自由人
episode6になります。
乃々香視点です。
超金持ちで有名な桜野グループ。
私はその桜野グループのお屋敷に住んでいる。
ここが私の家という訳ではないけど……
ここは私の大切な友達、奏海ちゃんの家だ。
奏海ちゃんとは子供の頃からずっと一緒にいる。
もう友達というより家族って感じだ。
いや、私達の仲は家族なんてものも通り越している!
じゃあなんなのか……んー? いい言葉が思い浮かばない……
まぁ、奏海ちゃんと最初に仲良くなったのは私だし! って、これを言うと、いつもくー君に反発されるんだった……
奏海と最初に仲良くなったのは俺だ! とかって、勝手な事を言ってくる。
いい加減うるさいから、奏海ちゃんにはっきり言ってもらいたいなー、なんて事も考えながら、今日も仕事を終えてお屋敷に帰ってきた。
「お帰りなさいませ、乃々香様」
「ただいまでーす」
「奏海様がお呼びですよ」
「えー、お腹空いてたのになぁ……まぁ、奏海ちゃんが呼んでるんなら仕方ない! 行ってあげますか! 執務室ですか?」
「はい」
もう夜も遅いし、軽食食べて仮眠しようと思ってたのに……
でも奏海ちゃんに呼ばれたら行くしかない!
くー君とかだったら明日にしてたけど。
「お腹空いてるんで、執務室に軽食を持ってきて下さい」
「執務室にですか?」
「はい」
「怒られますよ?」
「大丈夫です」
「……かしこまりました」
先に荷物を置きに行こうかとも思ったけど、執務室の方が近いし、別に後でいいかな。
このまま行こう。
執務室の前……
本当はノックとかして入るべきなんだろうけど、面倒くさい。
それくらいで奏海ちゃんは怒ったりしないし……
「奏海ちゃーん! 来たよー!」
私は元気に部屋の中に入った。
「乃々香、ノックは?」
「忘れてたー」
「嘘。覚えてたけどしなかった」
「そうだね」
「はぁ、そろそろ社会性を身につけたら?」
「必要かな?」
「必要ね」
とまぁ、いつもとおんなじような会話から始まる。
最近会ってなかったけど、奏海ちゃんは相変わらずって感じだ。
「それで、私へのご用件は?」
「あぁ、乃々香に休んでもらいたいと思ってね」
「ふぇ?」
ちょっと聞き間違えたかな?
「休んでもらう? 何か、そう聞こえた気がしたけど……」
「そう言ったからね」
「ナニソレ?」
「お休み、休暇。といっても、明日だけなんだけど」
「今までそんなのなかったじゃん。勝手に休んで、勝手に仕事してたよ?」
「勝手に仕事はしてないでしょ」
ツッコミは的確。
だけど冷めてる……それも相変わらずの奏海ちゃんだ。
「それで、皆で休んでペンギンパーク?」
「休むのは乃々香だけ」
「は? 奏海ちゃんは?」
「乃々香がぬけるんだから。その穴埋めね」
「今までそんな事しなかったじゃん!」
「そうね。だからしようと思って」
「何で急に?」
「この間、葵が休みを使ったじゃない。それにみーも倒れたりしたし……やっぱり休みって、私の方から皆に支給するべきなんだと思ったの」
「それ、誰かに相談した?」
「してない。さっき思いついたから」
だろうね。
奏海ちゃんは、相談なしだと変な事を言い出すからな……
「で、何でいきなり私なの?」
休みがなかったのは私だけじゃない。
私達全員だ。
まぁ、休みっていう決まった日がないだけで、皆適当に休んでたんだけど……
「乃々香が一番休みがなかったと思ったから」
「そんな事ないよ! 私は合間にかなり休んでるから!」
「でも、急に召集がかかる事が多いでしょ?」
「それはそうだけど……」
確かに、予定していなかった仕事をいきなり入れられる確率は、私が断トツだとは思う。
でもだからって私が急に休むのはおかしくない?
「まぁとにかく、明日乃々香はお休みだから。何が起きても絶対に呼ばないから」
「はぁ? 何その言い方!」
「言い方なんていつも通りでしょ」
「違う!」
「もういいから、乃々香は明日お休みね」
「何でそう勝手に決めるの!」
本当に自分勝手。
すぐに暴走するし。
桜野奏海は冷静でクールな人だと勘違いしてる世間様に、知らせてあげたいくらいだよ。
「私、明日は手が空きそうなの。でもそれから先はいつ交代出来るかなんて分からないから」
「手が空くんなら、一緒にペンギンパークに行こうよ!」
「2人も抜けて、何かあったらどうするの?」
「でもっ!」
「確かに相談もしないで決めたのは悪かったけど、ちゃんと紅葉に許可ももらったから」
「だからって!」
「早くお風呂入って、ちゃんと歯磨きして寝なさい」
「もうっ!」
コンコンッ!
「乃々香様、軽食にサンドイッチをお持ち致しました」
「あ、はーい!」
「ちょっと乃々香! ここで食べないでよ」
「うるさい。私の話を聞いてくれない奏海ちゃんの話なんて、私も聞かない!」
「聞かないも何も、最初からこの部屋に持ってくるように頼んでる時点で、食べる気だったでしょ」
「ふーんだ」
何か奏海ちゃんがぎゃーぎゃー言ってたけど、無視してサンドイッチを執務室のソファで食べてあげた。
いきなり休みとか言われるし、奏海ちゃんと喧嘩になっちゃうし、散々だ。
もう、疲れたし寝よう……
「ちょっと乃々香! そこで寝ないで!」
怒ってる雰囲気の奏海ちゃんの声を聞きながら、私はそのままソファで寝ちゃった……
読んでいただきありがとうございます(*^^*)