表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スノーフレーク  作者: 猫人鳥
episode5 貧乏人の虚言編
101/424

ザ・金持ち

愛依視点です。

 転校2日目……

 今日はちょっと早起きしすぎたからか、朝から疲れている気がする……

 もしかしたら綾瀬さんが調理室に来るかもしれないと思って、早く行きすぎたせいだ……しかも結局来なかった……

 お父さんも早いから準備も色々あったし、早く学校に行って金持ち探しもしたいと思って家も早く出たし……

 朝から疲れるのも仕方ないよね……


 あーあ、眠いなぁ……


と、登校していた時、私は見てしまった。

 学校の近くの道で、1人の男の子が車から降りて来るのを。

 昨日同じクラスにいた、私に一切の興味も持たず、誰かに話しかけられる事もなく、ずっとノートを書いていた男の子だ。


 乗っていた車は、車になんて全然詳しくもない私にも分かるくらいに、ザ金持ちって感じの高級な車だ。

 リムジン? とかみたいに大きい車だった訳じゃないけど、黒の車でピカピカと輝いている。

 それに運転席にいたのはスーツの若い男の人で、降りる男の子に頭を下げていた。


 凄い車での運転手付きの登校なんて……

 間違いない! あの男の子は金持ちだ!


 そこからは走って学校に行き、教室まできた。

 昨日あの男の子が座っていた席を確認するために。

 この学校は個人の席が決まっていて、席に名前が書いてあるから、それで名前は覚えられる。


"柾谷詩苑"


 席にはそう書いてあった……

 これは困った、漢字が読めない……

 なんて読むんだろう?


「おい、僕の席で何をしているんだ」


 声をかけられて振り返ると、柾谷詩苑(名前の読めん奴)がいた。

 というか来るの早くない?

 どんだけはや歩きなんだよ?


「あ……私、昨日転校してきたばかりだから、まだ皆の名前を覚えてなくて、席見てたの」

「そうか。邪魔だ」

「え? うん、ごめんね」


 何? この冷たい感じ……

 口も悪いし、正直関わりたくない人だ。

 でもそういうわけにはいかない!

 この男の子は絶対に金持ちなんだから!


「ねぇ、あなたの名前の漢字、カッコイイね。でも難しくて読めないんだ。なんて読むの?」

「うるさい。僕に話しかけるな」


 うーわ、出ましたよ……

 そういうタイプか……

 本当に、ザ金持ちだわ……


 どうせあれでしょ? 金のない愚民が喋りかけてくるなって事でしょ?

 最悪な金持ちパターンだよ……

 もっと優しい金持ちっていないもんかねぇ……


 男の子は、私がこんなに近くに立っているのに無視する気満々で、ノートを出して何かを書き始めた。

 何を書いているのか気になって覗いてみると、何か英語とよく分からない図形が沢山書いてあった。

 何の勉強なんだろう?


「ねぇ、それは何を書いてるの?」

「うるさい」

「図形も分かりやすくまとめてあるし、算数の勉強? 私、算数があんまり得意じゃないから教えてほしいな」

「……」

「英語もやってるんだね。英語もそんなに得意じゃないんだよねー」

「……」

「あ、あなたの名前も読めないから、国語も得意じゃないな。あははっ!」

「……」


 何を言っても無視される。

 昨日この子の回りに誰もいなかった理由が分かった。

 こういう事だったんだ。


 いじめとかで避けられるわけじゃなくて、本人が孤立してるから誰も近寄れないんだ……

 自分が金持ちだからって、私達を下に見てるんだろう。


 でもそれなら逆にチャンスだ。

 こういうタイプの方が、感情は分かりやすい。

 お父さんもよく、"金持ちは褒めまくって、自尊心を高めてやればいい"って言ってたし、私もこの最悪な金持ちのボンボンを無駄にほめて、ほめまくって好かれればいいんだ。

 そうなれば、夜ご飯をおごってもらうくらいわけないだろう。


「その字、大人っぽくてカッコイイね」


 本当は思ってないけどね。

 読めないし、殴り書きみたいで汚い字……

 自分が読めればいいっていう感じの書き方だ。

 でもほめないと!


「それに……」

「あーっ! 本当にうるさいな! 集中したいんだから、どっか行ってくれよ!」

「なら名前、教えて? カッコイイ名前だし、覚えたいの」

「しお……」

「え?」

柾谷(まさや)詩苑(しおん)だ。分かったら早くどっか行ってくれ」

「うん。また話そうね。詩苑君!」


 最初からこれ以上しつこくするのは、逆に嫌われてしまうだろう。

 とりあえず私が狙うべきターゲットは決まったんだし、今は少し距離をとって様子を見ることにする。


 こういう人を見下すタイプの人からは、どんどん人が離れていってしまう。

 だから詩苑君には友達がいないんだろう。

 でも本当は友達が欲しいと思っているはずだ。

 無駄にプライドが高いからできないだろうけど。


 別に私は見下されたっていい。

 お父さんが少しでも楽になるんなら、それでいいんだから。

 クラスの全員に嫌われていても、私はだけは詩苑君の味方だと思ってもらわないといけない。

 だからこれからは詩苑君には絶対に気に入られるように行動していこう!


読んでいただきありがとうございます(*^^*)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ