自主性
愛依視点です。
「だったら、私は何をどうしたらいいんだよっ!」
急に声を張り上げて喚いた私を前にして、皆困った顔をしている。
沈黙……
きっと私になんて声をかけるか、考えてくれているんだろう。
皆、優しい人達だから……
だからこそ、これ以上関わってはいけない。
今ここで、私がこの部屋から出ていきさえすれば、もう私は孤立出来る……
そうするべきなんだ……
パシッ
「えっ?」
無言で出ていこうとしていたのに、その私の手を、高坂さんが掴んだ。
出ていかせてくれる気はないみたいだ。
でも、そろそろいい加減にして欲しい……
「高坂さん、もうやめてくれないかな? 私はもう、孤立しないといけない人間なんだから」
「そんな人なんていないよ」
「だから私が……」
「私が孤立なんてさせないよ、絶対に」
何でそんなに私に関わろうとするの?
別にレンが好きな仲間でもないのに……
本当になんなんだろう?
「愛依ちゃんが今悩んでるのは、何をどうしたらいいのか、だよね?」
「は?」
「その答えは簡単だよ! 私達と、プルルスと、ちゃんと向き合えばいいんだよ。孤立しないといけないとか、結局向き合わずに逃げてるだけじゃん! ちゃんと向き合おうよ!」
私が逃げてるだけ?
ちゃんと向き合う?
「私達を利用してたとかいうんなら、もうそんな考えは捨てればいい。これからは、愛依ちゃんが本当に思った事をちゃんと言ってくれればいいよ」
「そうだよ早瀬さん。無理に合わせなくていいんだよ」
「詩苑君みたいな、自分のやり方を皆に押し付けてくるようなタイプでも、ちゃんとやっていけてるんだから」
「今までの学校がどうだったかは分からないけど、少なくともこの学校の校訓は"自主性の尊重"だからね」
「……変な学校」
「だね! あははっ」
「だよな、この学校じゃなかったら詩苑は終わってるからな!」
「終わらせるなよ!」
なんなの……もう……
「ついていけない?」
「え?」
「この感じが嫌?」
「……嫌ではないよ。でも、意味分かんないって思う」
「分からないなら聞いてくれればいいよ」
「じゃあ、何で高坂さんはこんなに私に関わろうとしてくるの?」
「え? 愛依ちゃんと仲良くなるチャンスだと思ってね」
「別に仲良くならなくていいじゃん。なのに何で?」
「んー? なんとなく?」
「答えになってない!」
私が強めに言うと、高坂さんはヘラヘラと笑って、
「愛依ちゃん。私は、仲良くなるのに理由はいらないと思うの」
と、ふざけたように言ってきた。
「愛依ちゃんは、何に対しても理由を求めすぎなんだよ。きっと今までの自分の行動に、全部理由があったからだよね? だから、全部に理由を求めてる」
「理由?」
「皆が皆、そんなに考えて動いてないよ。ほら、将大君を見て。将大君が何かちゃんと考えて行動してるように見える?」
「おい、高坂!」
「うん、見えないね」
「おい! 早瀬!」
「でしょ? ふふっ」
将大君とか面倒くさいバカだと思ってたのにな……
こうして話してるのは、少し楽しく思えてくる。
「つまり、里香も将大君と同じで、何も考えてないって事なんだね」
「わぁ……」
「何?」
「里香! 里香って言った! やっと、やっとぉぉ!」
すごい勢いで抱きつかれた……
私は、ちょっと里香の事もバカにしてやろうとおもって言ったのに……
「そんなに呼んで欲しかったの?」
「うん! 愛依ちゃん!」
「里香」
「何?」
「里香って、面倒くさい……」
「うん! よく言われるよ!」
「だろうね」
なんとなく、分かった気がする。
私はもう、孤立することは出来ないんだ。
里香達がいてくれるから……
読んでいただきありがとうございます(*^^*)