叱責
詩苑君視点です。
早瀬を帰らせてから、僕は神園さんに呼ばれた。
「先程の出来事について、説明をしてくれるかな?」
「は、はい……あの、僕の客人がプルルスの置物に当たってしまい、壊してしまったみたいです……本当に申し訳ございませんでした」
「"みたい"という事は、詩苑君もその現場は見ていないんだね」
「はい、申し訳ございません……」
神園さんの口調は優しくて、いつもと変わらない。
でも僕を真っ直ぐに見つめる瞳は恐ろしく、怒っているのだと分かる。
目を合わせるのが怖くて、見ていられない……
「彼女は詩苑君が招待したお客様で、間違いはないね?」
「はい……」
「では詩苑君。何故君はお客様を招待しておきながら、お客様を廊下で1人にしたのかな?」
「その……帰ってもらおうと思って……」
「お見送りもしないで?」
「はい……申し訳ございません……」
僕は早瀬の事を鬱陶しいと思ってた。
創作の邪魔だから、早く帰ってほしいとか、僕に関わらないでほしいとか、そんな事だけを考えて追い出してしまった。
「詩苑君もよく分かっているとは思うけど、あの置物は偶然当たるような位置にはなかった。それなのに何故お客様は当たったのかな?」
「それは……おそらく立ち眩みか何かでよろけたんだと思います。いつも凄く元気なんですけど、僕の部屋を出る時は大分暗かったので……もしかしたら体調が悪くなったのかもしれません……」
「そんな体調の優れないお客様を、どうしてお見送りもしないで帰らせようとしたんだい?」
「申し訳、ございません……全部、僕の自分勝手な行動が招いた結果です……」
早瀬は学校で何故か僕に凄い絡んできた。
皆は僕が集中出来るようにと関わらないでくれているのに、早瀬は何度来るなと言っても来た。
高坂達から僕の事を聞いた筈なのに何で来るんだよって、いつも鬱陶しく思っていた。
僕の部屋に来たいと早瀬が言った時も、小学生でお嬢様の使用人をしている僕を面白がっているんだろうと思ったし、来たらもう興味もなくなるだろうから絡んでも来なくなると思っていた……
でも早瀬は僕の事を知らなかった……
転校してきたばかりの早瀬に、僕の事情なんて分かるわけがない。
きっと早瀬には、僕が普段から皆に酷い態度だから、皆も離れていってしまっているように見えていたんだろう。
だから孤立した僕と仲良くなろうとしてくれていたんだ……
それなのに僕は、高坂達が話してくれてるって勝手に決めつけて……
僕は、本当に皆に甘えきっていたんだな……
「まぁ、十分に反省をしているようだし、今回はこれくらいにしようか」
「……はい。本当に、申し訳ございませんでした」
「ちゃんと明日、学校で謝るんだよ?」
「分かってます……」
早瀬に、皆に……僕はちゃんと謝らないといけない……
それに何よりプルルスに……
「あの、神園さん……プルルスは?」
「プルルス様はお嬢様のお部屋でお休み中だよ。今はそっと休ませてあげよう」
「はい……」
プルルス……本当にごめんな……
僕のせいで……
「詩苑君も今日はもう休みなさい。お嬢様には私から説明しておくから」
「いえっ! 僕からお嬢様にお話します……」
「お嬢様のご帰宅は遅いよ?」
「大丈夫です。待ちますから……」
「そうか。それなら今のうちに、今日やれる事は全て終わらせておきなさい」
「はい、失礼します」
お嬢様が帰って来られたら、ちゃんと僕から話さないと……
今回の事、責任は全部僕にあるんだから……
読んでいただきありがとうございます(*^^*)