保護者
陽日視点です。
光と照が連れて来た乃々香さんは、少し変わった人だけど、とても優しい人だと分かった。
怪しい不審者とかではなさそうなので、光と照を任せて、私は家事の続きをする。
洗濯もしたし、次は掃除と夜ご飯……
今日はお祭りでも何か買うかもしれないし、夜ご飯は残しても大丈夫なものにしないと……
「陽日ちゃん、何か手伝おうか?」
「乃々香さん。あの、光と照は?」
「寝ちゃったよ」
「そうですか……あの、私は大丈夫ですので、ゆっくりくつろいでいて下さい」
「でも、暇だからね。何か手伝わせてくれないかな?」
「え……」
暇だからって言われてもな……どうしようか?
今日会ったばかりの知らないお姉さんに、家の事を手伝ってもらう訳にはいかないし……
でも、光と照が寝ちゃってる間に帰ってもらうっていうのも、2人が悲しむだろうし……
「あははーごめんね。困らせちゃったねー」
「い、いえ……」
「じゃあ今日だけでいいから、陽日ちゃんは私の事も妹だと思ってくれないかな?」
「え?」
急に何を言われたかと思えば、妹?
……お姉さんじゃなくて?
「私ね、皆から頼りにされるお姉さんを目指してるんだけどね、なかなか上手くいかないの。頼りにはされてると思うんだけど、何かお姉さんって感じじゃないんだよねー」
「そうなんですか?」
「そーう。今日だってさ、私だけ特別扱いみたいなので、仕事を休むように言われちゃってね……だから、凄く暇なの」
よく分からないけど、乃々香さんは今日、皆から心配されて、仕事がお休みになったみたいだ。
それが不満みたいに話している。
「陽日ちゃんは、しっかりしたお姉さんって感じだし、参考にさせてもらおうと思ってね」
「そんな、私は全然しっかりなんてしてないですよ?」
「そんな事ないよー。陽日ちゃんは、私の中のしっかりしてる人ランキング3位圏内には入ると思うよ!」
「ふふっ、そうですか?」
「うん!」
なんか全然分からないけど、話していてとても楽しい人だって事はわかった。
信用出来ない人とかではなさそうだし、協力してあげてもいいかなって思えてきた。
あれ? 協力してあげるのかな? してもらうのかな? まぁいいか。
「私が役に立てるなら何でもいいですよ。えっと、私はこれから、乃々香さんのお姉さんもやればいいんですね?」
「うん! やってくれるんだね、ありがとー。じゃあ、陽日ちゃんも敬語とかじゃなくていいからね。話しやすいように話してねー」
「あ、ありがとうございます……ううん。ありがとう、乃々香ちゃん」
「うん」
本当に変わった人だ……
妹だと思うようにと言われたけど、こういう楽しいお姉ちゃんが欲しいなぁと、少し思った。
「じゃあ陽日ちゃん、私は何をしたらいいかな? 掃除かな?」
「うん。乃々香ちゃんは、んー? お風呂掃除?」
「分かったー」
本当にお風呂掃除をし始めてくれた。
しかも何か、手慣れてるようにみえる。
よくやってるのかな?
お風呂は乃々香ちゃんに任せて、私は違うところを掃除する。
後は夜ご飯の準備だけど……と、考えていると、
「ただいまー。陽日ー?」
と、お兄ちゃんが帰ってきた。
今日は早いって言ってたけど、早すぎないかな?
「おかえり、お兄ちゃん。早かったね」
「あぁ、陽日……その……」
「ん?」
「悪いんだけどさ、この後のバイトの人が急に来れなくなっちゃったみたいでさ、代わりに入ってくれって……」
「え?」
「だから今、それを伝えに来た……」
それって、この後もバイトになったって事……?
だ、だってそれじゃあ……
「お祭り……どうするの? 晃人と光も照も、お兄ちゃんとお祭りに行くのを、楽しみにしてたんだよっ!」
「分かってるよ……だから、ごめん……」
「それ、私に行ってやってって事だよね?」
「うん……」
今日は元々、お兄ちゃんが皆を連れてお祭りに行く予定だった。
いつもなら私が連れて行ってたけど、今日は友達も誘ってくれたし、友達とお祭りに行くというのもしてみたかった。
それを話したら、お兄ちゃんもその日なら夕方から空いてるからいいよって、言ってくれていたのに……
お兄ちゃんは本当に申し訳なさそうにしてる……
そうだ……お兄ちゃんだって、私達のために一生懸命働いてくれてるんだし、私が我が儘ばっかり言ってたらダメだよね……
お祭りを楽しみにしていたのは、私だけじゃないし……
だからってあの子達を連れて、友達とも一緒に行くのは、皆が気を遣ってしまって楽しくないだろうから……
これは、仕方のない事なんだ……
ここは私が諦めれば、全部丸く収まる……
「分かったよ……友達には、今日は家族と行くことになったって、連絡しておく……」
「本当にごめん……」
「いいよ。バイト、頑張ってね」
「あぁ……」
お兄ちゃんがもう一度出掛けていくのを見送ろうとしていた時、
「今の話、光ちゃん達とお祭りに一緒にいく、保護者的な人が必要なの?」
と、乃々香ちゃんが話しかけてきた。
読んでいただきありがとうございます(*^^*)