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夜間勤務  作者: CGF
9/9

そしてシフトは続く


「あぁ、やっぱりここにいましたか」



初老の男性が敷地の入口にたたずむ女性に声を掛けた。



「お久し振りです、刑事さん」


「どうも。今年もお参りですか」


「えぇ……」



二人の前には丈の高い雑草に囲まれた病院。


この付近で続いた連続放火事件の、最後の現場だった。



「あれから、もう十年になりますか」


「えぇ」



女性は持っていた花束を地面に置き、手提げの鞄からカップ酒と線香を取り出す。


二人してしばし手を合わせた。




「それは?」



女性が鞄から出した一枚の写真を、男性は覗き込んだ。




在りし日の病院を背景に撮られた十数人の集合写真。



「火事のあった少し前に……これが若センセイ、こっちが婦長さん、葉子さん」


「ほぉ……」



女性は一人一人を指で示した。


その指が、一人の女性に止まる。



「……そしてエッちゃん、悦子さん……本当はあの日私が夜勤の予定だったのだけど、急用で……」


「……あまり自分を責めちゃいけませんよ」


「えぇ……でも」



女性は立ち上がり病院の残骸を仰ぎ見た。




「何ででしょうね……ここに来ると思うんです。まだ……皆ここに居る様な」




きっと、今もここにいるんだわ……そんな気がします。







(最近夜勤が続くなぁ……)



疲れが溜まっているのか、身体が重く感じる。たぶん暑さのせいだろう。


西の空、入道雲が赤く染まっていた。



(綺麗……)



通用口の前に立ち、夕焼けのグラデーションを見上げながら日暮の鳴き声に耳を傾ける。



……気持ちを切り替えていこう、患者さん達が待っている。




「おはようございま~す」


「よっ、エッちゃん。なんだよ、また夜勤かい?」


「康一郎センセイだってまた夜勤でしょ?」








─────────────────終

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― 新着の感想 ―
[良い点] はじめまして、天音こかげと申します。 怖くも物悲しく、儚い。面白かったです。 後半でゾクッとしながらも、どこか切ない気持ちになりました。 本人達は気づくことが救いなのか、気づかないままが救…
2020/07/25 11:09 退会済み
管理
[良い点] この1つ前の幕間でやっとピンときました。 なるほど、そう考えると切なさも漂うホラーですね。 エッちゃん……気付かないて欲しいなぁ。 気付いたらきっと、怨霊化してしまいそうなので(^_^;…
2020/07/21 20:49 退会済み
管理
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