担当分野
乃々香視点です。
光ちゃんをおんぶして遊んでいると、光ちゃんが私のペンダントに気がついた。
このペンダントに目をつけるとは、光ちゃんはお目が高い!
見せてほしいと言われたし、いつも服の中に隠してて、綺麗なのに勿体無いと思ってたから丁度いい。
ペンダントを見てもらおう!
「きれー」
「でしょー?」
「キラキラっ!」
「うん!」
光ちゃんと照君は、私のペンダントに凄く喜んでくれている。
こんなに喜んでもらえるとは、これは見せたかいがあるってもんだね。
「ただいまー」
おっ、一輝お兄ちゃんが帰ってきたみたいだ。
「お兄ちゃん、お帰り!」
「「おかえりー!」」
「おぉ、晃人。料理なんて珍しいな!」
「うん、お帰り、兄ちゃん」
一輝お兄ちゃんは大人気だ!
帰ってきただけで、あんなに皆が寄っていくなんて……
私が帰っても、あんまり誰も来てくれないのになー
まぁ私が帰る時間なんてばらばらだし、深夜とかの方が多いけど……
「乃々香、携帯ありがとな」
「ん? うん!」
「本当によかったのか?」
「全然大丈夫!」
一輝お兄ちゃんに貸していた携帯を返してもらった。
案の定、誰からの連絡も来ていない……
なんかちょっと、ムカつく……
「ご飯の都合とかもよかったのか?」
「うん。いつも適当に料理長に頼んでるし……」
私のご飯はいつも、料理長が用意してくれている。
家に帰る時間も、そもそも帰るかどうかも分からない私のために……
急な時でも即席で作ってくれたりするし、いつも本当にありがたいと思ってる。
「は? 料理長?」
「うん、料理長」
「お前はその、料理長の作った飯を毎日食べてんのか?」
「え? うん、そうだね。家にいるときは食べてるよ」
私が何気なく言った言葉に、一輝お兄ちゃんは変な反応をした。
「お前……金持ちだったのか!?」
「ん? 金持ち?」
「俺は、金さえあれば何でも買えると思ってる金持ちが一番嫌いなんだ!」
一輝お兄ちゃんは、急に大きな声で怒鳴ってきた。
陽日ちゃん達もビックリしている。
というか、今の一輝お兄ちゃんの発言、おかしいよね?
「お金持ちは、お金があれば何でも買えるなんて思ってないと思うけど?」
「は?」
「金持ちは、お金を持っているからこそ、お金では買えないものがあることを知ってるよ。"お金があれば何でも買える"なんて思ってるのは、お金を持っていない人達の方なんじゃないかな?」
「何っ!?」
「少なくとも私の知ってるお金持ちは、お金で何でも出来るとは思ってないよ。でもお金がないと何もできないことも知ってるけどね」
一輝お兄ちゃんは凄い怖い顔で私を見てる……
私、そんなに変な事を言ったかな?
「出ていけっ!」
「え?」
「この家は、お前みたいな俺達をバカにして生きてる金持ちがいていい場所じゃない!」
「ちょっ、ちょっとお兄ちゃん?」
「早く出ていけっ! 二度と家に来るなっ!」
一輝お兄ちゃんに凄い形相で捲し立てられながら、私は家から追い出された。
「二度とこの家に近づくなっ!」
バンッ!
壊れてしまうんじゃないかと心配になるような勢いで、一輝お兄ちゃんは玄関の扉を閉めてしまった。
なんで……?
何で私は追い出されたんだろう?
あぁ、私のペンダント……
返してほしいけど、二度と来るなって言われちゃったからな……
追い出された今の今で、ペンダント返してとは言えないし……
私は、どうしたらいいんだろう?
私が悪かったのは分かるけど、私の何が悪かったのかは分からない……
何が悪いのかが分からなければ、何に対して謝ればいいのかも分からない……
それに、来るなと言われたのに、謝りに行くというのも、矛盾している気がするし……
んー、これは私が考えても分からない事だと思う。
そもそも、こういう事を考えるのは、私の担当分野じゃない。
まー君の担当だ。
明日にでも、まー君に相談してみよう……
とりあえず、ここにいてもどうしようもないし、奏海ちゃん家に帰ろう。
遅くなっちゃったけど別に心配なんてしてないだろうし、急ぐ必要はない……はず、なんだけど……でもなんでかな?
なんか、早く奏海ちゃんに会いたいな……
ペンダントがないから、余計にそう思うのかもしれない……
私は急いで帰るために、近くの少し高い木に飛び乗り、そのまま家の屋根の上を利用して、走って奏海ちゃん家に帰った。
読んでいただきありがとうございます(*^^*)