反抗期
陽日視点です。
家の事を片付けていると、日が暮れてきた。
そろそろお祭りも始まるかな?
「陽日ちゃーん! 行けるー?」
「あ、はーい!」
玄関の方から皆の声……
迎えに来てくれたみたいだ。
「ごめーん! もうちょっと待って……あれ? 皆、浴衣着るんじゃなかったの?」
「あぁ、今年はやめたんだー」
「着るのも面倒だしねー」
「それよりさ、私達も何か手伝おうか?」
玄関に行くと、私服姿の皆がいた。
去年お祭りで会った時は3人共浴衣を着ていたのに、今日は着てない……
これはあれだ……
浴衣を持ってない私に、気を遣ってくれたんだ!
4人の中で、1人だけ浴衣を着ていないってならないように……
私はそんな事、気にしないのに……
でも、その気遣いはとても嬉しい。
「すぐに終わるから、あがって待ってて」
「いいよいいよ、ここで待ってるよ」
「ごめんね……」
「大丈夫だって」
「無理に急がなくていいからね」
「ありがとう」
皆と玄関で話をしていると、
「ただいま……」
と、晃人が帰ってきた。
「おかえり、晃人君!」
「ども……」
皆に適当に挨拶をして、靴をぬいで上がってきた。
「ちょっと晃人! 何時だと思ってるの?」
「は? 何が?」
「朝いきなり出ていったかと思ったら、こんな時間まで……どこで遊んでたの?」
「友達のとこ……」
「だからどこの?」
「別にいいじゃん!」
「だいたい晃人、あなたお昼ご飯はどうしたの?」
「もーうっ! はる姉ちゃんに関係ないだろっ!」
「あっ、ちょっと!」
本当に困った反抗期だ。
出掛けた場所は言わないし、帰ってくる時間も言わない……
お昼ご飯も食べに帰って来なかったけど、本当にどこで何をしていたんだろう?
誰かに迷惑とか、かけてないといいけど……
「相変わらずだね、晃人君の反抗期は」
「うん、困りものだよ」
「でも、今日はお兄さんがいるんでしょ?」
「陽日ちゃんは、私達と行って大丈夫なんだよね?」
「あ、お兄ちゃんは無理になったけど、私は大丈夫だよ」
「え? 晃人君に任せるの?」
「ううん、見てくれるお姉さんがいるから……」
と、話していると、
「うわっ! お前誰だー!」
という、晃人の驚いた声が聞こえてきた。
多分乃々香ちゃんに会ったんだろう。
「皆ごめん、もう少し待っててね」
「「「はーい」」」
皆に断りを入れて、奥の部屋の方へ行くと、
「お前、誰なんだよ?」
「乃々香ちゃんだよー」
「は?」
「あきおにいちゃん、ののかちゃんなのー」
「きょうのおまつりは、ののかちゃんといくのー」
「よろしくねー、晃人君!」
「はぁ? だから、結局こいつは誰だよ?」
と、何も解決しない会話が繰り返されていた。
「晃人。今日ね、お兄ちゃんはお仕事になっちゃったの」
「え? そっか……そうなんだ……」
晃人も凄く残念そうだ……
やっぱりお兄ちゃんと一緒に行くのを、楽しみにしていたんだろう。
「でも、私は友達とお祭りに行くから、一緒には行ってあげられないの」
「それで、この人?」
「うん。とても優しいお姉さんだから、安心していいよ」
「兄ちゃんはこの事知ってるのか?」
「うん。さっきお兄ちゃんとも話をしたからね」
「それなら、いいけど……」
お兄ちゃんが認めた人だって分かっていれば、晃人もちゃんと安心出来るはず。
だから大丈夫だろう。
「それじゃあ私はもう行くけど、大丈夫だよね?」
「いってらっしゃーい」
「向こうで会えるかなぁ?」
「見かけたら、声かけてねー」
「行くなら早く行けよ」
「はいはい。じゃあ乃々香ちゃん、あとよろしくね!」
「陽日ちゃん達も、ちゃんと気を付けるんだよー」
「うん!」
乃々香ちゃんにあとを託して、皆の所に戻る。
「お待たせー」
「もう大丈夫なの?」
「うん! 皆と一緒に行けるの、楽しみにしてたんだ!」
「私達も、陽日と行くのを楽しみにしてたよ!」
「いっつも行けなかったもんね!」
「金魚すくい勝負しようよ! すくった金魚は、家の水槽で育てれるからね!」
「楽しそうだね!」
いつも家族と行っていたから、こうやって友達とお祭りに行けるのは初めてだ。
晃人達の事が若干不安ではあるけど、乃々香ちゃんもついてくれてるし、きっと大丈夫!
折角の楽しいお祭りなんだし、いっぱい楽しもう!
読んでいただきありがとうございます(*^^*)