11 1-11 登校
葵視点です。
今日から私の学校へ持っていく荷物には、携帯が1台増えた。
元々の自分の携帯。
スノーフレークから支給されている個人端末。
そして、赤い羊との連絡用端末……
発信器と盗聴器がついているとか言っていたし、赤い羊にはまだ完全に信用されたわけでは無い。
一度受けると言った以上、今からキャンセルなんて事はされないだろうけれど、やっぱり少し不安だ。
とりあえず学校へ行こう。
これからの事も考えておかないといけないし……
「あら、葵ちゃん。おはよう」
隣の家のおばさんからの朝の挨拶。
この人は昔からいつも声をかけてくれる。
けれど、私にはこの人と楽しく談笑している余裕なんてない。
申し訳ないとは思いつつも、私は軽く頭を下げ、学校へ向かった。
学校の校門近くで、向こうから空音が来るのが見えた。
そして隣には、九条麻里奈。
私に気づいたようで、声を掛けてきた。
「おー葵、おはよ」
「おはよう、葵ちゃん」
「空音、おはよう……」
空音からの挨拶、これはいつも通り。
問題なのは九条麻里奈。
私の事を"葵ちゃん"とか……
もう何度か聞いているけど、本当に気持ち悪い……
「あのね、葵ちゃん。今、空音とも話してたんだけど、今度スノーフレークの仕事で、図書館の本の整理っていうのがあるんだ。もし良かったら、葵ちゃんも一緒にやらない?」
「やらないわ」
「あ、予定とかあるよね。急に誘ってごめんね。また誘うね」
赤い羊は何時から盗聴しているのだろう?
今の会話も聞いていたのだろうか?
これが九条麻里奈だと分かっただろうか?
私にこの携帯を持たせた理由は、私の事が信用出来ないからというだけではなく、標的の情報を探る為でもあるはずだ。
となれば私から九条麻里奈に話しかけ、赤い羊に情報収集をしてもらうべきなんだろうけど、普段私から話しかけるなんて事をしないんだから、それは不自然に思われるだろう。
また連絡が来た時にでも、赤い羊がどうしてほしいのかを聞いておかないといけないな。
盗聴器越しで伝わるかは分からないけど、九条麻里奈の周りには常に誰かがいる。
誰に対してもいつでもニコニコと……
そんなバカみたいに笑顔を振り撒いて、疲れないのか。
本当に、早く終わればいいのに……と、そんな事を考えて過ごしている間に授業も終わり、気がつけば放課後。
クラスの生徒達が下校や部活等で居なくなり、静まりかえった教室に私だけ。
その時、赤い羊との連絡用端末が鳴った。
読んでいただきありがとうございます(*^^*)