勉強会
詩苑君視点です。
今日は僕の部屋で勉強会をする約束をしている。
メンバーは将大と、高坂と、早瀬だ。
「詩苑の部屋での勉強会、久しぶりだなー!」
「前みたいに騒がしくしたりしないでよ」
「分かってるよ!」
「もう十分に騒がしいんだけど?」
「愛依ちゃん、ナイスツッコミ!」
日下部さんに送ってもらい、皆で僕の部屋へと向かって歩いていると、
「ねぇプルルス。悪いんだけど、コレ場所変えてくれない?」
「みゃー」
「えー、ダメ? 前のよりも光を反射するから、上から見てるとチカチカするんだけどー」
「みゃー」
「ねぇー頼むよプルルスー」
「みゃー」
「そんなに嫌? どうしてもここがいいの?」
「みゃー」
「もー」
と、プルルスと話している乃々香さんに遭遇した。
話しているというか、話せていないけど……
「あ、あの、乃々香さん? プルルスはさっきからずっと、"いいよ"って言ってますよ?」
「え? そうなの!?」
「みゃー」
頷いてから、僕の方にすり寄ってきてくれたプルルス。
これは、乃々香さんの相手に疲れた、という事かな?
「あっ! あぁ……おかえりなさい、詩苑君。学校は楽しかったですか?」
「え? あ、はい。今日も有意義に過ごせました」
「それはよかったです。今日はお友達と勉強ですか?」
「はい」
「それはそれは……頑張って下さいね」
「ありがとうございます」
乃々香さんは、思い出したように急にお姉さんぶり始めた。
まぁ、いつもの事だけど……
「お友達は大切にしないといけませんよ」
「はい。分かってます」
「それと、詩苑君は頑張り過ぎてしまうところがありますからね。ちゃんと休みながら頑張るんですよ?」
「え、あ、はい」
「お友達というのは、自分が思ってる以上に心配してくれちゃうものみたいですからね。あまり心配をかけないように!」
「……何か、あったんですか?」
「え……な、なんにも、ないですよー」
いつもお姉さんぶってるだけで、為になることとかは特に言わない乃々香さんが、なんかいい事っぽい事を言っていた……
頭でもぶつけたのかな?
大丈夫だろうか?
「それでは皆さん、私は特になんのお構いも出来ませんが、ゆっくりしていって下さいね」
「「「ありがとうございます」」」
乃々香さんは、雰囲気だけは御淑やかな様子で、行ってしまった。
「ねぇ、今の人、誰?」
「あぁ、愛依ちゃんは初めましてだったね。あの人は、奏海お嬢様の親友の乃々香さんだよ」
「なんか、優しいお姉さんな感じだったけど、最初にプルルスと喋ってた時は、凄く子供っぽかったよね?」
「ああいう変な人なんだよ」
「変な人?」
「うん、変な人」
「変な人だねー」
乃々香さんは、誰もが認める変な人だ。
お嬢様も大分変わった方だけど、そのお嬢様以上に変わってる。
「なんか、面白い人だね!」
「そうだね! 私達より歳上なのに、"可愛い"と思えるんだよねー」
「あー、分かる!」
「お前等、気楽に言ってくれるな……この間乃々香さんが癇癪起こした時なんて、本当に大変だったんだぞ?」
「癇癪?」
「奏海ちゃんがいないー! ってな」
「あぁ、それは大変そう……」
神園さんが止めて下さったからなんとかなったけど、乃々香さんに暴れられるのは本当に困る。
料理はバカ食いするわ、庭にペイント弾を撒き散らすわ……
父さんも日下部さんも、かなり困ってた……
あんな事をする癖に、なんでお姉さんぶれると思ってるんだろう?
本当に、変な人だ。
でも、乃々香さんが言っていたとおり、友達は大切にしないといけないというのは分かる。
僕だって皆に心配されて、迷惑をかけた事があるんだから、ちゃんと気を付けていないと!
わざわざ言うんだし、乃々香さんにも何かあったのかもしれないな。
読んでいただきありがとうございます(*^^*)