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スノーフレーク  作者: 猫人鳥
episode5 貧乏人の虚言編
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早起き

愛依視点です。

「ふぁ~あ……」


 登校中、あくびがでた。

 今日も早起きして調理室へ行ったからなぁ……

 結局誰にも会わなかったけど。

 朝は皆結構遅いんだろう。


 お父さんはかなり疲れていたみたいで、私が家を出るときはまだ寝ていた。

 朝ご飯は置いてきたし大丈夫だとは思うけど、ちゃんと遅刻しないで仕事に行けるかな?

 それが心配だ。

 本当はお父さんを起こしてから家を出た方が良かったんだろうけど、私が出る時間じゃちょっと早すぎる。

 お疲れのお父さんには、できるだけ休んでもらいたいからね。


 私が何でそんなに早くに家を出たかといえば、もちろん登校から詩苑君と話すためだ。

 昨日と同じ辺りで待っていれば詩苑君も来るはずだし、一緒に登校するっていうのは、距離を縮めるチャンスだ!

 でも待ち伏せしてるってバレると、多分嫌がられちゃうから、見つからないように待ち伏せして、偶然を装わないと!


 昨日詩苑君が降りていた辺りまで来た。

 曲がり角で、自分の姿が見えないように隠れておく。

 少し距離があるし、私が待ち伏せしてる事は気付かれないはずだ。


 ……なかなか来ないなぁ。

 お父さん、そろそろ起きたかなぁ。

 昨日のドーナツ、美味しかったなぁ……

 そんな事をかんがえていると、車の音が近づいて来て、


「ありがとうございます。行ってきます」

「行ってらっしゃい、詩苑君」


と、声が聞こえた。

 詩苑君だ! よし、作戦開始!


 意気込んで詩苑君が降りた道に出たのに、詩苑君はもう遥か先にいた。

 歩くのが滅茶苦茶早いみたいだ。

 そういえば昨日も教室に入って来るのが早かったな……


 本当は偶然のおはようをやりたかったけど、こんなに距離があるなら仕方ない。

 走っていってのおはようにしよう!

 詩苑君を見つけた事で、嬉しくて走ってきた……うん! おかしくない! 大丈夫!


「はぁ……はぁ、し、詩苑君……おはよー!」


 頑張って走って詩苑君に追い付き、必死に笑顔を作って挨拶をする。


「ん、またお前か……」

「おはよう! お前じゃないよ、愛依だよ。……はぁ、ぐ、偶然だね! 詩苑君が見えたのが嬉しくて、走って来ちゃった。あははっ」

「あぁそう」


 物凄く冷たい返事……

 でも昨日の無視よりは喋ってくれたんじゃないかな……って、本当に歩くのが早い!

 今の私が話してる間も、止まりもしないで歩いてる。

 ついていきながら話すのは、かなり大変……


 なにこれ? 競歩?

 何で歩いてる詩苑君の方が、小走りとはいえ走ってる私より早いの?

 意味わかんない。


 もう、疲れた……

 一緒に登校作戦は諦めよう……


 私は小走りをやめ、詩苑君についていくのをやめた。

 ずっとついてきて隣で話しかけていた私がいなくなったというのに、詩苑君は一度も振り返ることもなく行ってしまった。


 私が教室についた時には、詩苑君はもう席でノートを書いていた。

 他には誰も来ていない静かな教室で、詩苑君のノートに何かを書く音だけが響いている。


 声をかけるかかけないか……どっちがいいんだろう?

 さっきおはようは言っちゃったし、話すことも特にない。

 朝少し話してくれたのは多分、ノートを書いていなかったからだ。

 ノートを書いている今は、声をかけても多分無視されるだろうから、声をかけるのはやめておこう……


 私も自分の席で、宿題として出されそうな所を先にやっていると、今日の日直の生徒が来た。


「あぁ、おはよう早瀬さん。昨日も早かったよね?」

「おはよう。うん、学校の事を色々覚えたくてね」

「そっか。でもね、分からない事は皆に聞けばいいから、あまり早く来ない方がいいよ。明日からはもう少し遅くおいでよ」


 名前もまだ覚えていない日直の子はそう言ってくれた。

 私への優しさで言ってくれてるんだろうけど、ようは、"いつも詩苑君が早いから、避けた方がいい"って事が言いたいんだよね?

 何より今の挨拶だって、私にしかしていないんだから。


「そうするよ、ありがとう」


 一応日直の子にはそう返しておく。

 早く来ても詩苑君には置いて行かれるし、遅く来るかどうかは少し悩んでた。

 お父さんの事も心配だし、朝はもう少し家でゆっくりした方がいいかもしれないな。


「おはよう」

「おはー」

「おはようございます」

「おはよー」


 どんどんクラスの皆が登校してきた。

 これ位の時間が丁度いいんだろう。


 ただ、誰も詩苑君には挨拶をしない。

 詩苑君に席が近い子も、鞄を席に置いてすぐに離れていき、誰も自分の席へは行こうとしない。

 昨日もそうだったけど本当に皆、全力で詩苑君を避けているんだろう。


 そんな中、


「よぉー、詩苑! ノート見せてくれよー!」


と言う声が、急に教室に響いた。


読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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