あの時の
由佳さん視点です。
幼稚園に陸を迎えに行くと、
「あ、沢田さん。陸君のお迎えですね。今日はちょっと、陸君にお客さんが来てるんですよ」
と、先生に言われた。
陸にお客さんって誰だろう?
「陸君ー! お母さん来たよー」
「はーい!」
パタパタと私の元に走って来てくれる陸。
こんな甘えてくれるのはきっと、今だけなんだろうと思いながら抱きしめる。
「おかぁさん、ばぁちゃんにおきゃくさんっ!」
「え?」
「あの、初めまして。私はこの照の姉で、陽日と言います」
「は、はい?」
陸がばぁちゃんにお客さんだと言うと、幼稚園の少し奥から中学生くらいの女の子が出来てきた。
その女の子が手を繋いでいるのは、陸と同い年くらいの男の子……
陽日ちゃんと、照君?
さっき先生が言っていた、陸のお客さんって言うのはこの子達の事だろう。
「えっと、お義母さんにご用事ですか?」
「はい。陸君のお婆さんに是非お話を伺いたいのですが、お会いさせていただく事はできますか?」
「それは、構いませんが……」
「ありがとうございますっ!」
凄い深々と頭を下げてくれた。
どういう事情でお義母さんに会いたいのかもよく分からないけど、悪い子達ではなさそうだ。
ずっと幼稚園で話していても迷惑になってしまうし、お義母さんに合いたいとの事だったので、家まで一緒に来てもらう事にした。
帰り道で、どうしてお義母さんに会いたいのかを聞いてみる……
「お義母さんには、どういったご用件ですか?」
「あの、話すと少しややこしいのですが、私達は大切な友達を探しているんです」
「友達?」
「はい。かなり変わった子で、いつもペンギンみたいなパーカーを来ている、高校生くらいの女の人なんですけど……」
ペンギンのパーカーの女の人……
「あぁ、あの時の!」
「えっ! お婆さんだけじゃなくて、お母さんもお知り合いなんですか!?」
「私は知り合いというか、会った事があるだけですよ」
「そうなんですね。その、私達はずっとその友達を探していて、そうしたら照が、陸君が知ってるというのを聞いてきたんです。それで、いきなりで大変失礼だとは分かっていたのですが、陸君に話を聞かせてもらいました」
「ぼくが、ペンギンおねぇちゃんは、ばぁちゃんのおともだちのおともだちっていったのー」
「そう、そういう事だったのね」
この陽日ちゃんと照君は、あの時私達を助けてくれたあの子を探してるって事か……
探してるのなら、あの子がスノーフレークの子だって事を知らないって事になる。
もし知ってたら、いの一番にスノーフレークに行くだろうし……
どうしようか……
凄く必死なのは分かるし、早く会いたいのも分かる。
これは、お義母さんに会ってもらうより、"スノーフレークに行けば会えますよ"って、教えてあげた方がいいのかな?
でも……
紅葉さんは確か、自分がスノーフレークだと知られたせいで、お義母さんが狙われたんだと気にしていた。
自分の自己管理がなっていなかったんだと、謝罪までしてくれた。
という事は、スノーフレークの人達は、自分がスノーフレークだと話さないようにしてるって事なのかもしれない。
お義母さんは、最初からスノーフレークの紅葉さんに依頼に行って知り合っているけど、この子達はきっと、普通に出会ってあのペンギンさんとお友達になったんだろう。
それなら私が勝手にスノーフレークの人だと言ってはいけないな……
「あの、お婆さんにお願いしたら、乃々香ちゃんに会わせていただく事は可能ですか?」
「お義母さんの友人に、紅葉さんという方がいらっしゃいます。その方に頼めば大丈夫だと思いますよ」
「ありがとうございますっ!」
「あのペンギンさんは、乃々香ちゃんって言うんですね」
「あ、名前とかまでは知らない感じだったんですね? そういえばさっき、陸君が助けてもらったとかって言ってましたけど?」
「そうなんです。紅葉さんも乃々香さんも、あと……」
「マジックおにぃちゃん!」
「そうね。私達家族の恩人なんですよ」
「そうなんですね」
そんな話をしながら、家へと帰ってきた。
私はお義母さんに事情を説明して、すぐに紅葉さんへと連絡をしてもらった。
怪しい子達ではないと思うけど、私達が下手な事を話して、紅葉さん達に迷惑がかかるのは嫌なので、紅葉さんに直接来てもらう事になった。
今日は緊急の用事もないとの事で、すぐに来てくれるみたいだ。
「すぐに来てくれると思うから、待っていてね」
「ありがとうございます!」
「そういえば、その乃々香ちゃんは、連絡先とかを教えてくれていなかったの?」
「あ、そうですね……といいますか、私達が電話を持っていなくて……家にもありませんし、お母さん以外は携帯も持っていないので……お母さんと乃々香ちゃんは会っていませんので、連絡のしようがなくて」
「そう……」
「だから、乃々香ちゃんが"また来る"って言ってくれた口約束しかないんです。日にちや時間を決めて約束した訳じゃないですけど、もうかれこれ1ヶ月以上になりますし……」
「ののかちゃん……」
「大丈夫よ、絶対に会えるから」
少し不安そうに話す陽日ちゃんと照君……
そんな2人を宥めながら、乃々香ちゃんとの思い出話を聞いていると、
ピンポーン!
と、インターホンがなった。
紅葉さんが来てくれたみたいだ。
読んでいただきありがとうございます(*^^*)