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スノーフレーク  作者: 猫人鳥
episode5 貧乏人の虚言編
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慰労会

愛依視点です。

 私は、試食会に並ぶ列の最後尾で、新しく並ぶ人達にプリントを配り続けている。

 配りはじめてから30分くらいたつと、新しく並ぶ人よりも、列が進んでいく方が早くなって、私もだんだんと家庭科室の方へと帰ってきた。


「愛依ちゃん、お疲れ様。もう休んでていいよ」

「あぁ早瀬、悪かったな。お詫びで呼んだのに、手伝わせて」

「おい詩苑。やれって言ったのは俺だぞ?」

「そうだな。全く……」

「本当だよ! 愛依ちゃんはお客さんだったのに!」


 私が来たのに気付いた高坂さんが手を止めて、声をかけてくれた。

 その声に反応したみたいで、詩苑君と将大君も家庭科準備室から出てきてくれた。

 この3人は、本当に仲がいいみたいだ。


「将大君にやれって言われたからやった訳じゃないし、気にしないで」

「ほら、転校生もこう言ってるだろ?」

「将大君。早瀬愛依ちゃんだよ!」

「ありがとな、早瀬」

「う、うん……」


 将大君は私にも笑いかけてくれた。

 ガキ大将の威張り散らした奴だと思ってたのに……


「詩苑くーん! もう並んでるお客さんもいなくなったよー」

「そうか。じゃあ、手伝いはここまででいいよ。後から来るお客さんは、僕1人で何とかするから、皆は休んでくれ」

「はーい」

「わー、詩苑君のケーキ!」

「いただいてるねー!」


 詩苑君の手伝いをしていた子達が皆、準備室の方へと入っていく。

 私はどうしたもんかと狼狽えていると、


「愛依ちゃんも行こ!」


と、高坂さんにかなり無理矢理に手を引っ張られ、私も準備室へ入る事になった……


「はーい、私達の分ね」

「わー! やっぱり一仕事した後の方がいいねー」

「あ、早瀬さん。そのプリント、僕達にも1枚づつ頂戴」

「え……あ、うん」


 さっきまで配っていたケーキを、皆1つづつお皿によそっていっている。

 何をしたらいいのかも分からずに立っていると、プリントを配ってと言われたので、皆にもプリントを配った。


「今日もこきつかわれてやったからな。めっちゃ辛口評価にしようぜ!」

「そうだねー」

「じゃ、いただきまーす! んー、美味しい!」

「さすが詩苑君だね」


 準備室の席に適当な感じに着いて、皆はケーキを食べ始めた。

 そして、プリントに感想を書いている……


「ほら愛依ちゃんも食べよ」

「うん……」


 高坂さんが私の分を持ってきてくれた。

 ずっと私と関わろうとしてくれる……

 申し訳なく思えてくる……


「まず見た目だね! 層になってて面白いね」

「うん……」


 詩苑君が作ったケーキは、いくつもの層が重なっているようなケーキだった。

 苺とチョコレートが使われているみたいだ。

 凄い手の込んでいる感じだし、いくら小さいとはいえ、これだけの量を用意するのは、相当大変だっただろうな……


 フォークをさしてみると、層になってるのが順番に切れていく感じが手に伝わって、面白かった。

 そのまま一口食べると、本当にとても美味しかった。

 こんなに美味しいケーキは食べた事がないと思う。

 まぁそもそもケーキなんてろくに食べた事がないんだけど……


「愛依ちゃん、どう? 美味しい?」

「うん、凄く美味しい」

「よかった! でも、一口目で美味しいと思ったのなら、二口目からは粗探しだよ! ダメ出しするところを見つけないとね!」

「ふっ、なにそれ? わざわざ悪い所を探すの?」

「そう。その方が詩苑君の向上に繋がるからね!」

「分かった。それなら私も粗探しするよ」

「うん!」


 私がそういうと、高坂さんは私を見つめながら、


「やっと笑ってくれたね、愛依ちゃん」


と、少し涙目で言ってきた……


「高坂さん、あの……」

「愛依ちゃん、私は里香だよ!」

「……里香」

「うん! 何?」

「その、本当にごめんなさい。私に、こんなに接してくれて、ありがとう。でも私はもう、孤立しないといけないから、もう関わらないで……」

「それはいくら愛依ちゃんの頼みでも聞けないなぁ」


 私は真面目にいってるのに、高坂さんはふざけているみたいで、笑いながら話してくる。

 涙目なのに……


「高坂さん……」

「里香ね!」

「里香。私はね、ずっと皆を騙してたし、利用しようとしてたし、無実の人に罪を擦り付けようとするような、最低な人間なんだよ……」

「ん? 何の話?」

「それは……」


 私が高坂さんに昨日の事を話そうとすると、


「皆ありがとう! 食べながらでいいから、ちょっと僕の話を聞いてくれ!」


と、詩苑君が準備室に入ってきた。


読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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