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スノーフレーク  作者: 猫人鳥
episode5 貧乏人の虚言編
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ガキ大将

愛依視点です。

 特に静かだった訳でもない教室に、驚くほど大きな声で、


「よぉー、詩苑! ノート見せてくれよー!」


と、響いた。

 声のした教室の入り口の方を見て見ると、かなり体格のいい男の子が立っている。

 っていうか今、詩苑って呼んだよね?


将大(まさひろ)君だ……」

「あぁ……」


 私の近くにいた子達が、小声でそう言ったのが聞こえた。

 あのやかましいのは将大君というらしい。

 いかにもガキ大将って感じの男の子だ。


 でもこのクラスにはいなかったはず……

 隣のクラスの子だろうか?


 私が考えている間に、将大君は教室の中に入って来て、


「はぁーあ、詩苑とクラスが離れちまって、ホント不便だよなー」


と、そんな事を言いながら、詩苑君の席の方まで歩いていく。

 他クラスの生徒が入ってきているというのに、誰も止めようとはしない。

 皆が心配そうな顔で詩苑君と将大君の方をみている……?


 あぁ! そうか、この将大君っていうのは、いじめっ子なんだ!

 いかにも威張りちらしているガキ大将って感じだし、口出ししたりすると面倒くさいんだろう。


 でも、なんでわざわざ他クラスから来てまで、詩苑君に絡んでいるんだろう?

 いや、そんな事は簡単だ。

 ああいうガキ大将とか、リーダーを気取ってる奴とかは、自分が一番だと威張りたいんだ。

 今までの学校でもそうだった。


 つまり、自分こそが一番なんだと威張りたいのに、詩苑君がいるから威張れないんだ。

 運動がどれだけ出来ようと、勉強がどれだけ出来ようと、金持ちの前では誰もがかすんでしまう。

 ガキ大将がどれだけ威張っても、それは虚勢でしかないけれど、金持ちが威張っていたら、誰も逆らえない……

 だから詩苑君がいる限りは、将大君はガキ大将として威張る事が出来ないんだろう。

 それで絡みに来ているのか……


 誰も特に何も言わないのは、この光景は結構よくある事なんだろうな。

 関わりたくないから止めないって感じかな?


 でもあの将大君は、誰も詩苑君と関わろうとしない中で、自分から詩苑君と関わろうとしてるんだな……

 もちろん周りが見えていないだけなんだろうけど、常に、誰に対しても自分らしくあれるというのは、凄い事だと思う。

 それを度胸があるというべきか、バカというべきかは微妙なところだけど。


 詩苑君からしても、きっと嬉しい存在なんだろう。

 他の子は誰も関わろうとしてこない中で、自分に話に来てくれる存在なんだから。


 となるとこの状況、私にはあまり都合が良くない……

 私は誰も相手にしない詩苑君に、唯一関わろうとする人として、詩苑君が心を開いてくれるのを狙ってる。

 それなのにこんな将大君とかいう、詩苑君に関わろうとする存在がいたのなら、私は唯一ではなくなってしまう。

 それは良くないな……

 今はまだ詩苑君も将大君にそこまで心を開いている訳じゃなさそうだけど、関わろうとしてくれる存在なら、私がちゃんといるって分かってもらわないといけない。


 詩苑君と唯一普通に話しをする子ポジションは、私がもらうものなんだから、将大君には早々に退場してもらわないと!

 将大君は詩苑君の席まで来ると、


「しーおんっ!」


と、詩苑君の肩を叩いた。

 あーあ、詩苑君はノート書いてるのに……

 でもこれは、詩苑君を助けるチャンスだ!


「ん? 詩苑、お前まさか……」

「ちょっとそこのあなた!」

「ん? なんだよお前」

「私は新しくこのクラスに転校してきた早瀬愛依!」

「あ? 転校生?」

「そう!」


 私が名前をいうと、将大君は変な顔で見てきた。

 さあ、どうする?

 詩苑君の代わりに私をいじめるか?

 それとも、私に反発して、結局詩苑君をいじめるか?

 どうこられても私は逃げないし、絶対に詩苑君を守る!

 それで将大君は敵、私は味方って分かってもらおう!


「だいたいあなた、このクラスじゃないでしょ! 自分のクラスに帰りなよ。詩苑君の迷惑になるでしょ!」

「あ? 転校生だから知らねぇんだろうけど、俺はこいつの……」

「あーもうっ! うるさいんだって!」


 私と将大君の言い合いは、詩苑君のかなりの苛立ちが含まれた、叫ぶよな声にかき消された。

 詩苑君の席の前で、私と将大君が言い合っていてうるさかったんだろう……


「あぁ、わりぃわりぃ。また来るわ」


 詩苑君の声を聞いてすぐ、将大君は逃げるように帰っていった……

 何だったんだろう?

 やけに引くのが早いというか、諦めがいいというか……

 いじめに来たのなら、今の詩苑君に対して反抗的になるだろうし……


 うーん、詩苑君も怒ってる上に私もいるから、2対1なのは不利だとでも思ったのかな?

 ちょっと気になったけど将大君は隣のクラスだし、そんなには気にしなくてもいいか。

 また来たら、また詩苑君を守ればいいんだ!


読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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