大親友
乃々香視点です。
「本日もお疲れ様でした」
「あ、ふーじー。うん、ただいまー」
仕事を終わらせて奏海ちゃんの家に帰ってくると、ふーじーが迎えてくれた。
もうかなり遅い時間なのに、ふーじーは起きていてくれるんだな。
ちゃんと寝てるのかが心配だ。
「乃々香様、お食事はどうなさいますか?」
「あー……うん、いいや。ふーじーはこんな時間まで起きてるの? ダメだよ、ちゃんと寝ないと」
「奏海様がまだ起きていらっしゃいますので」
「じゃあ私が寝かせてくるから、ふーじーももう寝てね」
「お心遣い、ありがとうございます」
主犯はやっぱり奏海ちゃんの野郎か!
ふーじーも律儀に奏海ちゃんに合わせなくていいのに……
ドーンッ!
「やっほー、奏海ちゃーん! 起きてる? どうせ起きてるんでしょー?」
「乃々香、ノックは?」
「なんじゃそりゃ?」
「私が頭をノックして、思い出させてあげようか?」
「そんな事されたら、頭パッカーンじゃん!」
「ならちゃんとノックして」
「はーい、次の次くらいから気をつけ始めまーす」
「直す気ないじゃない」
「まぁーねー」
奏海ちゃんの執務室の扉を勢いよく開けて、奏海ちゃんといつもの応酬を繰り返す。
今日も奏海ちゃんは相変わらずだ。
「今仕事終わり? お疲れ様」
「うん。奏海ちゃんも今が仕事終わりになったから。ほら、早く寝るよ」
「私はまだいいの。乃々香は早く寝なさい」
「よくないの! ふーじーが寝れないでしょ!」
「それは藤雅さんの問題だから。それで体調を崩すような人なら、私の執事には相応しくない」
「下らない事言ってないで、ほら、寝るよー」
「あ、ちょっと!」
なんか面倒な事を言っていた奏海ちゃんの手を引っ張り、無理矢理に執務室から連れ出す。
力の差とかで言えば、圧倒的に奏海ちゃんの方が強いんだから、私を振り払うなんて事は奏海ちゃんには容易なはずだ。
それでも大人しく私に引っ張られてくれるんだから、そういう事なんだろう。
ほんと、素直じゃないな。
「はい、寝て! 布団を被って、おやすみなさい!」
「乃々香? そこは私のベッドなんだけど?」
「だから私が寝る事で、温めてあげてるんじゃん!」
「一緒に寝たいの?」
「……うん」
素直じゃないのは私もか……
「何かあった?」
「そういうのじゃないけど……ちょっとね」
「まぁ、明日またゆっくり聞かせて」
「うん」
私の事も分かってくれていたから、ここまで大人しくついてきてくれたんだろうな……
本当に、昔から変わらず優しいな……
「ねぇ、奏海ちゃん、覚えてる?」
「私が何かを忘れた事なんてあった?」
「それはないけど……」
「いつの話をしたいの?」
「私と奏海ちゃんが、初めて話した日」
「あの日を忘れる訳がないじゃない」
「だよね……」
あの日、私の事を信じてくれたのは、奏海ちゃんだけだった。
誰も相手にしてくれない中、それまで誰にも興味を持たなかった奏海ちゃんが、私に興味を持ってくれた。
私達の関係は、全部あの日から始まっているんだ。
だからこれは、本当にとても大切な宝物で……
「乃々香。今度一緒に、ペンギンパークに行きましょうか」
「ふぇっ?」
何? 聞き間違い?
「皆でっていうのは流石にちょっと厳しいけど、ありがたい事に私達には頼れる仲間がたくさん増えたからね。私も少し時間とれそうなの」
「ほ、ほんとうに……?」
「もちろん突然仕事になる可能性はあるけど?」
「いいっ! それでもいいよ! 一緒に行きたい!」
「私も乃々香と一緒に行きたいから。何しろ彼処は、乃々香のために作った場所なんだからね」
「うん、うんっ! ありがとう、奏海ちゃん!」
「さ、もう寝ましょ」
奏海ちゃんも布団に入ってきてくれた。
「乃々香、私の友達になってくれてありがとう」
「うん! それが私の一番の誇りだからね!」
くー君とは、いつもどっちが奏海ちゃんと最初に仲良くなったかを喧嘩しているけど、私が先なのは紛れもない事実だから!
今度奏海ちゃんからもハッキリと言ってもらおう!
でも、奏海ちゃんが私とペンギンパークに行ってくれるっていうのは、間違いなく、くー君が奏海ちゃんに言ってくれたからだと思うし、もう少しだけ譲歩してあげますか!
何よりも、奏海ちゃんと一緒に行けるペンギンパークが楽しみだ!
読んでいただきありがとうございます(*^^*)
episode6は完結です。