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スノーフレーク  作者: 猫人鳥
episode5 貧乏人の虚言編
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現状報告

愛依視点です。

 私は今、家にいる。

 あの後どうやって帰ってきたのかは、あまり覚えていない。


 あの置物……いくら位の置物だったんだろう……

 うちのお金で弁償なんて出来る訳がない。

 これはもう夜逃げするしか……

 折角お父さんも新しい仕事が調子良かったのに、私は何て事を……


 はぁ、またこれだ……

 さっきから私は自分の事しか考えていない……

 本当は一番の被害者であるプルルスの事を、心配していないといけないのに、自分の心配ばかり……

 本当に最低……


「ただいま……っと、どうしたんだ?」

「あ、おとーさん……おかえり……」


 お父さんが帰ってきた……


「ご飯……作ってなかった……」

「愛依は食べたのか?」

「あ……私はいいや……」

「いいわけあるか! ご飯は食べないとダメだ!」

「うん……」


 お父さんと一緒に調理室へ行き、夜ご飯を作った。

 一緒にご飯を作ったのなんて、いつぶりだろう……


「さ、食べるか」

「うん……」

「で、学校で何があったんだ?」

「……」

「言いにくいか?」

「……あの、あのね……学校で金持ちかと思った子、金持ちじゃなかったの……金持ちの家に住んでるだけだった……」

「それで? そんな事でそこまで落ち込んだりしないだろ?」


 そんな事……?

 まぁ、確かにそれぐらいの事では落ち込まないのが私だけど、お父さんがそんな事とか言うなんて……

 金持ちじゃなかったのかぁ……って、いつものお父さんなら残念がるはずなのに……


「愛依?」

「あぁ……うん。それだけじゃなくてね……その、その子が住んでる金持ちの家に行ってきたんだけど……」

「お、おう……」

「その家の置物、壊しちゃったの……」

「っ! ……そうか」


 お父さんは目を見開いて驚いたのに、無理に平然を装ってる……

 金持ちの家の置物を壊したなんて、そりゃ驚くのも当然だよね……


「べ、弁償しろって言われたのか? いくらだ?」

「……言われてないの」

「あ?」

「私が泣いちゃって、話なんて出来なかったから……そのまま家に帰されたの。だから……明日、言われるかも……」

「それで学校に行きたくないのか?」

「う、うぅ……それだけじゃなくて……」

「どうした?」


 私は弁償しろって言われるのが怖いの?

 それは確かに怖い……

 だって家じゃそんなお金は払えないから。

 でもそれだけが怖い訳じゃない。


 詩苑君にどんな顔をして会えばいいのかか分からない。

 プルルスはどうしてるかなんて、そんな酷いことも聞ける訳がない。

 何より、私はあの時嘘をついたんだ……

 自分が助かるために、プルルスに責任を押し付けて、逃げようとした、最低の人間だったんだ。

 それが分かったのが、怖い……

 情けなさすぎて、辛いんだ……


「私は置物を壊したの! でもその責任を違う子に押し付けて逃げようとした! その子が、その置物を一番大切にしてる子だったのにっ! 私は、自分が助かるためにって、あの子を傷つけたの……」

「愛依?」

「お、お父さん……わっ、私、自分がっ本当に……本当に最低な人間だったって、分かっちゃって……」


 話していると、また涙が溢れてきてしまった。

 あれだけ泣いたのに、私の涙はまだ残っているなんて……


 そんな私にお父さんは、


「こんなに優しくて、家族思いで頑張り屋の愛依が、最低な人間な訳がないだろっ! いくら自分でも、そんな事は言うもんじゃねぇ!」


と、抱き締めてくれた。

 折角作った夜ご飯もほったらかして……


「お父さん……」

「大丈夫だ、大丈夫だぞ、愛依」

「でも……」

「いいか愛依。困った時はな、人に助けを求めればいいんだ。何でもかんでも1人で背負う必要なんてないんだ」

「……え?」

「重い荷物を1人で持つより、皆で持った方が運びやすいだろ?」

「うん……」

「そりゃ世の中には色んな人がいるからな、中には協力してくれない人もいるかもしれない。でもだからって、どうせ協力してくれないって決めつけて、お願いもしないっていうのは違うんだよ」

「……お父さん?」

「ってな、今日言われたんだ」


 お父さんが急に何を言い出したのかと思ったら、今日言われた事だったのか。

 でもそれが今、何か関係ある……?


「その愛依が傷つけたっていう子は、愛依の事を怒ってるんだよな?」

「……うん。怒ってるっていうか、置物が壊れた事に絶望しちゃって、心ここにあらずって感じだったの……」

「そうか……まぁ、何が言いたいのかは、俺にも分かんないんだけどな、ようはその子が怒ってるとか、話を聞いてくれないとかって決めつけて、許してもらう努力をしないっていうのは、違うと思うって事だ」


 プルルスに許してもらう努力……

 確かにしてない……

 許してもらえないって決めつけてる……


「それにな、その置物が何円の物なのかなんて分からねぇし、一生かけて払っても弁償できないような物かもしれねぇ。でも、そういう困った時に、協力してくれる人はいるんだ」

「協力してくれる人? 世の中お金が全てだよ。お金のない私達に協力してくれる人なんて……」

「ごめんな、愛依。それが間違ってたんだ……」

「え?」

「世の中はお金が全てじゃなかった」


 私の頭を撫でながら、とても落ち着いて話してくれているお父さん。

 でも、お父さんは一体何を言ってるんだろう?

 さっきから、意味が分からないよ……


読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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