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スノーフレーク  作者: 猫人鳥
episode6 対人関係における偏見編
135/425

お客さん

陽日(はるひ)視点です。

 お母さんは仕事だし、お兄ちゃんはバイトに行った。

 晃人(あきと)は友達の家に遊びに行って、(ひかり)(てる)も近くの公園で遊んでいるはずだ。


 とりあえずお昼ご飯の食器を洗って、あとは洗濯物。

 それから掃除して、夜ご飯の準備もしておかないと!

 今日は夕方から友達とお祭りへ行く約束もしているし、今のうちにやれる事を全部やっておかないといけない。


 私が家の諸々を片付けていると、


「ただいまー! はるおねえちゃんっ! ののかちゃんつれてきたー」


と、玄関の方から光の声が聞こえた。


「えー? なになにー?」


 公園に遊びに行ったはずだけど、帰って来たのかな?


 急いで玄関に向かうと、光と照と一緒に、ペンギンの柄のパーカーを着ている女の人がいた。

 フードのところに嘴がついていて、お腹のポケットの部分がペンギンの手のようになっている。

 フードも被っているし、手もポケットに入れているので、本当にペンギンみたいな人だ……


 確かさっき、光がののかちゃんを連れてきたとかなんとか言ってた気がするけど……


「ののかちゃん?」

「はるおねえちゃん。ののかちゃんだよ、ののかちゃん!」

「あ、どーも。ののかちゃんでーすっ!」


 ペンギンパーカーのお姉さんは、凄く軽い感じに挨拶をしてくれた。

 とても優しそうな人だ。

 優しそうというか、子供っぽい……

 でも、何で連れてきたんだろう?


「あっ! あの、ごめんなさい。この子達が何かご迷惑をお掛けしましたか?」

「そういうのじゃないから、大丈夫だよー」

「そうですか?」


 迷惑をかけた訳じゃないみたいだけど、だったら何で家に来たんだろう?

 光と照がずっと引っ張ってるみたいだし、無理矢理に連れてきちゃったのかな?


「あのねー、ののかちゃんはとべるペンギンさんでね、たすけてくれたのー!」 

「ん? ちょっとよく分かんないよ?」

「おれいするのにきてもらったのー」

「お礼? そうなの? あの、どうぞ。上がって下さい。あんまりいいお家じゃなくて、申し訳ないですけど……」

「ううん、大丈夫だよ。お邪魔しまーす」


 よく分からないけど、助けてもらったとか、お礼とかって言ってるから、多分"助けてくれた人には、必ずお礼をしなさい"っていう、お母さんの言葉を守ろうとしてるんだろう。

 知らない人を家に入れるのはどうかと思うけど、悪い人じゃなさそうだし、大丈夫だよね?

 あとでお兄ちゃんに怒られるかな?


「ののかちゃんは、おれいになにほしい?」

「えー? いらないよー」

「じゃあ、かたたたきー!」

「わぁー、ありがとー」

「ぼくもー」

「おぉー、きくねぇー」


 奥の部屋へと上がってもらったけど、何か光と照が楽しそうに遊んでる……

 一緒に遊んでくれてるみたいだ……


「あの、改めまして。私はこの子達の姉で、陽日といいます」

「あ、ご丁寧にどうもー。私は乃々香だよ」

「今日はこの子達とどうして……?」

「木でね、子猫が降りられなくなってたんだよ。それを助けてあげたの。えっと、ひかりちゃんのお友達の猫ちゃんだったかな?」


 子猫を助けてあげたって……

 あれ? その猫ってまさか!


「あーっ! ののかちゃん、だめだよー」

「だめなのー、いったらだめなの」

「もしかして、内緒にしてたの?」

「うん」

「はるおねえちゃん、おこるから」


 急に慌て出した光と照。

 やっぱりそうだ! 


「どうして陽日ちゃんが怒るの?」

「だって、ダメって……」

「ダメ?」

「その猫は、光の友達の家の猫で、つい3ヶ月ほど前に産まれたばかりなんです。まだ不安定な時期だからあまりたくさんの子供で騒がないようにって、光の友達のお母さんに言われていて……」

「あぁ……」

「そーれーなーのーにーっ!」

「うわー、たすけて、ののちゃんっ!」


 光と照は、乃々香さんの後ろに隠れている。

 私が外や人前で、あまり大きい声で怒れないって分かってるんだろう。

 これは後でしっかりめに怒らないとな……と、私が考えていると、


「あのねー。陽日ちゃんが怒るのは、光ちゃんと照君の為なんだよ。それに猫ちゃんも困ってたでしょ? ダメって言われてる事は、やったらダメなの」


と、乃々香さんは私の味方をしてくれた。


「えっ……」

「光ちゃんも照君も、猫ちゃんを困らせたくないでしょ? だったらちゃんと陽日ちゃんの言うことを聞かないとね」

「うぅ……ごめんなさい」

「分かればいいんだよー。もう、誰かが困る事はしないようにねー」

「うん!」


 乃々香さんは、光と照に怒ってくれた。

 しかも私やお兄ちゃんが言うのと違って、お母さんみたいな優しい雰囲気のある怒り方だ。

 だからかは分からないけど、光も照も大人しく言うことを聞いていた。


「はるおねえちゃん、ごめんなさい……」

「ごめんなさい……」

「猫ちゃんが大きくなったら、遊ばせてもらおうね」

「「うんっ!」」


 乃々香さんのお蔭か、2人が凄く素直に聞いてくれた。

 子どもっぽい変な人だと思ったけど、ちゃんと怒ってくれる、しっかりした人みたいだ。


読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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