確実に受けないとね」

「でしょ?」


 スノーフレークは金さえもらえば何でもやる何でも屋だ。

 だが、別に金に執着している訳ではない。

 なんたって社長は、超大金持ちの桜野グループの会長なんだからな。

 だから今のも、金がとんでもねぇ額だから依頼を受けようという話ではなく、ここまでの金額を出して来るんだから、相当に困っているのだろうと察した結果の発言だ。


「でも、何で副社長? こういう依頼なら、真でいいじゃない」

「もちろん最初は真に行ってもらったよ。でも、追い返されたの」

「追い返された?」

「見た目が弱そうだというのと、若すぎるって」

「なにその理由……」

「もっと見た目からして強そうなのがいいって事ね……」


 確かに真は、一見するとただのヒョロガリだからな。

 あれで結構腕は立つんだが……


「真を変装させて行かせるっていうのも考えたんだけど、やっぱり依頼人を騙しているみたいになっちゃうし」

「そうね。信用は第一に考えないと」

「でしょ? だから副社長しかいないと思って……」

「でもね、特例だなんて一度許してしまうと、段々と緩くなっていってしまうものなのよ?」

「それは分かってるけど、この依頼の適任者が他にいないでしょ? 若いのがダメって言われてる時点で、奏海や葵だってダメなんだから」

「おい、俺を年寄り扱いするな!」


 俺はまだ32歳だ!

 まだまだ若いわ!

 まぁ高校生のこいつらからしたら、年寄りだろーがな。


「仕方ないわね。今回だけ特例って事で、副社長に行ってもらいましょうか」

「はぁ!? 奏海、お前までなに言い出してんだよ」

「仕方ないでしょ? 他にいないんだから」

「藤雅さんでいいだろーが!」

「あ、藤雅さんは顔バレしてるからダメだよ」

「くそっ!」


 何で俺が……


「待って奏海。私も反対。流石に副社長を外へ出すなんて……」

「だよな? だいたい俺はそんなに強くもねぇ。頭は切れるがな!」

「そこは二重の意味もかねて、乃々香についてもらうから」

「……うーん、まぁ、それなら……」

「おい待て! 諦めるな葵!」

「うるさいわよ」


 全く人の話を聞かない話し合いの結果、俺は外へ出ることになってしまった……


読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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