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スノーフレーク  作者: 猫人鳥
episode5 貧乏人の虚言編
124/424

手伝い

愛依視点です。

 移動教室に休み時間……

 高坂さんは少しでも時間があると、全部私の所へ来た。

 申し訳ないけど、全部無視させてもらっている。

 私はもう、誰とも関わる気なんてないし……


 詩苑君は休み時間も何処かへ行っていて、全く話す機会がなかった……

 プルルスの事、あの置物の事、家に弁償出来る大金なんてない事、ちゃんと色々話したいのに……

 きっと試食会とやらの準備をしているんだろう。


キーン コーン カーン コーン


 ついに放課後になった……

 詩苑君は、スタートダッシュという感じに、チャイムがなったら教室から出ていってしまった。

 その詩苑君に続くように、他にも何人か走って消えて行った。


 私も詩苑君に呼ばれた試食会に行かないといけない。

 行けば流石に詩苑君とも話せるし、ちゃんと話して、ちゃんと謝って、弁償の事は……どうしたら……?

 いざ、ちゃんと話すんだと思うと、足が震えてきた……

 行っても何も解決出来ないだろうけど、呼ばれた私が行かないのは最低だ……

 これ以上、最低な人間になりたくない……

 だから行かないと……でも……


「愛依ちゃん! 一緒にいこう」

「……」

「こっちだよ!」

「あっ!」


 高坂さんにほぼ無理矢理な感じに手を引っ張られ、詩苑君の開く試食会へと向かって行く。

 すると、前の方に人がたくさん並んでいるのが見えてきた。

 綺麗に1列に並ぶめちゃくちゃ長い列。

 低学年も、高学年も、なんなら先生まで並んでいる。


 高坂さんは私の手を引きながら、その列の横を通っていく……

 え? 列に並ばないのかな?

 そんな、順番抜かしみたいな事……


 私がそんな事を考えていると、列の最前の方まで来ていた。

 この列は家庭科室からのびていたみたいだ。

 このまま家庭科室に入るのかと思いきや、高坂さんは家庭科室のお向かいの家庭科準備室の方へ入っていった。


「お、高坂。おっせぇーぞ!」

「はいはい、大きい声出さないでよね。本当に声だけはデカいんだから」

「声だけじゃなくて、体格もだよ!」

「それな!」

「おい、お前等なぁ」

「何やってるの! 早く手を動かして!」

「一番遅く来て、指示出してんじゃねぇーよ!」


 部屋に入るなり賑やかだった。

 家庭科準備室の中にいたのは、将大君とさっき詩苑君に続いて走っていったクラスメイト達。

 まるで喧嘩をしているみたいだけど、全員笑顔なので、これはただのじゃれ合いか?


 準備室の冷蔵庫から、小さくて可愛いケーキが沢山乗ったトレイを出して、家庭科室の方へと運んでいっている。

 また別の人が準備室に空のトレイを持ってきては、新しいのを運んでいく……


 高坂さんもエプロンや三角巾をして、手を洗ってからケーキの入ったトレイを冷蔵庫から出した。

 でもそれを家庭科室の方へは持って行かず、私の方へと持って来てくれた。


「はい、愛依ちゃん! 1つどーぞ」

「え……」

「これが、詩苑君の試作品のケーキだよ」

「で、でも……私、並んでないし……」

「わぁお! 律儀だねー! いいからいいから!」

「でもこういう事なら、ちゃんと並ばないとって思うから……」

「そう? でも遅くなっちゃうよ? 早く帰る用事とか大丈夫?」

「今日は大丈夫だから……」


 私と高坂さんが話していると、


「おい高坂! 早くしろ!」


と、将大君がまた怒ってきた。


「もう、うるさいよ! 今は大事な女子会中なの!」

「そんなのはあとでやれ! おい、転校生! お前も来たなら手伝えや!」

「ちょっと! 愛依ちゃんはお客さんだよ!」

「ううん! 手伝わせて! 私は何をしたらいい?」


 将大君に手伝うように言われたので、やらせて欲しいとお願いした。

 何もしてないのにいきなりケーキをもらうのは間違ってると思うから。


「そこのプリントを、並んでる奴等に配って来てくれ」

「分かった!」


 状況はよく分からないけど、それくらいの事は出来る。

 おいてあったプリントの束を持って、家庭科室から並んでいる列の人達へ、


「お願いしまーす」


と、プリントを1枚づつ渡していく。

 あってるのかはよく分からないけど、列の人達は普通に受け取ってくれるので、これもこの学校ではよくある事なんだろう。


 最後尾の人へ渡し終えた所で、自分が何のプリントを配っていたのかを確認してみた。

 書いてあったのは、"オペラの感想"、"良かった所"、"ダメだと思った所"という3文だけだった。

 オペラっていうのがよく分からないけど、確か高坂さんが、詩苑君が作った料理を食べて感想を言う会だって言ってたし、このオペラっていうのがさっきのケーキの名前なんだろう。

 私は感想を書くための用紙を配っていたのか……


「試食会の列、ここであってますかー?」

「え? あ、はい! お願いしまーす」

「はーい。今回はどんなのかな?」

「ねー、楽しみー!」


 少し経つとまた人が並び始めたので、私はまたプリント配りを再開した。


読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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