眼力
晃人視点です。
はる姉ちゃんは友達と一緒に行ってしまった。
残されたのは俺と光と照と、変な女……
何か乃々香とかって呼ばれてたけど、結局こいつはなんなんだろう?
「もう少ししたら、私達行こうね!」
「うんっ!」
「わぁーい!」
光と照は凄く仲よさそうに話している。
兄ちゃんも認めた奴なら大丈夫だとは思うけど、不安しかない。
「なぁ、お前は何でいるんだ?」
「わたしたちがよんだのー!」
「おれいしたかったのー」
「光ちゃんと照君とお友達になったからね。お家にご招待してもらったんだよ」
「何でそんな格好をしてるんだ?」
「ペンギン! 可愛いでしょ?」
「まぁ……」
確かに可愛いけど、外を歩く格好じゃないと思う……
凄い悪目立ちしそうだし……
「晃人君はどこに行ってたの?」
「なっ、はぁ? お前には関係ないだろ」
「彼女とデート?」
「何でだよ!」
「えっ、違うの?」
「違うよ」
「じゃあ、友達のお家のお手伝いかな?」
「え?」
なんだコイツ……
何で知って……
「何で分かったんだ? って、顔してるね」
「どんな顔だよ。ってか、お前が何でそう思ったのかなんて知らないけど、別にそういうのじゃないから……」
「ほら、脱衣所に落ちてたよ。品物と棚の位置とか覚えるのに使ったんでしょ?」
「あ……」
俺が書いたメモだ……
手伝いを始めた頃に、お店の商品の配置を覚えるために使ってた奴……
ズボンのポケットに入れたままだったから、洗濯する時にたまたま落ちたんだろう。
一緒に洗濯されて大惨事にならなくてよかった……
って、よくない!
「バイトも出来ない小学生の晃人君が、そんな変なメモを書いてるのはおかしいよね?」
「うっ……」
「それは完全に、商品の位置を覚えて、店員さんの行動パターンも覚えて、盗みに入るためのものだもんね!」
「なっ! 俺はただ、働かせてもらう事で、お昼ご飯をもらってただけで、盗みとか……あ……」
急に変な事を言われたから、思わず反発して言ってしまった……
「なるほどねぇ~。小学生じゃ働かせてもらえないから、実家が自営業のお友達にお願いしてたんだね。お手伝いって形にしてもらって、報酬をお金じゃなくて、お昼ご飯にしてたんだねー」
「……あぁ。食べ盛りの俺が家で食べなければ、ちょっとは皆も助かるだろ?」
母さんや兄ちゃんが、働いてくれた給料も少しは浮くはずだし、はる姉ちゃんも俺のご飯を作らなくていい分、楽なはずだ。
仮に作ってしまったとしても、俺のその分を光や照が食べてくれれば、あの2人は大きくなれる。
たかだか1人の1食分だけど、少しは皆の助けになってるはずなんだ。
「それは確かに助かってるかも知れないけど、それならそうと、ちゃんと皆に話さないと。陽日ちゃんは心配してるよ」
「でも……」
何て説明すればいいのかもよく分からない……
それに、話したらきっと、そんなの迷惑になってるから止めなさいって怒られる事は間違いない……
ん、あれ? そういえばコイツ……
最初から俺が友達の家を手伝ってるって、分かってたんだよな?
「なぁ、お前は俺の事に気付いたのに、何ではる姉ちゃんに言わなかったんだ?」
「それは、私が勝手に言う事ではないからだよ。これは、晃人君の問題だからね」
「俺の問題……」
「うん。ちゃんと晃人君から陽日ちゃんに話そうね」
はる姉ちゃんに話してないせいで、はる姉ちゃんは俺の事を心配してくれている。
それはずっと分かってた。
反抗期って思われてるから大丈夫だって無視してたけど、いつまでも続けれる訳じゃない。
俺が俯いていると、
「私が話していいんだったら、私から話すよ」
と、俺の肩に手を置いて、励ますように言ってくれてた……
それに俺と目線が合うようにって、屈んでくれてるのも分かる。
凄く優しい人だ。
「じ、自分でちゃんと話すよ。でもっ! 一緒にいてくれると助かる……」
俺が俯いたままそう言うと、
「うん! 分かった! じゃあお祭りから帰ってきたら、一緒に話そうね!」
と、とても明るく言ってくれた。
なんだろう……
コイツと一緒に話せば大丈夫だっていう、安心感があるな……
「あ、ありがとう……乃々香……」
俯いていた顔をあげると、屈んでくれていたからか、俺と真っ直ぐに目が合った。
乃々香本人じゃなくて、乃々香が被っているフードの柄のペンギンと……
やっぱり、変な奴だ……
読んでいただきありがとうございます(*^^*)