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スノーフレーク  作者: 猫人鳥
episode5 貧乏人の虚言編
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到着

愛依視点です。

 車内では日下部さんがたくさん話しかけてくれた。

 もともと緊張とかはそんなにしない方だけど、日下部さんは気さくな人だからか、とても話しやすかった。


 詩苑君は車内でずっと今日の宿題をやっている。

 でも日下部さんがたまに話を振るとちゃんと返事をするし、いつものノートを書いている時の不機嫌な感じもない。

 宿題のノートの文字はいつものノートとは全く違って、御世辞でも何でもなく、本当に格好いい字で読みやすかった。


「お前も宿題終わらせといたらどうだ? まだ少し距離があるぞ」

「そうだね。気分が悪くならないのなら、終わらせておくといいよ」

「ありがとうございます。でも宿題はもう終わってますから」

「そうなのか?」

「うん。学校で出来る限りは終わらせてるの。その方が家でゆっくりできるからね」


 ゆっくりできるっていうか、ご飯作ったりとかしないといけないから、宿題なんて家でやってる時間があまりないだけだねどね。

 まぁ今の家は、お風呂を準備しなくてよくなった分、今までよりは大分楽になったと思うけど……


「ふーん、お前も効率重視なんだな」

「え? うん、そうだね」


 意外にも詩苑君も結構話しかけてくれる。

 学校での詩苑君とは、本当に別人みたいだ。


 喋っていたせいもあって、どれくらい走ったのかは分からないけど、気が付くと回りに建物はほぼなくなっていた。

 外の景色を見てみると、今は森の中のような場所を走っている。

 森のような場所と言っても、周りに生えている木は綺麗に並んでいて、自然に生えたきた感じはしない。

 それに車が全く揺れないから、多分道もちゃんと整備されている場所なんだろう。

 これは、どう考えても森じゃなくて、金持ちの庭だ……


 ここはもう、詩苑君の家なんだろうか?

 こんなに広い森みたいな庭があるって事は、詩苑君は私の想像の遥か上をいく金持ちなのかもしれないな……


 ん? 今なんか、木の隙間からお屋敷が見えた。

 すごく立派なお屋敷だ。

 あれが詩苑君の家かな……?


「わぁ、あのお家。凄い綺麗なお家だね」

「そうだな」


 家を褒めても詩苑君の表情は特に変わらない。

 何を当たり前の事を言っているんだ、こいつは……とでも言いたそうな感じだ。

 もっと、ここはこうだとか、あそこはああだとか自慢してくれたら褒めやすいのに……

 でも今からあそこへ行くのかと思うと、ドキドキする……


 それからまた少し走ると、ついにお屋敷が近づいてきた。

 やっと、ついに! と、思っていると、何故かお屋敷を通りすぎていく……

 あぁ、駐車場へ行くのか……って、いや、そんな訳ないよね?

 駐車する前に、家の前で詩苑君が降りた方がいいに決まってる。

 それなのに、なんでお屋敷の前で止まらないんだろう?


「さて、着いたよ」


 訳が分からずに悩んでいると、車はさっきのお屋敷よりも少し小さい建物の近くで止まった。


「ありがとうございました」

「あ、ありがとうございます?」


 詩苑君が降りたので、私も続いて降りる。

 今度の日下部さんはドアも開けてくれなかったし、それどころか車から降りる事もなかった。

 詩苑君が自分でドアを開けて、自分で閉めていた……


「早瀬さんの帰りは、どれくらいかな?」

「え?」


 日下部さんに、私の帰りについて聞かれた。

 急でビックリしちゃったけど、確かに帰りも送ってもらわないと帰れないんだから、聞かれて当たり前か。

 でもなんて言えばいいんだろう?

 ご飯の時間までいたいけど、そういう訳にもいかないし……


「いいですよ、日下部さん。帰りは歩かせれば」

「こらこら、友達になんて事を言うんだ」

「はぁ、すみません……あの、帰りはちょっと、こいつ次第というか……」

「んー、そうか。じゃあまた呼んでくれればいいよ」

「本当にすみません。ありがとうございます」


 詩苑君の私に対する態度は一旦置いといて、日下部さんに対する態度に違和感しかない。

 何で詩苑君がこんな下からお願いしてる感じなんだろう?

 でも私が帰る時間に合わせてくれるって事は、やっぱり詩苑君の為に動く運転手さんなんだよね?


「おい、僕の部屋に来るんだろ? こっちだ」

「え? うん……」


 詩苑君はお屋敷の方じゃなくて、近くの建物の方へ入っていく。

 この建物もその辺の普通の家とかと比べたら立派な建物だけど、あのお屋敷と比べちゃうと、大したことないように思えてしまう。

 でも詩苑君は入って行っちゃったし、私もついて行こう……


読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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