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スノーフレーク  作者: 猫人鳥
episode6 対人関係における偏見編
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宝物

陽日視点です。

 私がお風呂から出てくると、楽しそうな乃々香ちゃんの笑い声が聞こえてきた。

 お兄ちゃんが帰ってきているみたいだし、乃々香ちゃんと話をしているんだろう。

 なんか"かずっきー"とか聞こえるし、仲も良さそうで安心だ。


「お兄ちゃん、おかえり。今日もおつかれ様」

「おう。陽日もありがとうな」

「ううん」


 邪魔しちゃ悪いかとも思ったけど、あんまり長風呂だと思われると、乃々香ちゃんも心配しちゃうだろうからね。


「陽日ちゃんもおかえりー」

「乃々香ちゃんがお風呂をピカピカにしてくれたお蔭で、いつより疲れが取れた気がするよ! ありがとう」

「それは良かったー」

「乃々香ちゃんはまだいても大丈夫なの? もう結構遅い時間だけど?」

「大丈夫だよー。どうせ連絡の1つもしてこないし……ん? あれ?」


 乃々香ちゃんは自分の携帯を確認して、不思議そうな顔をしていた。


「どうかしたの?」

「奏海ちゃんから、連絡が来てる……」

「え? 急用? 大丈夫?」

「うん、大丈夫……」


 大丈夫とは言ってるけど、いつもの明るく元気な乃々香ちゃんらしくない……

 奏海さんは確か、乃々香ちゃんの一番の親友で、乃々香ちゃんが住まわせてもらってるお家の人だったはずだ。

 お金持ちの……


「おい、乃々香。無理しなくていいんだぞ? 何かあったんなら、早く帰ったら方が……」

「あ、ううん。本当に大丈夫だよー。ただ、奏海ちゃんからの連絡なんていつも来ないから、ビックリしただけ」

「急用の連絡じゃなかったの?」

「うん! 明後日まで家に帰らないって連絡だった。いつもは連絡もなしにどっか行っちゃうし、居ると思って会いにいっても居なかったするんだよね」

「そんな感じなのか……」


 なんか、結構酷い人だな……

 なんでその人が乃々香ちゃんの大親友なんだろう?


「でも、今日は連絡が来た! それに、私の心配をしてるみたい! ほら!」


 乃々香ちゃんは凄く嬉しそうに携帯の画面を見せてくれた。

 そこには、


明後日までは家に帰らないから、乃々香が早くに帰ってきても私は居ないから。

あまりご迷惑をお掛けしないように、帰りなさいね。

くれぐれも、ペンダントはなくさないように気をつけて。


と、書いてあった……

 これ、乃々香ちゃんを心配してくれてるメールなのかな?

 注意ばかりが書いてあって、どちらかと言えば冷たい印象を受けるんだけど……


「えへへ~。奏海ちゃんからの連絡だ~」

「嬉しそうだな」

「うんっ!」


 本当に乃々香ちゃんは嬉しそうに笑ってる……

 このメールも、乃々香ちゃんには何か別の伝わり方がしてるのかな?


「ペンダント、なくさないようにって……この間のあの事だよな? 本当に悪かった……」

「気にしなくていいよー」

「でも宝物だったんだろ?」

「うん、宝物だよー。ほらこれー」

「宝物なのに、いいのか? 俺に渡して」

「かずっきーなら大丈夫だからね!」

「ありがとう」


 乃々香ちゃんはあの宝物のペンダントを、お兄ちゃんに渡してくれた。

 お兄ちゃんからしたら、複雑だろうな……

 1回あれを捨てるって言っちゃってるから……

 でも、こうやって乃々香ちゃんが渡してくれる事は嬉しそうだろうな。


「なぁ? なんで、これが宝物なんだ? 何か思い出のものなのか?」

「思い出も思い出! これはね、お母さんの形見的なものなのですよー!」

「え……」

「しかもねー、ただの形見じゃなくて、1回カラスに盗まれた形見なのですよー!」

「カ、カラス……?」

「でー、木の上にいっちゃって、誰も信じてくれなかったのに奏海ちゃんだけは信じてくれて、これがきっかけで奏海ちゃんとお友達になれたんだー!」

「ん? んん?」


 乃々香ちゃんはペンダントが宝物な理由を話してくれたけど、いまいち話が分からなかった。

 ただ、とても大切なものなんだって事は分かる。


「なぁ、これ。もともとはペンダントじゃないんじゃないか?」

「そうだよー。お母さんが毎日着けてた髪飾りだったの」

「それをペンダントにしたのか?」

「うん。くー君がしてくれたんだ! 私は結構動くし、髪飾りとかつけてたら、直ぐに落としちゃうからね!」

「木の上とか屋根の上なんか走ったりするからだろ?」

「そうそう」


 乃々香ちゃんは笑いながら楽しそうに話してる。

 でもお兄ちゃんはかなり暗い顔をしてる……


「でさ、乃々香。そのくー君って誰?」

「幼馴染みー」

「ふーん。くー君が作ったアクセサリーが宝物で、いつもつけてるんだな……」

「そうだよー」


 お兄ちゃん……

 くー君さんの事をかなり気にしてるみたいだ。

 くー君さんは奏海さんの事が好きだから大丈夫だよって言いたいけど、私が言うのもおかしいし……

 この微妙な空気を改善する為に、私はどうしたらいいんだろう?


読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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