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スノーフレーク  作者: 猫人鳥
episode5 貧乏人の虚言編
114/424

虚偽

愛依視点です。

 気が抜けてふらついてしまったら先で、飾ってあった置物を落として、壊してしまった。

 そこにタイミングがいいのか悪いのか、現れた猫……


「今の何の音だ!?」


と、慌てて出てきた詩苑君に、私は、


「ね、猫がっ! 猫が台に飛んで、置物を落としたのっ!」


と、猫を犯人に仕立てあげてしまった……


「置物って、それ……」


 詩苑君はかなり驚いたような、困った顔をしている……


「何の音ですかっ、まぁ!」

「どうしました……あっ!」

「これは……」


 さっきすれ違ったメイドさん達がどんどんとやってくる。

 かなりの大事だ……

 やっぱり相当高級な置物だったんだろうか?

 そんな凄い物を、私の家じゃ弁償は出来ない……

 猫には本当に申し訳ないと思うけど、私の罪を被ってもらわないと……


 猫の様子を見ると、何故かこの場から離れないで、割れた置物の方を見てる……

 さっきみたいにぴょんぴょんと台の上を移動して、ここから離れてくれた方がいいのに、なんで離れてくれないの……?


「本当の事を言ってくれないか?」

「え?」


 私が離れて欲しい思いで猫をみていると、詩苑君は私に本当の事を言えといった……

 とても静かな、落ち着いた声で……


「本当の事って……わ、私は、嘘なんて……」

「プルルスは、こんなことしない」


 何それ? 何で? 何で私が嘘を言ってるって思うの?

 この猫はさっきから、台をぴょんぴょんと飛んでたじゃん。

 あんな感じで置物を落としたんだって、何で思わないの?

 何で猫を信じて、私が嘘だって決めつけるの?


「早瀬、ここに置いてあったその置物はな、プルルスの宝物だったんだよ」


 詩苑君は困っていて苦しそうな、とても悲しい時のような顔をしている……


「たから……もの?」

「あぁ。お嬢様がプルルスのために買ってきたものなんだ。お嬢様は忙しくてあまり遊べないから、プルルスにとってこの置物は、お嬢様の代わりのような物だったんだよ」

「お嬢様の代わり……?」

「毎日これを見に来て、お昼寝する時もいつも囲うように寝て……プルルスにとって、本当に大切な宝物だったんだ」

「大切な宝物……」


 さっきからずっと微動だにせず、ただ呆然と置物の破片を見ている猫……

 この置物はこの猫にとって、とても大切な宝物だったんだ……

 それなのに私は……

 私は宝物を壊した上に、その罪を被せようとした……

 最低な人間だ……


「ご、ごめっ、ごめんなさい……わっ、私が……私が落として壊したのっ! 本当に、本当にごめんなさぁぁ……」

「うん……早瀬。謝るのは、僕にじゃなくて、プルルスにだ」

「プルルスに……プルルス、あの、本当に、本当にごめんなさい……ごめんなさいっ!」


 プルルスは目を見開いて、かたまっている……

 私の言葉が届いている様子もない。


「破片が危ないので、すぐに片付けます」

「御足元、失礼しますね」

「プルルス様も、危ないですから。さぁ、こちらへ」


 メイドさん達が割れた置物を回収しはじめて、プルルスはメイドさんに抱えられて連れていかれてしまった。

 抱えられる時も、しっぽすらも動かなかったプルルス……

 まだ宝物が壊れた現実が理解できていない、受け入れる事が出来ない、そんな感じだった……


「う、うっうゎ……わあぁぁぁぁああ!」


 急に涙が込み上げて来て、泣いてしまった……

 それもこんなに声をあげて……

 一体なんで私は泣いているんだろう?


 置物を壊してしまったから?

 弁償しないといけないから?

 詩苑君が私を信じてくれなかったから?

 自分が、自分の罪を他の人に被せるような、最低な人間だということを、理解してしまったから……?


 本当に泣きたくて、苦しいのはプルルスの方だ。

 私には泣く資格なんてない……

 それは分かっているはずなのに、どうしても涙を止めることは出来なかった……


読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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