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スノーフレーク  作者: 猫人鳥
episode6 対人関係における偏見編
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射的

晃人視点です。

「よぉーし! じゃあ私達もお祭りに行くぞーっ!」

「「おぉーっ!」」

「おー……」


 テンションの高い光と照。

 そして、どういうテンションなのかよく分からない乃々香と一緒に、お祭りへ行くことになった。


 乃々香の手を光と照が繋いで、俺は少し離れて後ろから着いていく。

 結構屋台が並んでる道にまで出てきた。


「なに食べたい?」

「「みんなでたべれる、やすいの!」」


 乃々香の質問に、光と照が声をそろえて言った。

 まぁこれがうちのモットーだし、俺もそう思ってる。


「はる姉ちゃんから2千円、預かってるんだろ? それで変える範囲で、適当に買えばいいんだよ」

「そっか、じゃあまずは増やさないと……ちょっと待っててね」


 乃々香はそう言って、かけている眼鏡を少し上に上げて遠くの方を見渡した。

 何をしてるんだろうか?

 目が悪いから眼鏡をしているんだろうけど、遠くを見るのに眼鏡を外すなんて……


「よし、じゃあ先にあっちに行こうか!」

「あっちになにがあるんのー?」

「楽しそうな屋台だよ!」

「わぁー!」


 乃々香の進むままに着いていって到着したのは、"射的"の屋台だった。


「は? 乃々香、ちょっと待って! 確かに楽しそうではあるけど、こういうので遊んじゃうと、食べ物に使うお金がなくなっちゃうから……」

「大丈夫、大丈夫! 晃人君は、光ちゃんと照君と、手を繋いでここで見てて」

「え?」


 乃々香は、光と照を俺に任せて、射的の屋台へ行ってしまった……

 なんか大丈夫って言ってたし、とりあえず様子を見ておくか……


「おじさん、一回やらせて」

「ほいよ、500円で5発だ」

「はーい」


 本当にやるんだ……


「ねぇおじさん、あの赤い玉に当てれたら、大当たりなんだよね?」

「おう、狙うのかい? お嬢ちゃん」

「うんっ!」

「そりゃあ頑張ってくれよ」


 ペンギンの格好なんかしてるからかな?

 おじさんも少しバカにしたように話してる……


 乃々香は慣れたような手付きで、銃にコルクの弾をセットした。

 そして、


カチッ!


と、レバーを引いて、大当たりの小さな赤い玉を狙うように構えた。


 なんだろう?

 なんか、凄くカッコよくみえる……

 ペンギンの格好をした変な女が、ただのおもちゃの銃を構えてるだけなのに……


 俺がそんな事を考えていると、


パンッ!


という音がして、大当たりの赤い玉は、本当に飛ばされていた……


「嘘だろ……?」

「当たったよ、おじさん。大当たりだね!」


 乃々香は無邪気に笑ってる……

 これだけ凄い事をしているのに、まるで当たり前だというような感じだ。

 だからこそ、回りを通って行く他のお客さん達も、射的の屋台で凄い事が起こっているなんて気づきもしない……


「な、なんだよ……あんた、プロのスナイパーかなんかか?」

「まっさかぁ」


 少し怯えてるおじさんに対し、乃々香は相変わらずおどけている……


「大当たりの、そのゲーム機ちょうだい」

「あ、あぁ……」


 ゲーム機をもらってしまってる……

 あれは確か、3万円くらいのゲーム機だったはずだ……


「あと4発あるんだけど、皆は何か欲しいのある?」


 乃々香は俺達の方に、何か欲しいものはあるかと聞いてきた。


「え? ううん、いらない」

「そういうのはもらったらダメって、おかあさんとかずにいちゃんがいってたから」

「今ここで乃々香に取ってもらうのは、間違ってる気がするから」

「そっかぁ……うん、いいね!」

「え?」


 俺達が断ると、乃々香は凄く嬉しそうに笑って、


「おじさん、私ゲームとかやらないし、この子達も何もいらないんだって」


と、表情の固まってしまっているおじさんに声をかけた。


「あ?」

「だからさ、このゲーム機、5千円で買い取ってくれない?」

「お、おまえ……」

「残りの弾もいらないから」

「はぁ、最初からそのつもりで、金を取りに来たんだな?」


 乃々香のその発言に対して、おじさんは呆れた様子で言った。


「うん! ごめんね、おじさん」

「ふっ、おもしれぇな。いいぜ、ほらよ」

「ありがとー」


 本当に嬉しそうに5千円を受け取る乃々香。


「さ、これでお金も増えたし、好きなものをたくさん食べようね!」


 無邪気にわらいながら、俺達の所に戻ってきた。


「だから、そうやって恵んでもらうのはダメなんだって」

「でもこれは、陽日ちゃんから預かったお金で増えたものだから、皆のお金だよ」

「でも……」

「それにさ、皆はゲーム機とかも欲しがらなかったよね? 私なら取れるって分かったはずなのに」

「それは……」

「そういう皆だから、いいんだよ。確かに他人の好意に甘え過ぎるのはあんまりいい事じゃないけど、たまの一回くらい、こういう日があってもいいんじゃない?」

「……分かったよ。ありがとう乃々香」

「うん!」


 乃々香は最初から、お金を増やすって言っていた。

 きっと、俺達がさっきのを断るって分かってたんだろうな。


読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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