14 1-14 尾行失敗
チンピラ手下視点です。
俺の前にいきなり現れたフードを目深に被った男は、自分は巷で騒がれている赤い羊という殺し屋だと名乗った。
本当に殺し屋かどうかはどうでもよかった。
俺はただ小娘から100万を受け取り、携帯を渡すだけでその100万が俺の取り分になるという話だったから乗っただけだ。
実際に取引相手として現れたのは偉そうな態度のガキで、聞いていた話とも違い、その場で金は手に入らなかった。
だが翌日には家に金が届いていた。
もちろんしっかりと100万が入ってた。
とはいえ100万だけでなく、手紙も入っていたがな……
その手紙には、ガキを尾行し、何をしているのかを報告するようにと書いてあった。
逆らえば殺すというような文言や、その行動による追加報酬等は書かれていなかったが、俺の家も知られている以上は従っておいた方が身のためだろう。
予定も何もないし、逆らう必要性もないからな。
学校の前の道であのガキを待ち伏せる。
生徒達の殆どが帰って行ったように思うが、アイツはまだ出てこない。
まったく、何時間俺を待たせる気なんだ……
外もかなり暗くなってきた。
時間は、19時半か……ん? あのガキだ。
やっと出てきたか。
こんな時間まで部活でもしていたんだろうか?
だが1人だし、部活仲間と思える奴も周りにはいない。
まぁそんな事はどうでもいいか……
とりあえず、尾行開始だ。
学校から出てすぐに家へと向かうのかと思えば、駅前や歓楽街、薄暗い路地裏といった場所を、何処に入るでもなくただただ無駄に歩くガキ。
もう1時間以上は歩いている。
これが帰路な訳はないし、アイツは家に帰りたくないのか?
「さっきからなんのつもり?」
周りに人がいなくなったところで、ガキは急に立ち止まってそう言った。
「あなたに言っているのよ。それで私を尾行しているつもりなの? バレバレにも程があるわ。本当にバカ……」
こっちに歩いて来ながら、俺に言った。
「何言ってんだ? 俺はたまたま……」
「どうせ赤い羊に言われて私を調べていたんでしょうけど、尾行するのならもっと上手くやりなさい」
「何?」
「もし仮に私が警察と繋がっていたなら、こんなバレバレの尾行の中で警察と連絡なんてしない。だからあなたの尾行には意味がない。あなたは本当に、私達の計画の邪魔でしかない」
くそっ!
言い返してぇが、俺が今バレてるって事はコイツの言う通りだからな……
「で、私の何を知りたくて尾行させていたの? 夜に町を歩いてる理由とかなら、単に家に帰りたくないだけよ。特に目的の場所がある訳じゃないわ」
急に自分の携帯に向かって喋りだした。
頭イカれてんのか?
いや、アレは俺があの男から渡されて、コイツに渡した携帯だ。
確か盗聴器付きだとか言っていた……コイツ、この俺を無視して、赤い羊に向かって話してやがる!
バカにしやがって!
♪♪♪♪♪
俺がガキに掴みかかろうとすると、ガキの携帯が鳴った。
あの男が連絡をしてきたみたいだ。
読んでいただきありがとうございます(*^^*)