急展開
愛依視点です。
今日も私は早起き!
まぁ早起きは三文の徳とかいうもんね!
良いことなんて起きた事ないけど。
寝ているお父さんを起こさないように部屋を出て、調理室へ行って朝ごはんを用意。
この時間はやっぱり誰にも会わないな……
どうせ会わないんだから、質素にする必要もない。
昨日の特売で色々買えた物を使って、結構豪華な朝ごはんを作った。
部屋に帰って朝ごはんを食べ、学校に行く準備と、お父さんの荷物の準備をする。
昨日は特売もあって逃げるように帰っちゃったけど、今日も高坂さん達、詩苑君との事を言いに来るかな?
相手をするのが面倒だ……
それを考えると、学校に行くのがちょっと嫌になる……
いやいや、そんな細かい事を気にしてる場合じゃない!
お父さんの仕事先の上司は変な人で、お父さんも上手く媚びれるか分からないみたいだし、私が詩苑君ともっと仲良くならないといけないんだから!
ちゃんと気合いを入れ直して、お父さんを起こさないように部屋を出て、今日も学校に向かう。
昨日は詩苑君を待ち伏せしても意味なかったし、何より詩苑君は歩くのが早く過ぎる。
追いかけるのも大変だし、朝の待ち伏せ作戦はもうやめた。
それよりは一番最初に教室に行って、教室で待ち伏せしていた方がいいと思う。
昨日日直の子にも言われたし、もう少し遅くいこうかとも思ったけど、今日はこの、"教室待ち伏せ作戦"のために早く行こう!
詩苑君は自分の席につくとノートを書き始めるから、席につくまでに話しかけて、ノートを出させないようにすればいい。
ノートを書いている時じゃなければ、それなりに喋ってくれる事は分かってるんだから!
朝のほとんど誰も通っていない通学路を1人で歩き、学校に到着した。
教室に入ると、もちろんだけど誰もいない。
自分の席に座って、少し勉強をしていると、
ガララッ
と、教室のドアが開く音がした。
振り返ってみると、詩苑君がいた。
よし、作戦開始だ!
「おはよう詩苑君!」
「はぁ、またお前か……」
私を見て、ため息をつく詩苑君。
本当に失礼だ。
席につこうとする詩苑君の邪魔をしながら話しかける。
「詩苑君は本当にいつも早いんだね」
「僕よりお前の方が早いだろ。早く来て暇してるだけなら、もっとゆっくり学校に来いよ」
でも詩苑君は相変わらずの早歩きで、さくっと席についてしまった。
そしてノートを取り出す……同じ流れだ……
あーあ、やっぱり教室待ち伏せ作戦も失敗か……
「詩苑君だって暇でノート書いてるんじゃないの?」
「僕は忙しい。お前と一緒にしないでくれ」
「ふーん」
作戦は失敗したかと思ったけど、ノートを出したわりには、詩苑君がたくさん話してくれている気がする。
これはもしかして、昨日のガキ大将を追っ払ったのや、高坂さん達に対抗して、私苑君を褒めたりした効果かな?
詩苑君も私を見方だと思ってくれたのかもしれない。
「忙しいなら私も手伝うよ! 何でも言ってね」
「なら、僕に構わないでくれないか」
「それじゃ手伝えないじゃん! 詩苑君は面白い事を言うんだね」
「ったく、お前は本当になんなんだよ」
「なにって、私は詩苑君と友達になりたいだけだよ?」
「友達? だったら話しかけないでくれ」
「そんなのおかしいよ! 友達なんだから仲良くしよ!」
「仲良くって……はぁ、お前は僕にどうしてほしいんだ?」
「え? うーん」
これは難しい質問が来ちゃったな……
でも、折角詩苑君がいつもより話してくれているこのチャンスを逃すのは勿体ない!
思いきって言ってみよう!
「私、詩苑君の家に遊びに行かせてほしい!」
「はぁ? 家?」
詩苑君はすごく嫌そうな顔をした。
失敗したか?
流石にいきなり過ぎたか?
そう思っていると、
「僕の部屋に遊びに来たら、お前は大人しくなるのか?」
と聞いてきた。
「えっ! 遊びに行っていいの?」
「お前が僕に話しかけて来ないっていうなら、別に来てもいい」
「分かった! じゃあ今日? 今日行っていいんだね?」
「人の話を聞いているのか? 来てもいいけど、もうこれ以上邪魔をするなって言ってるんだ」
「うん! じゃあ今日は一緒に帰ろうね!」
「分かったから、もう来ないでくれ……」
やったー!
私は今日、詩苑君の家に遊びに行けるんだ!
そうと決まれば、今日はもう詩苑君と話をする必要もないので、詩苑君の席から離れた。
これで高坂さん達にも、詩苑君に関わるのはやめたって言えるし、面倒事も解決だ。
詩苑君のお家かぁ……
どんだけ大きいお家だろう?
お母さんとかいるかな?
優しい人だといいけど……
いやでも、金持ちなんだしきっと私達みたいなのを見下している人だろう。
それこそ詩苑君に、"友人にするべき人間は選びなさい"とか言ってるようなタイプかもしれない。
でもどんなタイプの親でも、気に入られるように行動すればいいんだ!
とにかくめちゃくちゃほめよう。
金持ちなんてほめまくって、媚売りまくればいいんだから。
やっと金持ちの家に遊びに行けるという喜びと、どんな所かも分からない恐怖があるけど、まぁなんとかなるだろう。
詩苑君の家に行くのが楽しみだ。
読んでいただきありがとうございます(*^^*)