帰路
陽日視点です。
「皆、本当にありがとー!」
「私達も楽しかったー!」
「陽日ちゃんとこんなにいられたの、初めてだったもんね!」
「また、来年も一緒に来ようね!」
「うん! じゃあまた、学校でー!」
友達達と別れて、家に帰る。
本当に、こんなに盛り上がったのは初めてだった。
いつもは、皆の行動にばかり意識を飛ばして、ゆっくり花火をみたりする事も出来なかったし……
最高に楽しいお祭りだった。
これも全部、乃々香ちゃんのお蔭だ。
乃々香ちゃん達、大丈夫かな?
光も照も、まだ幼いとはいえしっかりしてるし、晃人も私にだけは反抗期だけど、基本的にはしっかりしてる……はず……
乃々香ちゃんに迷惑かけてないといいけど……
そんな事を考えながら帰り道を歩いていると、
「あ、はるおねえちゃんだー!」
という、光の声が聞こえきた。
横の道を見ると、光が晃人と手を繋ぎながら、とても楽しそうに手を振ってくれていた。
隣には、照を背負いながら歩いている乃々香ちゃんもいる。
照は寝てしまっているみたいだ。
「皆おかえりー、楽しかった?」
「あのね、あのねっ! ののかちゃんがピョンピョンってのぼってね、みんなではなびみたんだよ!」
「そっか、良かったね!」
「うん!」
光が凄く楽しそうに笑って話してくれた。
ちょっとよく分からないけど、凄く楽しかったんだなって事は分かる。
「お祭りの方では会わなかったね」
「そうだね。陽日ちゃん達はちゃんと花火見れた? 楽しかった?」
「うん、花火も見れたし、楽しかったよ! ありがとう、乃々香ちゃん!」
気掛かりだった皆も、こうして無事だし、私もとても楽しかった。
お兄ちゃんが楽しめなかったという事さえなければ、本当に最高のお祭りだったと思う。
晃人も、口には出さないけど、楽しかったって感じの顔をしてるし……
「って、晃人! こんなに買ってもらったの?」
「あぁ、これは……」
「ダメじゃん! ちゃんと2千円でおさめてって……」
晃人が持っていたのは、焼きそばに、たこ焼きに、お好み焼き……
こんなに買ってもらっちゃって……
「陽日ちゃん、陽日ちゃん! ちゃんと、2千円でおさめたから! 安心して」
いや、明らかに2千円以上の買い物をしてるから……
しかもよく見ると、光と照はスーパーボールまで持ってるし……
「あのね、乃々香ちゃん。家のルールは、恵んでもらう事に慣れないためにも、自分達の事は自分達で賄う事なんだよ。だから、乃々香ちゃんの気持ちは嬉しいけど、乃々香ちゃんが払ってくれたんだから、この分のお金は返すよ。何円?」
「はい、お釣り」
「え?」
私が乃々香ちゃんに説明をして、お金を返そうとすると、乃々香ちゃんはお釣りと言って、1700円を渡してきた……
「最初に預かった、2千円のお釣りだよ」
「これだけ全部で300円? ないない、流石にあり得ないから」
「でもそれが、ありえちゃったんだなー」
乃々香ちゃんはふざけてるようにしかみえない。
こういう楽しいテンションに、流されちゃったのかな?
まだ幼くてもしっかり断れると思ってたんだけど……
「あのさ、はるねぇちゃん。本当に、最初の2千円からしか、使ってないから……」
「どういう事?」
「乃々香がさ、射的で大当たりを当てて、それで5千円をもらったんだよ。で、そこから買ったから」
「そうそう! ね、ちゃんともらった2千円からしか、使ってないでしょ?」
「え、えぇ……」
こういう場合は、恵んでもらった事になるの?
どうなるんだ?
「私の射的代、この2千円から使わせて貰ったから、なんなら私の方が恵んでもらってるんだよ!」
確かに……? いや、納得したらダメか!
「なんなら、スーパーボールもやらせてもらったからね!」
「めっちゃ下手だったけどな」
「これから上手くなればいいんだよ」
「ふーん……」
なんか、晃人とも仲良さそうに話してるし……
もう大混乱だ……
えっと、とりあえず……
どうしたらいいのかは、お家に帰ってから、考えよう……
読んでいただきありがとうございます(*^^*)