占める割合
一輝視点です。
乃々香が宝物にしているペンダントを、乃々香は何も躊躇う事もなく俺に渡してくれた。
あの時の俺の事を本当に怒っていないというのは嬉しいが、これは幼馴染みの男が作ったペンダントらしい……
母の形見だとか、友達と仲良くなれたとか言っていたから、本当に大切なペンダントだって分かってるけど、これを乃々香が大切にしているという事が、いまいち受け入れられない。
「乃々香ちゃん! くー君さんは、ペンダントとかよく作る人なの?」
「え? ペンダントはそんなに作らないよ。でもくー君は器用だからね。なんか色々よく作ってるね」
「例えば、どんなもの?」
「うーん? この間は、割れちゃった奏海ちゃんの大切な置物を直してたね」
「それで奏海さんは喜んでたの?」
「どうかな? 奏海ちゃんって、基本的に喜んだりしないからね! 喜怒哀楽が薄いというか……いや、怒はあるかな……?」
「怒りはするんだね……」
「うん。でも、あんまり笑ったり喜んだりはしないね。だからくー君が告白しても、全部無視してるんだよ。あははっ!」
陽日がやけにくー君の事を聞くなぁと思っていたら、なんか、告白とか聞こえてきたんだが……?
「は? くー君が奏海に告白?」
「うん、子供の頃からずっと続いてるね。もう習慣みたいなものだよ」
「そうなのか……」
陽日の方を向くと、凄い笑顔だ。
陽日は知っていたのか……
くー君は奏海の事が好きだって事を。
あと、俺の嫉妬にも気づいていたみたいだ。
でも、他に好きな奴がいるからって、乃々香がそいつの作ったペンダントを肌身離さず持っているというのは、やっぱり納得できない……
「なぁ、乃々香。大切なものなら、持ち歩くよりもしまっておいた方がいいんじゃないか?」
「え? あぁ、ペンダントの事? なんか、持ってないと落ち着かないんだよね。仕事にも悪影響が出ちゃうくらいに」
「悪影響って?」
「なんかね、凄く奏海ちゃんに会いたくなる!」
「え……」
そこは奏海なんだな……
お母さんとかくー君とかじゃなく……
「じゃあこの間も、奏海に会いたくなってたのか?」
「うん! でも、帰ってもいなかったの……まぁいないのはいつもの事なんだけど」
「あぁ、だからさっき、いないって連絡してきたんだな」
「うん。多分この間のペンダントを持ってない私が、お家で大分派手に暴れたから、それを気にしてるんだと思うよ!」
大分派手に暴れた……?
「乃々香。ほら、返すよ」
「あ、うん」
「だから今日は、帰って奏海がいないからって、暴れるんじゃねぇーぞ」
「大丈夫だよー」
本当によくわかんねぇ奴だけど、乃々香の中で占めている割合が大きいのが、奏海という存在なんだって事はよく分かった。
「今度はいつ頃これそうなんだ?」
「どうだろうね? まだ分かんないかな?」
「そうか……」
「でも、前みたいに皆を心配させちゃうのはよくないもんね! だから、今度はお手紙書くよ!」
「それいいね! 私達からも書いていい?」
「うん。ここ宛に書いてくれればいいから!」
乃々香は住所を教えてくれた。
少し離れてるけど、行けない距離ではないくらいの場所にあるマンションだ。
「ここに住んでるのか?」
「知り合いがね! だからここに送ってくれれば、私に届くよ!」
「分かった」
これでこれからは、乃々香とも連絡がとれるんだ。
「じゃあ、そろそろ帰るね! お邪魔しましたー!」
「うん! また絶対にきてね!」
「待ってるからな!」
「ありがとう!」
明るく手を振ると、また木の上に飛び乗って、そのまま走って行ってしまった。
「行っちゃったね……よかったの? お兄ちゃん」
「もう会えない訳でもないだろ?」
「そうだね」
また必ず会えるんだから……
今は乃々香に何て手紙を書くかでも、考えておくとしよう。
読んでいただきありがとうございます(*^^*)