約束
陽日視点です。
陸君のお母さんに事情を話し、お家にお邪魔させてもらう事になった。
2階建ての大きくて綺麗なお家で、私達のボロボロ小屋とは違い過ぎる……
しかも、紅葉さんがくるまでまだ時間があるからと、私と照にケーキまで出して下さった。
急に来たお客さんにケーキが出せるなんて……
きっとケーキが常備されている家なんだろう。
照は今、陸君と一緒に鉄道のおもちゃで楽しそうに遊んでいる。
あの鉄道のおもちゃもそれなりの値段がしそうだし、辺りを見渡しても高そうなものしか置いてない……
床のお掃除ロボットとか、キッチンの食器洗浄機とか……
なんか、私達とは住む世界が違うって感じだな。
こんな凄い場所に、私達が居てはいけない気がする……
「緊張してるのかしら? 大丈夫よ。紅葉ちゃんはとても優しい子だから」
「あ、はい。ありがとうございます」
「乃々香ちゃんだったかしら? あなた達とはどういう関係なの?」
「そんなに深い関係って訳じゃないんです。ただ、1日を一緒に過ごしただけで……私5人兄弟で、兄が1人と、妹が1人と、照の他にもう1人弟がいるんですかど、その弟妹達と一緒にお祭りに行ってくれたりして……」
「この間の、△△神社のお祭り?」
「そうです! それでお祭りの後、家で乃々香ちゃんにお兄ちゃんが理不尽に怒って、追い出しちゃったんです……」
あの時の乃々香ちゃんは、どんな気持ちだったんだろう?
いきなり怒られて、あんな仕打ち……
大切な宝物のペンダントもとられたままなのに……
「追い出しちゃって、それから会っていないの?」
「私達はそうですね。お兄ちゃんが会って謝って、また家にくる約束をしてくれたらしいんですけど、来なくて……だから、早く乃々香ちゃんに会って謝りたいんです……」
「そう……」
乃々香ちゃんは怒ってるのかな?
お兄ちゃんの話だと、怒ってないような感じだったけど、本当は凄く怒ってて、もう私達になんて会いたくないんじゃ……
「大丈夫よ。絶対に大丈夫! そんなに不安にならないで」
「はい……」
陸君のお婆さんが凄く励ましてくれる。
本当に優しい人達だ。
陸君のお母さんとお婆さんに話を聞いてもらっていると、
ピンポーン!
と、インターホンがなった。
乃々香ちゃんの友達の紅葉さんが来てくれたみたいだ。
「急にごめんね、紅葉ちゃん」
「いえいえ、大丈夫ですよ。お邪魔しますね」
「あ、あのっ!」
「初めまして、四之宮紅葉といいます」
いきなりで動揺して、ちゃんと話せていない私に、優しく笑って挨拶をしてくれたお姉さん。
陸君のお婆さんのお友達で、乃々香ちゃんを呼び出せる人って話だったから、もっと歳上の人だと思っていたら、全然乃々香ちゃんと同い年ぐらいの人だった。
でも格好はスーツだし、乃々香ちゃんよりは歳上なのかな?
「それで、どういったご用件でしょうか?」
「あ、あのっ! 私達、乃々香ちゃんと友達なんです! あ、もしかしたら、乃々香ちゃんはもう、友達だなんて思ってないかもしれないんですけど……でもっ、また来てくれるって言ってたらしいのに、来てくれなくて……あっ、ごめんなさい……意味分かんないですよね」
緊張からなのか、脈絡もなく捲し立てるように話してしまった……
ちゃんと落ち着いて、状況を伝えないと……と、反省する私に、
「あぁ、そういう事でしたか」
と、何故か紅葉さんは納得してくれた様子だった。
しかも、
「大変申し訳ございませんでした」
と、深々謝罪までしてくれて……
「あ、あの?」
「乃々香がご迷惑をお掛け致しましたね」
「いえっ! 乃々香ちゃんは迷惑なんて……迷惑をかけたのは私達の方で……あの、乃々香ちゃんは怒ってますか?」
「とんでもございません。乃々香も皆さんに会いたいと思っていると思いますよ」
「でも、来てくれなくて……また来るって言ってたのに、もう1ヶ月以上になって……」
「んー? 今日の夜、ご都合はよろしいでしょうか?」
「え?」
「乃々香を向かわせわます」
「えっ!?」
そんな、いきなり?
しかもこの紅葉さんが勝手に乃々香ちゃんの予定を決めちゃってるけど、大丈夫なんだろうか?
「あの、私達は大丈夫ですけど……乃々香ちゃんはいいんですか?」
「はい。乃々香はですね、お休みを貰ったら遊びに行こうと思っていたんだと思います。だからお邪魔していなかっただけで、決して皆さんの事を嫌いな訳ではありませんよ」
お休みを貰ったらって……?
「え? 乃々香ちゃんは、この2ヶ月近くをお休みなしで働いているんですか!?」
「私の言い方が誤解を招きましたね。申し訳ございません。乃々香はちゃんと休んでいますよ。ただ、急に仕事になる日もありますし、絶対に休みだという日はなかなかないんですよ」
「そうなんですね……」
乃々香ちゃん、大変なお仕事をしてるのか……
まぁ、変わった人だもんね……
「今も仕事で忙しいのですが、今日の夜なら少しだけ余裕があると思いますので、その時に向かわせますね。21時頃になると思います」
「はい」
「それと、明日から乃々香は海外の方での仕事になります。なので、また暫く会えないと思いますけど、それが終わればそちらに遊びに行くように言っておきますね」
「あ、ありがとうございます!」
海外での仕事か……
本当に大変そうだ。
あんなに悩んで、探して、大変だったのに、こんなに簡単に会えるようになるなんて……
思う事は色々とあったけど、何よりも乃々香ちゃんとまた会えるという事を本当に嬉しく思った!
読んでいただきありがとうございます(*^^*)