表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スノーフレーク  作者: 猫人鳥
episode5 貧乏人の虚言編
127/424

事情説明

愛依視点です。

「違う……違うのっ! 皆聞いて!」


 私の事が皆に誤解されたままで、皆の中の私が良い人になってしまうのを避けたくて、声をあげてしまった……

 出来ればもう喋りたくなんかないけど……

 でも言わないといけない、ちゃんと話さないといけない……


「わ、私は……」


 震えて上手く声が出せない……

 それでも言わないと!


「私は貧乏でね……皆を利用しようとしてた最低の……」

「あー、早瀬さん。そういうのはなんとなく聞いたからいいよ」

「朝廊下で言ってた奴ねー」

「お家大変だね、としかいえないけど、それと早瀬さんが優しい人だって話は関係ないし」

「うんうん」


 朝の廊下での会話を聞いてたんなら、もう誤解は解けてるはずなのに……

 何で……? あぁ、中途半端にしか知らないからか……


「昨日、私は詩苑君の家……あ、桜野奏海様の家か……そこに遊びに行ったんだよ……」

「うん、しってるよ! あの家大きいよね!」

「凄いよね!」

「俺もまた行きてぇ」


 この人達、あんまり人の話を聞かないな……

 私は真面目に話してるのに……

 高坂さんはじっと真剣に、私の事を見てくれてるけど……


「それで、あの家の置物を壊したの……」

「えっ!」

「怪我はなかった?」

「あー、それで怒られたから、今日の早瀬さんは元気がないんだね」

「いや、そういうのじゃなくて……」


 怒られたから元気がないもなにも、誰も私を怒ってくれなかった……

 いや、怒られてたのに、私が聞いてなかったんだろうな……

 昨日の事とか、あんまり覚えてないし……


「でも、それなら詩苑君問題じゃん!」

「あぁ、だから昨日怒られた……」

「ドンマイ!」

「え? 詩苑君が怒られたの!?」

「当たり前だろ? 僕が全部悪いんだから……なのに、神園さんが……」


 詩苑君は凄く落ち込んだように、自分が悪いと言った。

 後の方はぶつぶつと、何を言ってるのか分からなかったけど、きっと奏海お嬢様に相当怒られたんだ……

 何で弁償させずに帰らせたんだ! とか、犯人を今すぐ連れて来い! とか……?

 私が帰ったせいで、目茶苦茶怒られちゃったんだろうな……


「詩苑君は何も悪くないじゃん! 私がちゃんと奏海お嬢様に謝るよ! 許してもらえる訳なんてないけど……あと、プルルスにも……」

「プルルスってあのネコちゃん?」

「何でプルルスに?」

「私が壊したの、プルルスの置物で……」

「あぁ! あのプルルスちゃんのお気に入りの……えっ! あれを壊しちゃったの!?」


 ここにいる皆も、あの家に行ったことがあるんだな……

 だから皆、どんな置物なのかも分かってる……


「皆、この件はもう片付いてるから。早瀬ももう気にしなくていい」

「でも、私が悪いのに……」

「愛依ちゃん、違うよ。お客さんを招待しておいて、放ったらかしにした詩苑君が悪いんだよ」

「高坂、何で知って……」

「そんなの想像がつくよ!」

「そうか……」


 高坂さんも詩苑君が悪いって言ってて、他の皆も頷いたりして同意してる。

 何で誰も壊した私を責めないの?


「何で? 壊したのは私なのに……」

「早瀬だって、壊したくて壊した訳じゃないだろ? あれは事故だから」

「そんな……」

「それに、僕がちゃんと早瀬についていれば、防げた事故だ。だから早瀬が責任を感じる必要はないよ」


 詩苑君がついていれば防げた?

 ちょっと何言ってるのか分かんないけど、今更か。

 さっきから分からな過ぎてる。

 分かっているのは、私が最低な人間だってことだけだ。


「でも私は、置物を壊しておいて、それをプルルスのせいにしようとしたんだよ!」

「そうだな、それに関しては完全に早瀬が悪い。ちゃんとプルルスに謝ってくれ」

「あー、さっき言ってたのはそういう事かぁ……」


 私の発言に詩苑君はちょっと怒った雰囲気になって、高坂さんは納得したみたいだ。

 やっと流れが正しい方向になったかな? と、思ったのもつかのまで、


「でも、早瀬が本当に悪いのはそれだけだから」


と、詩苑君は言ってきた。


「それだけ? プルルスのせいにしたことだけ?」

「あぁ」

「じゃ、じゃあ、弁償は? 弁償はどうしたらいいの? 私の家、本当に貧乏で……あ、同情を誘ってるとかじゃなくて、本当に払うつもりはあるんだけど、すぐには……」

「早瀬っ、落ち着け!」

「……うん」

「弁償はしなくていい。それでプルルスが喜ぶ訳でもないからな。早瀬はただ、プルルスのせいにしようとした事を反省して、プルルスに謝ってくれればそれでいいんだ。もう充分に反省してるみたいだし、プルルスにも謝ってくれただろ? だからもう、気にしなくていい」


 は? 気にしなくていいだの、悪くないだの……もう、いい加減にしてほしい……


「だったら、私は何をどうしたらいいんだよっ!」


 もう訳が分からなくなって、思わず声を荒らげてしまっていた……


読んでいただきありがとうございます(*^^*)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ