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スノーフレーク  作者: 猫人鳥
episode6 対人関係における偏見編
152/424

決定打

真視点です。

 スノーフレーク本社内部にある、IDをもっている者しか入ることのできない休憩室。

 仕事のない日、俺は大体この部屋にいる。

 あまり誰も使わないこの部屋は、広いし、休むのにも丁度いいからな。


 基本的に俺達主要メンバーは、このスノーフレーク本社にはあまりいない。

 いつもいるのは副社長と、受付の紅葉、情報部の伊吹位だ。

 でも副社長には副社長室、伊吹は情報部内に仮眠室を持っているから、この部屋に来ることはない。


 だからこの部屋を使うのは俺だけのはずなんだが、今日は面倒な事に乃々香もいた。


「でさー、帰ったっていうのに奏海ちゃん帰ってこないしさー、結局1人だしー、スーパーボールも渡せないしー」


 ずっと愚痴を聞かさせられてはいるが、脈絡なしに喋ってくるせいで、何が言いたいのかさっぱり分からん。

 まぁ、いつもの事なんだが……


「ねぇー、まー君聞いてるー? 私の何が悪かったのかなー?」

「あぁ? 何が?」

「だから昨日のー」


 昨日の何が何なんだよ。

 まずそこから話せや。

 本当にコイツはガキの頃から変わんねぇな……

 ん? ってか……


「なぁ、乃々香。お前、ペンダントはどうしたんだ?」

「だからそれの話をしてたんじゃん!」

「いや、してなかっただろっ!」


 いつペンダントの話なんてしたってんだ。

 お前はスーパーボールの話しかしてねぇよ!

 せめてペンダントの"ぺ"の字くらい言ってから言えよ!


 とまぁ、色々と言いたい事はあったが、乃々香にペンダントがないとなると、それはかなりの重大事件でもある。

 これは流石に無視できないな。


「とりあえず聞くから、落ち着いて話せ」

「うん……」


 乃々香から聞いた話を整理して考えると、どうも乃々香は貧乏一家の反感を買い、その家にそのままペンダントを置いてきてしまったらしい。

 しかもその家の者に二度と来るなと言われた手前、取りに行くわけにもいかず、困っていると……


「そもそも、私の何が悪かったの?」

「考え方や価値観が人それぞれ違うっていうのは、お前も分かってるだろ?」

「うん」

「だから、その一家とお前は価値観が合わなかっただけだ」


 話を聞く限り、その怒った奴は相当短気だ。

 これはちょっと、まずい状況かもな……

 俺が早急に、ペンダントを取り返しに行った方がいいか……?


「ペンダント、捨てられちゃってるかな……」

「そんな事をするような奴等だったのか?」

「ううん。そんな事はしない人達だったよ……」

「ふっ、そうか。なら大丈夫だ」

「え?」

「大丈夫だから、安心して取りに行ってこいよ」

「でも、来るなって言われたのに、行っていいのかなぁ?」

「いいんじゃないか?」

「えー、でも……」


 悩む乃々香にどう言えばいいかと考えていると、


「大丈夫だよ、乃々香」


と、紅葉が休憩室に入ってきた。


「紅葉ちゃん?」

「はい乃々香、次の仕事。この仕事ついでにその家に取りに行っておいでよ」

「仕事? これは……うん、分かった。でも、本当に行っても大丈夫なの? 捨てられちゃってない?」

「大丈夫、大丈夫。スノーフレークが誇る人間嘘発見器様と、人間観察のエキスパートたる受付主任が大丈夫って言ってるんだから。絶対に大丈夫だよ!」

「そっか、そうだね! うんっ! ありがとう、2人共! 行ってきまーす!」

「はーい、行ってらっしゃーい!」


 紅葉の言葉に安心したようで、乃々香は元気よく休憩室から出ていった。

 そして、すぐに帰ってきて、


「渡すの忘れてた! はい、お土産だよっ!」


と、俺と紅葉にスーパーボールを渡してきた。

 縁日で取ってきた奴か……


「ありがとなー」

「ありがとねー」

「はーい!」


 俺と紅葉の気の抜けた返事に満足し、乃々香はまた休憩室から出ていった。


 ふぅ、やっと静かになったか……


「なぁ紅葉、お前なんで大丈夫だと思ったんだ? 乃々香の話、全部聞いてた訳じゃないだろ?」


 紅葉が来たのは途中からだ。

 こいつは正確な状況も分からないのに、無責任に大丈夫だなんて言う奴じゃない。


「んー? 確かに状況はよく知らないけど、大丈夫なのは確信できるよ。だって乃々香本人が言ってたじゃない? "そんな事はしない人達"だって」

「やっぱりな。俺もその発言が決定打だった」

「でしょ?」


 結局は俺も紅葉も、その会った事もない人達じゃなくて、乃々香を信じたって事か。

 乃々香がそう思ったのなら、間違いなく大丈夫だろう。


「疲れてるね。紅茶、淹れようか?」

「あぁ、頼む」


 嵐も去った今、やっと落ち着いて休憩が出来そうだ。

 

読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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