小学生
陽日ちゃん視点です。
とりあえず、皆で家に帰ってきた。
私が急いで布団を敷いて、乃々香ちゃんが照を寝かせてくれた。
「乃々香ちゃん、本当にごめんね。こんなに遅くまで……」
「全然大丈夫だよ!」
「帰らなくていいの? お父さんとかお母さん、心配しない?」
「しないよー」
「そう?」
こんな可愛い女の子が1人で夜遅くまで帰って来なかったら、心配するだろうに……
しかも、お兄ちゃんに携帯を貸してくれちゃってるから、お家に遅くなるっていう連絡も出来ないんだし……
お金の事についてもちゃんと話したいし、お兄ちゃん、早く帰ってきてくれないかな……?
「あ、あのさ……はる姉ちゃん……」
「ん? 晃人、何?」
晃人から私に話しかけてくるなんて珍しいな?
どうしたんだろう?
「その、俺がさ……最近出掛けてた事なんだけど……」
「う、うん?」
「あれさ、友達の家の仕事を手伝わせてもらってたんだ……」
「え? 何で?」
「……お昼ご飯をもらえるから。その、俺が食べない分、家の食費も浮くだろ?」
う、う~ん……
これは、どうしたもんか……
晃人の後ろで、乃々香ちゃんが優しく笑ってる……
きっと晃人の事に気づいて、晃人に言うようにって言ってくれたのは、乃々香ちゃんなんだろう。
これは下手に怒る訳にはいかないな。
でも、そんな事を認める事は出来ないから……
「晃人。晃人が凄く家族思いなのは、ずっと前から私も分かってたよ。でもね、いくら私達のために考えてくれた事だとしても、それはダメな事だよ」
「……」
「それはね、晃人の思いを汲んで許して下さっただけで、友達のお父さん達だって困ってると思う」
「でもっ! 俺も仕事は本当に真面目にやってるし、いつもありがとうって言ってくれるんだっ!」
「そういうのはね、晃人が本当に一生懸命に頑張ってるから言ってくれてるだけだよ。小学生を、それも自分の子供でもない小学生を働かせて、困らない大人なんていないよ」
「うっ……」
晃人のお友達だって、晃人の事情を知ってるから、お父さんとお母さんにお願いしてくれたんだろうし、きっと困ってると思う……
お友達の事を考えると、晃人が頼んだ時に断れなかったんだろうし……
まぁ、それは流石に言わないでおくけど……
「でも、だったらまだ小学生の俺に何が出来るっていうんだよ! 家のためにお金を稼ぐ事も出来ないのにっ!」
「晃人はまだ、そんな事を考えなくていいんだよ」
「ほら出た! いっつもそれだ! そうやって晃人はいい、晃人はいいって、俺には何も出来ないって!」
「そ、そういう意味じゃなくてね」
「小学生なんだから、考えなくていいって……」
どうしよう……
何て言ってあげたら……
「晃人君、落ち着いて、落ち着こう!」
「の、乃々香……」
後ろで見てくれていた乃々香ちゃんが、後ろから晃人を肩を支えるようして、落ち着かせてくれた。
「あのね晃人君。働いて、お金を稼ぐことだけが、お家のために出来る事じゃないよ。料理に洗濯に掃除……お家にいるだけでもやらないといけない仕事はたくさんあるんだよ」
「う、うん……」
「いつも陽日ちゃんが1人でやってるんだよね?」
「うん」
「それって凄く大変な事だし、お兄ちゃんもお母さんも心配だと思うの」
「……確かに、そうかも」
「晃人君が一緒にやってくれてたら、お兄ちゃんもお母さんも安心出来るんじゃないかな?」
「……うん」
乃々香ちゃんは、晃人に出来る事を考えてくれてたんだ。
晃人が私にちゃんというようにして、こうなる事も分かってたんだ。
だからこうやって、今の晃人にピッタリなアドバイスが出来るんだろうな……
読んでいただきありがとうございます(*^^*)