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スノーフレーク  作者: 猫人鳥
episode5 貧乏人の虚言編
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着眼点

愛依視点です。

 今日の私は本当に忙しかった。

 移動教室の時には詩苑君と共に歩き、


「移動教室って、面倒だよね」

「……」

「荷物持とうか?」

「……」


と無視され、休憩時間は、


「詩苑君は何が好きなの?」

「……」

「折角の休み時間だよ、勉強もほどほどにしないと疲れちゃうよ」

「……」

「さぁ、ノートを書くのを一旦止めよう! もっと遠くの景色を見た方が……」

「いい加減にしてくれっ! 本当にうるさいんだよ!」


と、突き放された。

 それでもめげずに放課後、詩苑君と一緒に帰ろうと声をかけると、やっぱり無視されてしまった。

 勝手に後ろをついていくと、詩苑君はまだ帰らないようで、図書室に入っていった。


 図書室の席に座って、本を読みながらノートを書いている詩苑君。

 周りの席には誰も座らない。

 図書室は同学年だけじゃなくて、他の学年の人もたくさんいる。

 それでも皆が詩苑君の周りを避けているという事は、詩苑君は学校中で相当に有名なんだろう。


 態度の悪い、嫌な金持ちとして……


 そりゃあれだけ普段から孤立してたら、急に現れた私を味方だと思うのには時間がかかるか……

 いや、普段から孤立してるからこそ、私みたいに構ってくる奴は珍しいはず……

 どれくらいの関わり方が丁度いいのかはまだ分かんないけど、あまり一気に距離を縮めようとするのは多分無理だし……

 とりあえず、今日はこれ以上はいかない方がいいかな?


 今日はずっと詩苑君に話しかけに行っていたからか、高坂さんとは喋らなかったな……

 なんか高坂さんも詩苑君の周りには来ないようにしていたし……

 まぁ、全然いいけどね!

 高坂さんより詩苑君の方が金持ちだろうし!


 そんな事も考えながらシェアハウス(仮)に帰ってきた。

 今日も昨日と同じで、一番にお風呂に入りにいく。

 昨日とは違って、今日は誰にも会わなかった……

 お父さんも言ってたけど、確かに広いお風呂を貸し切りにしているみたいで、気分はよかった。


 お風呂の後はご飯を作るために調理室へ行く。

 綾瀬さんは……残念ながらいないな。


「あら、こんばんわ」

「こんばんわ!」


 また初めて見る人がいた。

 優しそうなおばさんだ。


「私、新しくここに住む事になった早瀬愛依です。よろしくお願いします」

「昨日娘から聞いたわ」

「え?」

「うちの娘に、昨日お風呂で会ったでしょ?」

「あぁ、あのお姉さんですか?」

「ごめんなさいね、無愛想だったでしょ?」

「いえ、大丈夫です!」

「もしよかったら、仲良くしてあげてくれるかしら?」

「もちろんです!」

「ありがとう」


 特に何かをくれたりはしなかったけど、おばさんはたくさん話をしてくれた。

 娘さんがあんなに無口なのに対して、とても賑やかなおばさんだった。

 やっぱり変わった人が多いな……


 料理を部屋まで運び、お皿によそっていると、


「ただいま、愛依」


と、今日もグッドタイミングでお父さんが帰ってきた。


「お帰り! お父さん!」

「愛依、今日はな、お父さんも職場で食べ物もらったんだよ」

「え? なになにー?」

「ほらっ! 駅前のドーナツだ!」

「えぇーっ!? 凄い! 凄いね、お父さん!」

「あぁ、差し入れだってもらったんだ」


 本当に凄い!

 駅前のドーナツなんて、初めてみた!

 これは高坂さんに話したら、盛り上がれるかな?

 ……いや、高坂さんはターゲットじゃないんだ。

 別に盛り上がる必要なんてないか……


「愛依、どうした?」

「あ、ううん。なんでもないよ! そういえばお父さん! 私、金持ち見つけたよ!」

「お、そうか! どんな感じの奴なんだ?」

「なんか、自分以外の人を見下してる感じの男の子。プライドも高そうなの」

「そうか、媚売っとくんだぞ」

「うん!」


 詩苑君とはまだ全然仲良くなれてはいないけど、まだまだ初日なんだからそれも仕方ない事だ。

 でも詩苑君って、凄い無視してくるし、私達みたいな金持ちじゃない人を見下してる感じはあるのに、子分にしようとはしてないみたいだ。

 荷物持とうかって聞いたのに、持たせようともしなかったし……


 あれかな……

 親が、"関わる人間は選びなさい"とか、そういう事をいうタイプなのかな?

 でもそれだったらなおさらに、詩苑君は友達を欲しているはず。

 だから私の行動は今のままで間違ってない……よね?


「お父さん、金持ちは褒めまくればいいんだよね!」

「おう、そうだ! でもあんまり無理はするんじゃねぇーぞ。本当に嫌な奴もいるからな。褒めどころのねぇ奴とか」

「うんっ! 大丈夫だよ! 字とか褒めといた」

「流石は愛依! いい着眼点だ!」

「でしょー!」


 金持ちは見つかったし、ドーナツも食べれた。

 今日は忙しくて大変な日だったけど、結果的にはいい日だったかな!


読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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