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スノーフレーク  作者: 猫人鳥
episode5 貧乏人の虚言編
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生態

愛依視点です。

 最後の授業も終わって、帰りの先生の挨拶。

 私の帰る準備は完璧だ。

 本当は放課後も詩苑君に声をかけたいところだけど、今日はスーパーの特売があるから急いで帰らないと!


「それじゃあ皆さん、気をつけて帰ってくださいね」

「起立、礼」


 挨拶も終わったところで急いでランドセルを背負う。

 スタートダッシュしないと!

 そう思っていたのに、


「早瀬さん、ちょっとだけいい?」


と、高坂さんが話しかけてきた。

 タイミングが悪いよ、高坂さん!

 私の出鼻をくじかないでよ……

 

「ごめんね、高坂さん! 私今日は早く帰らないといけないから! また明日ー!」

「あっ……」


 高坂さんには悪いけど今日は特売優先だから!

 一応謝りながら、高坂さんをスルーして走って帰る。

 まぁでもどうせ、詩苑君とは関わらない方がいいよーとかそんな話だろうし、スルーしても問題ない。


 急いで帰って、部屋にランドセルを置き、お財布を持ってスーパーに向かう。

 今日は卵がお一家族様1パックまでだし、牛乳も激安!

 しかもじゃがいもとたまねぎも袋に詰め放題だ。

 早く行かないとなくなってしまう!


 走ってスーパーへ行き、かなり強い奥様方の波を避けて、目当ての卵と牛乳を手に入れる。

 こういう時、自分の体が小柄なのは本当に有利でいいなと思う。

 奥様方の隙間も入っていけるから。


 詰め放題は袋を少し広げてから。

 少し破れていたり、飛び出したりしていても、店員さんにも何も言われない。

 これも私が子供だからだろう。

 特売は結構子供に有利だ。


 でも、


「痛っ!」

「あーら、ごめんなさいね」


こういううっとうしいオバさんもいる。

 足を踏まれたり、突き飛ばされたりなんてしょっちゅうだ。

 擦り傷が出来る事くらいは、当たり前だと覚悟しないといけない。


「お嬢ちゃん迷子? あのお姉さんのところへ行って、お母さんを呼んでもらいなさい」

「大丈夫です、迷子ではないので。オバさんそろそろ老眼鏡にした方がいいですよ。こんなに大きな子供が視界に入らないなんて、生活に支障がでると思います」

「……お嬢ちゃん、お母さんかお父さんは?」

「1人で買い物も出来ないほど幼くはありません。やっぱり老眼鏡がいいと思いますよ。では」


 親がいれば喧嘩はするけど、子供には何も出来ないのがオバさんの生態だ。

 オバさんは子供には手を出せないし、口もそこそこにしか出してこない。

 だって子供に泣かれたら、絶対に自分が悪者になると分かっているから。

 だからこういう時の私は強い。


 でもこの作戦もそろそろ限界かもしれないな。

 私も成長してしまうし……


 そんな事も考えながら今日の戦利品を持って、家に帰る。

 調理室の冷蔵庫に買ってきた物をしまっておく。

 冷蔵庫があると買ってきた物も日持ちさせれるので、本当に最高だと思う。


 あとで卵と野菜の炒め物でも作ろう!

 今日は結構豪華な夜ご飯が作れそうだなと考えながら、お風呂へ行こうとしたところで、


「あ、愛依さんじゃありませんか。先日ぶりですね」


と、綾瀬さんが調理室に入ってきた。


「綾瀬さん! このあいだのお肉、とっても美味しかったです! ありがとうございました!」

「それは良かったです。ちゃんと食べてますか?」

「一応は食べてますよ! あははっ」


 これはチャンスだ。

 先にお風呂へ行こうと思ったけど、綾瀬さんがいる間にご飯を作った方がまた何かもらえるかもしれない。

 とりあえずモヤシと卵を炒めておこう。


「ん? 愛依さん? またモヤシですか?」

「でも今日は卵もあるんですよ! たんぱく質です」

「もっと栄養も大事にしないといけませんよ。これをどうぞ」

「え? 野菜ジュース?」

「はい。愛依さん顔色があまり優れていないようですし、ビタミンをしっかりとって、早く寝て、ゆっくり休んで下さい」

「あ、ありがとうございます!」


 綾瀬さんは野菜ジュースをくれただけで出ていってしまった。

 料理を作りにきた訳じゃなかったのかな?


 それにしても野菜ジュースって……

 しかも小さい紙パックサイズで1本だけって……

 もらえたのは嬉しいけど、ちょっと期待していたのとは違ったな。

 野菜ジュースより、お肉が欲しかった……

 まぁ、しょうがないか。


 先に作ったからご飯が冷めてしまうのはどうしようもない。

 とりあえず作った料理を部屋に持って帰ってから、お風呂へ行く。


 服を脱いでみると、スーパーで押された時の怪我は、やっぱりうちみと擦り傷になっていた。

 擦り傷の方はもう血も止まっているみたいだし、うちみもそんなに酷くはならないだろう。

 気にするほどのものでもないな。


 そんな怪我の事よりも、今日もお風呂を貸し切りにしているという事に喜ぼう!

 ちょっと怪我に染みて痛いけど、このお風呂を広々と使えるんだから、細かい事は気にしない!


 私はもうこの生活にかなり慣れてきたと、自分でも思う。

 こういう馴染みやすさが、私のいいところなんだよね、本当に。

 あとは小柄な体型とか、大人への媚び方とか、オバさんの撃退法とか……

 本当に私っていいところが多いなー。


……多いんだよ、きっと。

 そうだよね? 私、何も間違ってないよね? お母さん……


読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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