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スノーフレーク  作者: 猫人鳥
episode5 貧乏人の虚言編
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放し飼いの猫

愛依視点です。

 詩苑君について入った建物の中は、とても立派だった。

 絵とか置物とかがたくさん飾ってあって、やっぱり金持ちの家って感じだ。

 何であっちのお屋敷の方じゃないのかは気になったけど、あのお屋敷さえ見ていなければ、十分にここが詩苑君の家だと納得できる。


「あぁ、おかえり。詩苑君」

「ただいま戻りました、神園さん」


 少し進んだところで、おじさんに出会った。

 見るからに執事さんって感じの服を着ている、物凄く格好いいおじさんだ。


 でも今の言葉だけ似合わないな……

 そこは普通、おかえりなさいませ、詩苑様とかじゃないの?

 それに詩苑君の態度も変だ。

 日下部さんにも敬語だったし、年上だから敬語で喋ってるんだろうけど、ちょっとかしこまり過ぎてないかな?


「おや、お友達かな? あとで紅茶でも……」

「いえ、必要ありません」

「そう? それなら、何か必要なものがあったら言ってね」

「ありがとうございます」


 詩苑君が断ってしまったけど、紅茶を持って来てくれようとしていたみたいだ。

 それに何かあったら言ってとか……

 やっぱり詩苑君のために動いている人なんだよね?

 でもなんか、おかしくない?


「あ、おかえりー、詩苑君」

「おかえりなさーい」

「お疲れー」


 執事さんに会ったあとは、たくさんのメイドさん達とすれ違った。

 すれ違うメイドさん達は皆、軽い感じに詩苑君に挨拶をしている。

 なんなら、仕事をしないで談笑しているメイドさんもいた。

 それに対して詩苑君は何も言わないし、軽く頭を下げたりしながら通って行く。


 なんか本当に違和感しかない……

 詩苑君の家は、使用人の人達とフレンドリーに過ごす金持ちなんだろうか?


「みゃーん」


 私が悩みながら歩いていると、詩苑君の足元に猫が寄ってきた。

 茶色の毛がふわふわしている、とっても可愛い猫だ。


「ただいま、プルルス」

「みゃみゃー」


 詩苑君は猫に声をかけて、また歩いて行ってしまった。

 猫は、置いていかれちゃった……という感じに、歩いていく詩苑君を見送っている。

 凄く可愛い……撫でてもいいかな?

 まぁいっか、撫でちゃおう!


「おいで、猫ちゃーん」


 私が呼ぶと、猫はそっぽを向いて、ぴょんと高そうな置物の置いてある台の上に飛び乗った。

 そのままぴょんぴょんと台や窓を歩きながら行ってしまった。

 声をかけていたし詩苑君の猫なんだろうけど、こんな高そうな物がたくさんの飾ってある場所で猫を放し飼いなんて、大丈夫なんだろうか?

 置物を落とされたりするかもしれないし、あの猫は毛長だったから、あちこちに毛も落ちるだろうに……


 あ、あれか。

 金持ちだから、置物を落とされたって新しいのを買えばいいと思ってるのか。

 毛だって、さっきから何人もいるメイドさん達が片付けるんだろう。


「おい、僕の部屋はこっちだぞ。何をやってるんだ」


 私がさっきの猫を目で追っていると、結構先に進んだ詩苑君に呼ばれた。

 急いで詩苑君の方へ走って行く。


「ごめん、ごめん。猫が可愛かったから見てたんだ。詩苑君、猫飼ってるんだねー。名前はなんていうの?」

「プルルス」


 は? プルプル? なんかよく分かんないや。

 でも詩苑君がつけた名前なら、何か褒めないと……


「なんか、格好いい名前だね。詩苑君がつけたの?」

「違うけど」


 違うんかい!

 なんだよ、もう……

 でもお父さんとかお母さんがつけた名前かもしれないし、下手な事は言えないな……


「そうなんだねー。私、あの子に嫌われちゃったのかな? そっぽ向かれちゃった」

「プルルスはあんまり人に懐かないから」

「そうなの? でも詩苑君には寄ってきてたよね? 詩苑君の事が好きなんだね、可愛いね」

「まぁ拾ってきたのが、僕だし」

「拾ってきたの?」

「あぁ」


 拾ってきた? 金持ちの癖に?

 金持ちなら、ペットはペットショップに買いに行くんじゃないの?

 何で拾ってんの?

 しかも自分が拾って来たんなら、自分で名前をつければいいじゃん!

 本当、なんなの? 意味分かんない事が多すぎる!


 あー、突っ込みたい!

 でも失礼な事は言えないし……

 ちょっと一旦、猫の話はやめよう。


「詩苑君の部屋はこっち?」

「ん? あぁ、そうだけど。プルルスはもういいのか? 呼べば来ると思うけど」

「えっ……」


 詩苑君は私を心配しているみたいに聞いてきた。

 こんな詩苑君は初めてだ。

 でも、なんで……?


「プルルスに触りたかったんじゃないのか?」


 なるほど……猫に嫌われちゃったって言ったから、私が落ち込んでると思ったのか。

 だから触らせてくれようって事か。

 なんだ……詩苑君にも優しい所があるんじゃん。


 確かに猫には触りたい。

 でも下手に触って何かあるのは嫌だし、やめておこう。

 本来の目的を忘れてはいけないんだから。


「触りたいけど、私には触られたくないかもしれないし、いいよ! 早く詩苑君の部屋に行こう!」

「まぁ、いいんならいいけど」


 私はこの家に遊びに来た訳じゃない。

 ご飯をもらいに来たんだ。

 できれば詩苑君のご両親にも好かれたいし、これから詩苑君の部屋をたくさん褒めないといけない。

 猫と遊んで癒されてる暇があったら、少しでも好かれるように金持ちを褒めていないといけないんだから!


読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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