16 1-16 お願い
赤い羊視点です。
手下が無能過ぎて使えないというアクシデントがありはしたが、依頼人を再度調査し直したり、当人との連絡を取ったりして、数日が経った。
今回の依頼人は警察と無関係と考えていいだろう。
となれば、俺はこの依頼を完遂するまでだ。
まぁ有能な俺は、依頼人の調査と並行して聖人ちゃんサヨナラ作戦の計画も練っていたから、あとはもう実行するだけではあるんだが。
1週間後、スノーフレークがペンギンパークという遊園地がオープンさせる。
初日はかなり混むことだろう。
そこでスノーフレークでは、道案内や迷子などに対応するスタッフを募集していた。
そして、聖人ちゃんとモテ男君はこの仕事を受けている。
つまりその日が作戦の決行日だ。
ペンギンパークの周りには、丁度いい高さの建物も多い。
人が大勢いたとしても俺なら余裕で狙える。
この計画に抜かりはない。
♪♪♪♪♪
ん? 依頼人から電話だな。
「ねぇ、赤い羊さん? ちょっといくつかお願いがあるのだけれど、いいかしら?」
「お願いですか?」
このタイミングでお願い?
もう計画は完璧だというのに……
「もうアイツを消す計画は出来ているんでしょ? それ、私もご一緒できないかしら? あの女が消えるところを、ちゃんと自分の目で確認したいのよ」
聖人ちゃんを俺が消すところを、俺と一緒に見たいだと?
「でしたら、決行日のターゲットの場所をお教え致しますよ。ご自分で確認に向かえるように」
「いいえ、それだとあなたに謝礼やこの携帯をすぐには返せないわ。それに、アイツが消えて真っ先に疑われるのは私よ? 近くにいていいわけないじゃない」
調べていた時も思ったが、この依頼人は結構頭の切れる方だと思う。
状況判断も早いし、相応に度胸もある。
モテ男君に恋さえしていなければ、彼女が望むような幸せな未来が訪れていただろうに……
「どうせ私の家なんかは警察に調べられる事になるのでしょうし、その際に私があなたに依頼した事がバレてしまうわ。でも、あなたがアイツを消してくれた事を確認して、すぐにあなたに纏わる物を渡せば証拠は何もなくなるの。警察も私を捕まえられなくなる」
「なるほど、確かにそうですね」
俺としても、依頼人は捕まらない方が都合がいい。
特に今回の場合、聖人ちゃんを恨んでいるのなんて依頼人くらいだろうし、すぐに疑われるのは目に見えているからな。
「あと、前みたいに関係ないバカを使われると、信用出来なくなるのよ。何処から警察に繋がるかなんて分からないんだから。私は捕まる訳にはいかないの。空音との幸せな未来の為にも」
あれだけ調べて問題がなかったとはいえ、依頼人を完全に信用した訳ではない。
仕事が完全に終わるまでは、やはり疑うべきだろう。
だが、それは向こうも同じなようだ。
聖人ちゃんが消えるまで俺を信用していない……そんな感じだ。
「分かりました。では、お会いしましょう。ですが必ずお1人で来て下さいね。他に誰かいた場合……」
「えぇ、もちろん分かっているわ。あと、もうひとつお願いがあるのだけれど?」
今度は何だ?
全く、我が儘なお嬢さんだな。
読んでいただきありがとうございます(*^^*)