表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スノーフレーク  作者: 猫人鳥
episode6 対人関係における偏見編
154/424

謝罪

一輝視点です。

「一輝、お兄ちゃん……?」


 そう言って出てきてくれた乃々香。

 相変わらずペンギンみたいな格好をしているし、俺はこいつのお兄ちゃんではないのに……

 昨日との違いは、重そうな大きいな鞄を背負っていることくらいか。


 でも、そんな事は全部どうでもいい。


「乃々香……その、昨日は本当ごめんっ!」

「え?」


 俺が勢いよく謝ると、乃々香はかなり動揺したみたいで、


「な、何で、一輝お兄ちゃんが謝ってるの? 悪かったのは私でしょう? その、本当にごめんなさい」


と、かなり困りながら謝罪してきた。

 俺はあんなに理不尽に怒ったっていうのに……


「違う。乃々香は何も悪くないから……全部俺が悪いから、本当ごめん……怒鳴ったり、急に追い出したり、靴ぶつけたり……」

「そんな事、別に気にしてないよ。私が一輝お兄ちゃんが嫌な事を言ったんだもんね。一輝お兄ちゃんの価値観を壊してしまったんだもんね……怒って当然だよ」


 乃々香は、何でこんなに自分の方が悪いと思ってるんだろうか?

 明らかに悪かったのは俺だし、その俺が謝ってるんだから、乃々香が謝る必要なんて全くないのに……

 むしろ、怒ってくれた方がいいのに……

 本当に変な奴だ。


 このまま謝罪の攻防を繰り広げていても埒が明かないし、どっちが悪いとかはもう一旦置いておこう。

 それよりも、ちゃんと返してやらないと……


「あのさ、これ……返し忘れたペンダント」

「あぁー! ありがとうっ!」


 俺がペンダントを乃々香に渡すと、子供のように喜んで受け取ってくれた。

 さっきまでの困った様子も何もなくなり、とても嬉しそうにペンダントを着けて、外からは見えないように服の中にしまっている。


「本当にありがとうっ! このペンダントは私の宝物だから!」


 宝物か……

 それを俺は捨てろとか言って……最低だな。

 だから陽日だってあんなに怒ったんだろうな。


「本当はあとでペンダントだけでも返してもらえないかって、お家の方へ寄ろうかとも思ってたんだけど……」

「何っ?」

「あ、ごめんねっ! 二度と来るなって言ってたもんね……やっぱり嫌だったよね……」

「あっ! いや、違う。来ていい、来ていいんだ。陽日も晃人も光も照も、皆乃々香に会いたがってるんだ」

「そうなの? やっぱりあの2人は凄いんだね!」

「あの2人?」

「うん、相談した友達」


 友達に昨日の事を相談していたのか……

 ってか、乃々香って友達いたんだな……

 失礼なのは分かってるけど、こんな変な奴に友達がいることが驚きだ。

 でも、本当にいい奴だもんな。

 友達もいて当然か……


 その友達は、どうしてこんな明らかに変な、ペンギンの格好で屋根の上を走りまわる事を止めないんだ?

 その友達も、そういう奴等なんだろうか?


「乃々香はさ、普段何してるんだ? そんなペンギンの格好をして……まぁ、昨日と同じそれだったからこそ見つけられたんだけど」


 俺が何気なくそう言うと、


「同じじゃない! 今日のはキングペンギンさんっ!」


と、乃々香は少し声を荒らげて怒ってきた。

 さっきまでのは全く怒ってなかったのに、ここで怒るとか、本当によく分からない奴だ。


「違うのか?」

「ほら、ここがオレンジ色でしょ! それにここも黒だし、背中だってちょっとグレーっぽいし、それに……」

「昨日のは?」

「えっ、あ、昨日のはコウテイペンギンさんだよ。コウテイペンギンさんは、ここが黄色っぽくて、ここらへんも黒はなしで首のところと繋がっててね、背中は黒っぽいの。それにやっぱり一番大きいペンギンさんだからね。昨日パーカーもちょっと大きめで作ってもらってあったし、それになにより……」

「あー、うん。分かった。ペンギンって最高だよな」

「……うん」


 長いペンギン語りが始まりそうだったので、一応申し訳ないとは思いつつも、話を打ち切ってみた。

 でも、まだペンギンについて語りたそうな感じだな……


「乃々香はペンギンが好きなんだな」

「うん、大好きだよ!」

「それなら、この間出来たペンギンパークとか、最高なんじゃないか? 行ってきたのか?」

「ううん。行きたいんだけど、まだ行けてないんだ……」


 そんなにペンギンが好きなら絶対に行ってると思ったのに、何でまだ行ってないんだろう?

 金持ちなんだし、好きな時にいけばいいのに……


 あれ、でも確かこいつ、家の掃除とかもしてくれたんだったよな?

 金に物言わせてる金持ちが、そんな事をするか?

 それに今だって、あんな大きな荷物を抱えているんだ。

 金持ちなら、荷物くらい誰かに持たせればいいのに。


 乃々香って、もしかして金持ちじゃないのか?

読んでいただきありがとうございます(*^^*)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ