容姿
乃々香視点です。
日下部君が△△神社でお祭りがあると教えてくれたので、そっちの方へ来てみた。
木とか屋根とかを適当に飛びながら来たけど、思ったより早くついてしまった……
まだ全然明るいし、お祭りは始まっていないみたいだ。
ちょっと近くで休憩でもしておこうかな……?
休憩出来そうな公園は……ん? 何だろうあの子達?
上から公園を探していると小さい子が3人で、背の高い木に向かってジャンプを繰り返しているのが見えた。
遊んでるというよりは、困っているように見える。
一体何を……あっ! そういう事か!
適当な屋根や電柱を使って、公園の方に向かう。
「ほらっ、おいで! ぜったいにキャッチするから!」
「こわくないよ~、だいじょうぶだよ~」
近くに来ると、木に向かって必死に手を伸ばす子供達がいた。
女の子2人と、その2人より少し幼く見える男の子が1人。
そして、上から見たときに分かったけど、木の上に子猫がいる。
きっとあの子猫が、木から降りられなくなっちゃったんだろう。
近いと逆に見えづらいからな……
私は眼鏡をかけてから、子供達の方へと近づいた。
「君達、大丈夫だよ。私が木に登るから」
「え? おねえちゃん……き、のぼれるの?」
「うん。任せて」
いつもの要領で適当に木を登り、子猫を抱き抱えて、そのまま飛び降りた。
これくらいの事は朝飯前だ。
あ、食べたけどね。
「はい、どうぞ」
「おねえちゃん、ありがとう」
「君のお家の猫ちゃんかな? 少し怪我をしちゃってるみたいだから、出来れば早く獣医さんに診てもらってね」
「わかった! じゃあすぐにかえるね! ひかりちゃん、てるくん、バイバイ~!」
3人いた子供のうちの、女の子1人が子猫の家族だったみたいで、子猫を抱えて走って帰っていった。
そして、残った女の子と男の子の2人が、
「すごいっ! おねえちゃんは、とべるペンギンさんなんだね」
「すごかった、すごかった!」
と、手を叩いたり、飛んだりと、ハイテンションで喜んでくれた。
"飛べるペンギンさん"っていうのは、私の格好をみて言ってくれたみたいだ。
私は明奈ちゃんお手製のペンギンパーカーを着ているから、この子達にはペンギンに見えるんだろう。
「ふっふっふっ、そうだよー。お姉ちゃんは、飛べるペンギンさんなんだよー!」
「わぁ! ペンギンのおねえちゃんっ! おなまえは?」
「乃々香だよー!」
「ありがとう! ののかちゃん!」
「いえいえ、どういたしましてー」
やっぱり感謝されるっていうのは、お互い心が温まっていいと思う。
私はいい行いをしたんだ!
あとで誰かに話して、褒めてもらおう!
「ののかちゃん、こっちにきてきてー」
「おうちにきてー」
「お家? 私がお邪魔しちゃっていいのかな?」
「うんっ! きてほしい!」
「たすけてもらったらおれいしないといけないし、ののかちゃんにきてほしい」
「そう?」
2人して私の服を引っ張って、お家にご招待しようとしてくれている。
そんな大層な事をした訳でもないのに申し訳ないと思うけど、凄い懐いてくれているみたいなので、そのままお家の方へお邪魔させてもらう事にした。
どのみち暇だったし……
同じ家に向かってるみたいだし、この子達は兄弟かな?
男の子の方が、女の子より幼いみたいだし……
「えっと、君達は兄弟なのかな?」
「うん! わたしがひかり。7さいなのー」
「ぼくがてるだよ! 5さいっ!」
「さっきの子は?」
「わたしのおともだち。きょうはね、ねこちゃんをみせてもらうやくそくをしてたんだよ」
「そうなんだね」
それで降りられなくなっちゃったのか。
というか、子供だけで遊んでたら危ないだろうに……
「お父さんとお母さんは? お友達とひかりちゃんとてる君だけじゃ、危ないよ?」
「おとうさんはいないの。おかあさんは……」
「おかあさん、はたらいてるから……」
「そっかぁ……でも、ちゃんと大人の人と一緒に遊ばないと危ないからね。気をつけるんだよ」
「ののかちゃん、はるおねえちゃんとおなじこといってるー」
「ちゃんと気をつけるから、だいじょうぶだよ! それに、たすけてもらったらおれいをするのも、ちゃんとできるから!」
そんな話をしながら、引っ張られるままについていくと、
「ののかちゃん、ここだよー」
と、一軒のお家の前に辿り着いた。
「ここが、君達のお家なの?」
「「うんっ!」」
連れてきてくれたのは、結構ボロボロって感じのお家だった。
「ただいまー! はるおねえちゃんっ! ののかちゃんつれてきたー」
「えー? なになにー?」
ひかりちゃんの声に反応して、家の奥から出てきてくれた中学生位の女の子。
この子がさっきも少し話に登場してた、はるお姉ちゃんか。
となると、3人兄弟?
「ののかちゃん?」
「はるおねえちゃん。ののかちゃんだよ、ののかちゃん!」
「あ、どーも。ののかちゃんでーすっ!」
「あっ! あの、ごめんなさい。この子達が何かご迷惑をお掛けしましたか?」
「そういうのじゃないから、大丈夫だよー」
「そうですか?」
はるお姉ちゃんは、結構しっかりもののお姉さんって感じの子だ。
これは私も見習わないとな。
「あのねー、ののかちゃんはとべるペンギンさんでね、たすけてくれたのー!」
「ん? ちょっとよく分かんないよ?」
「おれいするのにきてもらったのー」
「お礼? そうなの? あの、どうぞ。上がって下さい。あんまりいいお家じゃなくて、申し訳ないですけど……」
「ううん、大丈夫だよ。お邪魔しまーす」
私はひかりちゃんとてる君に引っ張られるままに、少し心配になるお家の奥へと上がらせてもらった。
読んでいただきありがとうございます(*^^*)