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スノーフレーク  作者: 猫人鳥
episode5 貧乏人の虚言編
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休み時間

愛依視点です。

 朝はなんだかんだ色々あったけど、それからは昨日と特に変わらなかった。

 移動教室は声をかけても相変わらず無視されたし、詩苑君は朝の事を私が助けたとは思っていないみたいだ。

 全く……自分の金の偉大さに、相手か怯んだとても思っているのだろうか。


 休み時間になった時、


「あの、早瀬さん。ちょっといいかな?」


と、高坂さんに声をかけられた。

 なんか、嫌な雰囲気だ……

 私は1人なのに対して、高坂さんは後ろに他の女子を2人連れている。

 この高坂さんと一緒にいる女子達の名前は……覚えてないな。

 まぁ詩苑君の事しか覚える気ないし、いいんだけどね。


「何? 高坂さん」

「ちょっと話をしたいから、廊下に来てくれる?」

「……いいけど」


 高坂さんグループと一緒に廊下に移動する。

 一体なんの話だろう?

 雰囲気的にはあまりいい話ではなさそうだ。


「それで話って?」

「あの……あのね、早瀬さんはなんか凄く詩苑君と話したりしてるけど、あれ、やめた方がいいよ」

「そうそう、詩苑君には近づかない方がいいから」


 詩苑君の話だったか。

 まぁ、大方こんな事だろうとは思っていたけどね。

 ようは、詩苑君と関わってもいい事ないよー、私達のグループに入れてあげるよー、って事が言いたいんだろう。


 最初に高坂さんとは少し意気投合しておいたし、多分それの効果で変な子と関わろうとしている私を()()()()()()()()しているんだろう。

 上から目線の優しさというか、なんというか……

 まぁ私からしたら、余計なお世話だ。


 高坂さんと意気投合した"レン"とか、全くもって知らないし、高坂さん家は金持ちっぽいけど、ご飯をもらったりする事を考えると微妙だ。

 私に高坂さんグループに入る利点はない。


「何でそんなに皆、詩苑君を仲間外れにしようとするの? そういうの、良くないと思うよ」

「仲間外れとか、そういう事じゃないんだよ」

「詩苑君に今関わると怒られるでしょ?」

「そうだよ。ピリピリしてて、すぐに怒るし、関わっちゃダメなんだよ」


 そんな話をしていると、廊下の奥から詩苑君が歩いてくるのが見えた。

 高坂さん達には後ろ側になるから、詩苑君が来ていることには気づいていないみたいだ。


 これは、ちょっとチャンスかもしれない。

 詩苑君だって、自分がクラスで仲間外れにされて嫌われてるって自覚はしているだろう。

 そして、その原因が自分の態度にあることだって分かってるはずだ。

 それでも態度を改めないのは、プライドが高いから。

 そういうタイプは褒めるのが一番!

 これは高坂さん達を少し利用して、詩苑君を褒めて、私こそが詩苑君の味方だと思ってもらうチャンスだ!


 私は詩苑君が近づいて来るのを少し待ってから、


「皆誤解してるよ! 詩苑君は凄く優しいし、カッコいいと思うの! だから私は大丈夫だよ!」


と、詩苑君にも聞こえるように大きな声で言った。

 これは完璧に聞こえただろうし、私が皆から詩苑君を庇っているんだと伝わったはずだ。


 でもチラッと見た詩苑君の表情は、欠片も興味がないって感じだった……

 何で? 折角褒めたのに、なんなの?

 自分を庇ってくれる仲間がいたんだ! って顔をしてくれたっていいだろうに……

 なんか腹立つな……


 詩苑君は全く表情も変わらないまま、話をする私達の横を通って行った。


「あ、詩苑君……」

「今の話、聞こえちゃったかな?」

「んー? どうかな?」


 高坂さん達も詩苑君の存在に気がついてしまった。

 流石に本人の近くではこういう話は出来ないだろう。

 金持ちを敵にまわせる人なんているわけないんだから。

 話はもう、ここで終わりだな……と、思ったのに……


「あの、早瀬さん。話を戻すけどね」


と、高坂さんはまた話をはじめてきた。

 どういう神経をしてるんだろう?

 本人に聞こえたら敵だと思われて、真っ先に家が潰されるかもしれないっていうのに……


「あのね、誤解してるのは早瀬さんの方なの。早瀬さんはまだ転校してきたばかりだから、詩苑君の事全然知らないと思うけど、詩苑君はね、すっごくお金持ちの……」


キーン コーン カーン コーン


 お、ラッキーだ!

 これ以上話をしていても面倒くさいだけだし、これで終われるな。


「チャイムなったし、戻ろう!」

「えっ、あ、うん……そうだね」


 私は少し小走りで、逃げるように高坂さん達から離れた。


 多分高坂さんは、私が詩苑君がクラスでいじめられて、仲間外れにされて、可哀想だと思ったから話しかけていると思ってるんだ。

 だから、詩苑君が金持ちのプライドが高い嫌な奴だということを知らない私の為に、教えてくれようとしていたんだろう。

 でも偶然とはいえ、私はもう詩苑君が金持ちだってことも知っている。

 知った上で接している。


 今のところは無視されてるけど、さっきのはきっと詩苑君にも届いたはず!

 もしかしたらこれからも、高坂さんは良かれと思って私を助けようとしてくるかもしれないけど、それも逆に利用して、詩苑君との距離を縮めていこう!


読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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