表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スノーフレーク  作者: 猫人鳥
episode5 貧乏人の虚言編
100/424

標的

愛依視点です。

 ご飯を作り終えたので、台車にのせて、エレベーターを使って部屋まで持っていく。

 部屋の前に台車は置いて、持ってきたご飯やお皿を部屋に入れ、お皿によそって……


「ただいま……」

「あ、お父さんっ! お帰りなさい!」


 よそい終わったくらいのタイミングで、お父さんが帰って来た。

 お父さんの帰宅と夜ご飯の時間がピッタリだ!


「お父さんご飯出来てるよ!」

「おぉ、ありがとうな。ん? これは鶏肉か?」

「うん。さっき調理室で綾瀬さんって人に会ってね、お近づきのしるしにってくれたの!」

「そりゃあ良かったな。また会ったらちゃんとお礼を言うんだぞ。あと、美味しかったっていう味の感想と……」

「分かってるよ。愛想よくして、仲良くなるんでしょ?」

「そうだ」


 もしかしたらまた何かくれるかもしれないし、綾瀬さんとは絶対に仲良くなっておかないと!


「おいおい、折角の鶏肉が愛依の皿に全然入ってねぇぞ」

「いいの、いいの。お父さんがたくさん食べて」

「俺は大丈夫だから。気にしなくていいんだぞ。ほら」

「違うの、私は味見してた時に食べたから!」

「お前はそうやって……」

「ほんとにほんとだから! ねっ、お父さんが食べて! 新しい仕事、大変でしょ?」

「愛依は育ち盛りなんだから、たくさん食べないと……」

「お父さん? そんなに私が作った料理、食べたくないの? 一生懸命作ったんだよ? そりゃあ、味は微妙かもしれないけど、それでも頑張って……作ったのにぃ……うっ、お父さんが……食べてっ、くれな……」


 私が、目を擦りながらそう言うと、


「いや、愛依の料理は最高だ! ほら、ほらな! 完食だから!」


 と、お父さんは凄い勢いで完食してくれた。


「美味しかった?」

「あぁ。本当に、ありがとうな、愛依」

「うんっ!」


 お父さんが沢山食べてくれて良かった。

 あと何回位この作戦使えるかな?

 小学生までが限界だよね……


「じゃあ俺は風呂に行ってくるから!」

「あ、うん。そういえばさっき、お風呂で他の住人の人と会ったよ」

「そうか。ちゃんと仲良くなれたか?」

「ううん。でもちゃんと挨拶とかはしたから。お父さんもご近所付き合いはしっかりね」

「おう。じゃ、行ってくる」


 お父さんがお風呂にいったので、その間にお皿とかを片付けておこう。

 毎回調理室まで片付けに行くのは面倒だけど、こういうのをみんなでシェアしてるから、この家は安いんだろう……多分。

 お皿をある程度部屋でためてから洗おうかとも思ったけど、あの狭い部屋に皿がたまっていくのは困る。

 一応調理室の横に食堂があるし、そっちを使って食べてもいいらしいけど、仕事で疲れてるお父さんに食堂まで来てもらうのは嫌だからな……

 ちょっと面倒だけど、毎回片付けておくのが一番だ。


 お皿を片付け終わって、部屋に戻る。

 そんなに遠い距離でもないし、台車とか、エレベーターも使えるので、慣れてしまえばそんなに大変じゃないだろう。

 総合的に考えてもいい家だ。


 部屋に戻ってきて今日の宿題をしていると、お父さんがお風呂から帰ってきた。


「おー、片付けもありがとうな」

「うん。お風呂どうだった?」

「特に誰にも会わなかったな。あの広い風呂が貸し切りだと思うと、ちょっと気分がいいな」

「そうだね」


 お父さんは宿題をしてる私の邪魔にならないようにと、ベッドの方に行ってくれた。

 けど、すぐにイビキをかきはじめて寝てしまった……

 よっぽど疲れていたのかもしれない。


 いつもなら私の学校の話とか聞いてくれるのに……

 相当大変な仕事をしてるのかな?

 ちょっと心配だな……


 お父さんに布団をかけ直して、私は宿題の続きをする。

 それにしても、今日は質問攻めだらけで、あまり金持ちが見つけられなかったな……

 まぁ、初日からそんなに上手くはいかないか。


 それにあのクラス、何か違和感があったんだよね……

 今までの学校とは何か違う雰囲気というか……


 何よりリーダー的な子が見当たらなかったのが不思議だ。

 本当に皆にリーダーと思われているかはさておき、大体どこのクラスにも存在すると思うんだけどな……クラスの代表を気取ってる奴が。

 でもあのクラスにはいなかった気がする……


 授業中も率先して手をあげる子ばかりで、リーダーを気取ろうとしている優等生みたいなのもいなかった。

 私が気づかなかっただけかもしれないけど……


 それと気になった子が1人いた……

 教室の一番前の窓側の席の男の子。

 授業中も休み時間も、ずっとノートを書いていた。

 私という転校生が来ているにも関わらず、一切の興味がないというあの感じ……


 それにあの男の子には誰も話しかけてなかった。

 休み時間もずっと1人でノートを書いていたし、なんならあの子の回りの人は、あえて席を外していたようにも感じた。

 あのクラスでいじめられている子なのかとも思ったけど、そういう感じもしない。

 よく分かんない子だったな……


 まぁでも、そんなクラスの事情より、こっちの家庭の事情の方が優先だ。

 金持ちを探さない事には始まらない。


 とりあえず高坂さんは家が3階建てみたいだし、多分金持ちだ。

 このまま仲良くなれるといいんだけど……

 でも高坂さんの家は、両親共働きでいつも家に1人って言ってた。

 それだと私の理想とする、夜ご飯をごちそうになる計画は難しくなってしまう……

 家に親がいないんじゃ、夜ご飯も用意してもらえないから。

 親の帰ってくる時間にもよるけど、あまり遅すぎると親が来る前に帰らさせられるし、夜ご飯をもらえる時間まで遊ぶのはちょっと無理がある……


 まぁ、高坂さん以外にも金持ちはいるだろうし、明日は今日ほどは質問攻めもされないはずだ。

 もっとよく観察して、仲良くなるべき金持ちを見つけないと!


読んでいただきありがとうございます(*^^*)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ