13 1-13 確認
赤い羊視点です。
「どうも、葵さん。今、お時間よろしいでしょうか?」
「えぇ、丁度誰もいないから。私も聞きたい事があったし、電話してもらえて良かったわ」
電話をかけると、依頼人はすぐに出た。
携帯はちゃんと所持しているようだ。
朝以降、彼女の声を聞くのは初めてだな。
「聞きたい事、ですか?」
「この盗聴器ってどれくらいの音が拾えているの? 朝、アイツの声は聞こえていた?」
「もちろんです。私もその事で葵さんに少し伺いたいのですが、何故図書館での仕事を断ったのですか? 空音君も一緒にやられるようでしたが?」
俺の質問に少しだけ沈黙した後、依頼人は話しだした。
「……前に喫茶店の人手不足で、土日の2日間だけのバイトをして欲しいという仕事があって、空音がやるみたいだったから私もやることにしたの。でもそこにアイツもいた」
まぁ、いるだろうな。
恋人同士で同じバイトが出来るんだから。
「そしてアイツはね、私にはキッチンを任せた方がいいとか店長に言って、自分は空音と2人でホールをやったのよ!」
なるほど。
おそらく聖人ちゃんとしては、依頼人は静かなタイプだからこそホールよりキッチンの方がいいと考えた上での、優しさからの行動だったんだろうな。
全くの逆効果だが。
「その後も何度か一緒に仕事をしたけど、毎回私から空音を奪うの。私にはそういう嫌がらせをするのに、空音の前ではいい子のふりして……だから私はアイツから空音を救い出さないといけないのよ」
「そういう事でしたか。そう言えば葵さんは、何故スノーフレークに加入しているのですか?」
一応これも気になっていた。
調べた時に聖人ちゃんは人助けとか好きだから、モテ男君は聖人ちゃんが加入したからと、2人の加入理由は分かっていたが、依頼人は謎なままだったからな。
人助けが好きな訳でもなければ、金が欲しい訳でもない。
となれば、モテ男君が加入したからくらいしか理由が思いつかないが……?
「そんなの、空音が加入したからよ」
俺の質問に、少し呆れたように返してきた。
当然の事を聞くなと言わんばかりに。
そうだろうとは思っていたが、本当にそれだけとは……こっちが呆れる。
「アイツが邪魔をしなければ、私達の楽しいバイト生活が始まっていたのに……」
悔しそうに言ってはいるが、どちらかといえば楽しいバイト生活の邪魔をしたのは君……とか思ったが、何にしろ下らない理由だな。
読んでいただきありがとうございます(*^^*)