目撃者
陽日視点です。
スノーフレークとかには頼りたくないけど、乃々香ちゃんを探さないといけない事にはかわりない。
今まではお兄ちゃんがバイトもあるのに、ずっと1人で探してくれていたみたいだけど、私も空いてる時間は探した方がいい。
「ねぇ、晃人。これからの家事は、晃人に託してもいいかな?」
「え?」
「家事もやりながらだと、あまり乃々香ちゃんを探す時間もないし、晃人ならもう大丈夫だと思うの」
「はる姉ちゃん……うんっ! 俺が乃々香を探すより、はる姉ちゃんが探した方がいいだろうし、俺が家事を頑張るよ!」
「ありがとう」
この1ヶ月程で、晃人は料理だけでなく洗濯も掃除も凄く頑張ってくれた。
これなら来年からは家の事は全て晃人に託して、私もバイトとか出来そうだなってずっと思ってたし、今から全部お願いしよう。
これで私が一番動ける!
「普通に探しても見つからないのなら、どうやって探せばいいのかな?」
お兄ちゃんと、探す範囲は被らない方がいいし、ちゃんとどこでどうやって探すのかは決めておかないといけない。
変に危ない探し方をするわけにもいかないから。
「俺は一応、ずっと街中を走り回ったり、屋根の上とかをみたりして探してた。高いところから双眼鏡とかで探すのがいいかとも思ったけど、家に双眼鏡はないからな」
「そもそも、何で乃々香ちゃんは屋根の上とかを走ってるの?」
「さぁ? 人目につきたくないからとかじゃないか? ほら、あいつかなり目立つ格好をしてるし」
「いや、流石にいつもあのペンギンパーカーは着てないでしょ?」
「……いや、着てる。一緒じゃないけど、着てる!」
お兄ちゃんは何かを思い出したように、急に大きな声になった。
「一緒じゃないって、何が?」
「ペンギンがだよ。なんか、初めて会った日に着てたのがコウテイペンギンさんで、この間会った時に着てたのがキングペンギンさんだって言ってた」
「ん? そうなんだ……種類があるんだね。でも、それを売ってるお店を探した所で、乃々香ちゃんが見つかるかな?」
「いや、売ってないんだ。友達に作ってもらった特注品だって言ってたんだ!」
あのパーカー、そんなに凄いものだったんだ。
確かに可愛いかったけど……
でも特注品だったら尚更、売ってるお店もないし、見つけようがないんじゃ……?
「目立ちたくなくて、屋根の上を走ってるんだとしたら、自分が目立つ格好をしているという自覚はあるって事だ。つまり、絶対に毎日何かしらペンギンのパーカーを乃々香は着てるんだよ!」
「うん?」
「いくら目立たないように屋根の上を走れるって言っても、絶対に限界はある。何処かでちゃんとした地面を歩かないといけないだろ?」
「そっか! ペンギンのパーカーを着た女の人を知りませんか? って聞いて回れば、乃々香ちゃんの知り合いにだって会えるかもしれないんだね!」
「あぁ!」
となると、探すべき場所は屋根の上が走りにくそうな、回りの建物の高さがあまり統一されていない場所で、人が多い所だ!
そういう所で、聞き込みをしていって、乃々香ちゃんの知り合いを見つけないと!
「私は△▽通りの方を探してみるよ!」
「俺は◎◯の方を探す。暗くなってくると危ないから、あんまり遅くまでは探すんじゃねぇぞ」
「うん」
お兄ちゃんとその話をしてから2週間、私は△▽通りで聞き込みを続けた。
ペンギンのパーカーを着た、大きな鞄を背負った女の子という目撃情報はちらほらあるものの、決定的なその女の子が何処の誰なのかというのは全く分からなかった。
「今日も、特に収穫はなしかな……」
悲しく独り事を呟きながら、家に帰る……
乃々香ちゃんは本当に何者だったんだろうか?
どうして家に来てくれないんだろうか?
私達の事……嫌いになっちゃったのかな……
暗い夜道を1人で歩いていると、どんどん暗い事ばかりを考えていってしまう……
何とか明るい気分に戻さないと!
家に帰ったら、晃人が作ってくれた温かい料理が待ってるし、もしかしたら寝ちゃってるかもしれないけど、光と照が走って玄関まで来て、私を可愛く出迎えてくれるかもしれない。
そんな事を考えながら家に着き、
「ただいまー」
と、私が声をあげた瞬間、
ダダダダッ!
と、光と照が物凄い勢いで走って来てくれて、
「はるおねぇちゃんっ! みつけた! みつけたの!」
「ののかちゃんのことをしってるひと、みつけたのー!」
と、私の予想もしていなかった事を言ってくれた。
乃々香ちゃんの事を知ってる人を、みつけた?
読んでいただきありがとうございます(*^^*)