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スノーフレーク  作者: 猫人鳥
episode5 貧乏人の虚言編
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試食会

愛依視点です。

「あぁ、早瀬。高坂も。話があるんだ」


 そう言って近づいてきた詩苑君。

 今はちょっと話の通じない高坂さんの相手で手一杯なんだけど……

 でもそんな事は言ってられない。

 私はちゃんと詩苑君に謝らないと……


「し、詩苑君……ご、ごめ……」

「昨日は悪かった! 僕のせいで迷惑をかけて、本当にごめんっ!」

「……え?」


 私が謝ろうとすると、詩苑君は大きな声で謝ってきた……

 それも頭を深々と下げて……

 こんな人の多い、他クラスの子達も見ているような廊下で……


「い、意味が分からないよ……なんで詩苑君が謝ってるの? 悪いのは全部私でしょ……?」

「いや、悪いのは全部僕だよ……」

「……は? な、何で……」


 私の動揺は全く落ち着いてないというのに、次から次へと意味が分からない。

 悪いのは全部僕って、詩苑君は何も悪くなんてないじゃん!


「早瀬、高坂、それに皆にも聞いてほしい!」


 まるで演説をするみたいに、皆にも聞こえるような大きな声で話す詩苑君……


「僕は今まで、皆に散々甘えてきた。皆が僕のために、僕のやり易い環境を作ってくれているのが当たり前だと思って、全然皆にお礼も言わなかった」

「うん、そうだね。やっと気付いたの?」

「あぁ。ずっと高坂や将大がフォローしてくれてたんだよな?」

「私達だけじゃないよ。クラスの皆も、先生も、皆がずっとフォローしてくれてたんだよ!」

「本当にごめん」

「まぁ、気付いたんなら、いいんじゃない?」

「そう言ってももらえると、助かる……」


 詩苑君に少し冷たい感じで話す高坂さん。

 でもその様子は喧嘩をしているという感じではなくて、お互いが信頼し合ってるからこその言い合いのように見えた。


「それで、お詫びになるか分からないけど、今日の放課後、ちょっと急だけど試食会を開こうと思ってる。出来れば来てくれないか?」

「うん、もちろん。楽しみに行くよ! ね、愛依ちゃん!」


 勝手に私も行くことにして、同意を求めてくる高坂さん……

 っていうか、そもそも……


「試食会って何?」

「詩苑君が作った料理を、皆で食べて感想をいうの。その意見を参考にして、また詩苑君が料理を作ってくるの。それを繰り返して、よりいい料理にするための会だよ!」

「……は?」

「だから、愛依ちゃんも一緒に食べようね! 辛口評価で大丈夫だから、たくさん意見を言ってあげようね!」


 なにそれ……?

 あぁ、お嬢様に出すための料理の試作を皆で食べてるのか……


 そういえば初日……

 高坂さんが、この学校は試食会があるって言ってたけど、あれは詩苑君が開く会だったって事?


「今聞いてた皆も、できるだけ話を広めておいてくれ。僕はまだちょっと準備とかあるから……じゃ、またあとで」


 詩苑君はそれだけ言って、廊下を走って行ってしまった。

 そんな詩苑君に、


「朝の会に、遅刻しないでよー!」


と、高坂さんが叫んでから、


「さ、教室入ろっ! 愛依ちゃん!」


と、私の手を引っ張ってきた。

 明らかに目立っていた私達3人を気にしている人はもういない。

 廊下で見ていた他のクラスの人達も、もう何事もなかったかのように、いつも通りに戻ってる……


 詩苑君のために、わざわざ詩苑君を避けてあげていた人達なんだ。

 きっと詩苑君がおかしいのには、慣れてしまっているんだろう。


 置物の話も、プルルスの話も、何も出来なかった。

 それどころか、私はまだ謝る事だって出来ていないのに……


 試食会……

 詩苑君に来てほしいと言われたんだから、行かないといけない……

 それに行って、ちゃんと詩苑君に謝ったら、もうちゃんと孤立しよう……


読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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